政府 骨太方針、成長戦略を閣議決定 革新的医薬品等の使用の最適化推進 国民皆保険維持も
公開日時 2016/06/03 03:51
政府は6月2日午後に臨時閣議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太方針)、「日本再興戦略2016」(成長戦略)を決定した。消費税増税を2019年10月まで2年半延長したことに伴う文言修正がなされたが、骨太方針に盛り込まれた医薬品の適正使用については、▽費用対効果評価の導入、▽革新的医薬品等の使用の最適化推進、▽生活習慣病治療薬等の処方の在り方等の3つの観点について2016年度から検討を開始し、17年度中に結論を得ることは変更なく、盛り込まれた。増税は先送りされたが、2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を堅持することも明記された。ただ、赤字国債を財源としない方針も閣議で確認されており、財源確保は厳しさを増す。増税に伴う2016年度中の薬価改定作業は回避できる見通しだが、子育て・介護支援策に重点が置かれる中で、医療費、薬剤費の適正化に向けた風向きが強くなることが想定される。高齢化が進む中で、新たに盛り込まれた国民皆保険を堅持するためにも、医療費、特に高騰する薬剤費の適正化は今後の焦点となりそうだ。骨太方針に盛り込まれた政策をすべて実行に移すのは難しいとの見方もある中で、年末の予算編成に向けた議論が注目される。
◎国民皆保険・皆年金維持を新たに盛り込む
骨太方針では、社会分野に「世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持し、これを次世代に引き渡すことを目指す」ことが新たにあ明記された。高齢化が進む中で、医療費適正化計画の策定などで高騰する医療費、薬剤費を適正化するとともに、地域医療構想で地域の実状に応じた医療提供体制の構築を求めた。
医療費適正化の観点からは、後発医薬品の使用促進、重複投薬などの是正に加え、「医薬品の適正使用」の方向性を明確に打ち出した。具体的には、費用対効果評価による薬価引き下げの議論に加え、革新的医薬品等の使用の最適化推進、生活習慣病治療薬等の処方の在り方を盛り込んだ。
これまで医師、薬剤師など医療従事者が進めてきた適正使用を“最適化”と銘打ち、医療保険の世界まで拡大することを検討する。具体的には、主に当該薬剤を使用する学会がPMDAとの協力のもと、保険適用前の段階で医師要件、施設要件を明確にし、適正使用ガイドラインを策定する。その内容を留意事項通知で周知徹底する。条件に該当しない場合は、医療保険での算定を認めないことで最適化使用を推進する。また、生活習慣病治療薬の処方の在り方としては、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した“フォーミュラリ”導入も含めた検討がなされることとなりそうだ。こうした取り組みにより、薬剤費、医療費全体の適正化をうながす。
◎がん検診受診率の向上盛り込む
適正化を進めるためには、データによる見える化が必須だ。骨太方針では、医療・介護のデータを連結させた分析を行うことも盛り込んだ。分析結果を医療専門職と情報共有し、ベンチマークするなどして、医療の質の改善につながる仕組みについても検討を行う。
そのほか、2017年6月に見直す予定である次期がん対策推進基本計画策定に向けて、女性特有のがんをはじめとした、がん検診受診率のさらなる向上も明記された。
◎成長戦略 ビッグデータ活用でイノベーション促進 ベンチャー支援も
またこの日の閣議では、「日本再興戦略2016」(成長戦略)も決定された。成長戦略では、ビッグデータ活用によるイノベーション促進や、ベンチャー企業支援による優れた医薬品などのシーズの実用化加速、地域医療連携推進法人制度の具体化などが盛り込まれた。