岸田文雄首相は６月４日の経済財政諮問会議で、経済再生と財政健全化を両立させる2030年までの６か年を対象とした「経済・財政新生計画」を取りまとめると表明した。岸田首相は、骨太方針2024の中で、「中長期的に持続可能な経済社会に向けた経済・財政・社会保障を一体とした改革について、基本方針も明らかにする」考えを示した。「岸田政権で毎年度の予算編成で取り組んできた歳出改革努力や、歳出構造の平時化を継続する」考えも表明。諮問会議の民間議員は「歳出の目安に沿った予算編成を実施してきたところ、今後も歳出改革努力をしっかり継続」すべきとして、今後も目安に沿った歳出改革努力を継続することを求めた。また、齋藤健経済産業相は、バイオを成長産業の一つにあげ、「産業を支援していく方向を骨太方針で明確に示すことで、民間の予見可能性を高め、前向きな挑戦を後押ししていくことが必要」と述べた。

◎PB黒字化「25年度の目標達成が視野」

新たに策定する経済・財政新生計画では、実質１％を安定的に上回る経済成長の実現に加え、財政健全化目標の旗は下ろさない考え。プライマリーバランス（ＰＢ）の黒字化について岸田首相は、「計画初年度の25年度における目標達成が視野に入っている」として、経済・財政一体改革をさらに前進させる考えを示した。

◎民間議員　人口減少本格化の30年度までの新たな計画を　PC黒字化後にも言及

中期的な経済財政の枠組みとしては、骨太方針2015（16～20年度の５年間）、骨太方針2018・21（19～25年度の７年間）でも示されている。諮問会議の民間議員は、「人口減少が本格化する」として30年度までを期間として、「経済・財政・社会保障を一体とした政策」の基本方針を定めることを求めた。PB黒字化の達成が視野に入る状況であるとして、これまでとは異なり、PB黒字化後についても言及。PB黒字化後も、ストック目標を維持しつつ、新たな計画期間中における適切なフロー目標を設定し、財政健全化努力を継続すべきとした。30年以降の長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性確保につなげる必要性も指摘した。

歳出改革については、「これまでの３年間、財源を確保した上で、計画的な支出増に対応しつつ、歳出の目安に沿った予算編成を実施してきたところ、今後も歳出改革努力をしっかりと継続」する必要性を指摘。新技術の社会実装、DXによる生産性向上やワイズスペンディングの方策などをさらに推進・強化するべきだとした。

鈴木財務相は、「金利のある世界へ移行し、感染症や震災などの有事に対する財政面での備えが必要とされる中で、引き続き財政に対する市場の信認を確保していく必要がある。このため経済再生を実現していく中で、財政健全化目標の旗は下ろさず、歳出構造を平時化していくとともに、歳出改革努力を継続していくことを通じて、引き続き適切な経済財政運営に努めていく」と述べた。

◎齋藤経産相　「バイオなど、将来の飯の種生み出す産業支援を骨太方針で明確に示す」

諮問会議では骨太方針の骨子案をめぐる議論もなされた。骨太方針では、新たな経済ステージに移行させるためのビジョンを示す考え。岸田首相は、「人口減少・少子化が進む中でも、豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会を構築していかなければならない」と強調。「物価上昇を上回る賃上げの定着に向けた賃上げの促進や価格転嫁対策、人手不足対策、社会課題解決をエンジンとした経済成長に向けた官民連携での投資の拡大と新技術の社会実装、中長期的に持続可能な経済社会に向けた経済・財政・社会保障を一体とした改革について、基本方針も明らかにする」と述べた。

齋藤健経済産業相は、「経済を成長型に転換するという政府の強い覚悟を示さなければならない」と強調。米国や中国、欧州が自国産業ファーストに舵を切っていることを引き合いに、「産業政策自体の国際間競争に勝ち抜き上げればいけない時代になっているのではないか」として、「半導体や蓄電池AIバイオなど、将来の飯の種を生み出す産業を支援していく方向を骨太方針で明確に示すことで、民間の予見可能性を高め、前向きな挑戦を後押ししていくことが必要」との考えを示した。