製薬協 アジア発の革新的創薬を 承認申請統一フォーマットも視野 第5回APAC開催で
公開日時 2016/04/11 14:40
日本製薬工業協会は4月8日、第5回アジア製薬団体連携会議(APAC)の開催を踏まえて記者会見を開き、規制・許認可、プラットフォームを活用した創薬連携を通じ、アジアにおいて革新的な医薬品へのアクセス(ATIM)改善に挑戦することについて合意したと発表した。申請・許認可ではアジアでの薬事規制の国際協調で進展をみせ、製薬協国際委員会の平手晴彦委員長は「大きな流れの中で、大きな坂の胸突き八丁を越えた」との見方を示した。将来的には、アジアで承認申請のフォーマットを統一し、申請から承認までの時間を短縮化することを視野に入れる。PMDAを中心に「フォーマットの統一化がこれからアジア各国でも一歩も二歩も進む」と平手委員長は強調。「アジアで頑張ったものがアジアに広くいきわたるということが、実務面で実現に近づいたと感じている」と述べた。
この日、合意された事項は、大きく分けて▽規制・許認可、▽情報共有やネットワーキング、人材育成など創薬連携――の2点。規制・許認可では、昨年Good Registration Management(医薬品の承認・登録のための管理原則)がAPEC Regulatory Harmonization Steering Committee(RHSC)で承認されたのを受け、重要要素であるGood Submission Practice(医薬品の承認申請等の実施基準)の研修を実施することに合意した。アジアは、人口40億人を超え、高齢化の進展や経済の発展などでさらなる市場の成長が期待されている。一方で、北米が米食品医薬品局(FDA)、欧州がEMAを中心とした施策があるのに対し、アジアにはこうした一体となった市場推進施策が弱いことが指摘されており、産官学連携を通じた創薬力・開発力を強化することが求められていた。
平手委員長は、承認・許認可の臨床試験立案、データ収集、書類作成が、「各国ベースで、バラバラで標準化されていなかった。極端な話、効果的な薬ができ、その国に薬を待っている患者さんがいるにもかかわらず、いつまでも届かないことがあった」と説明。APACでは、民間側もアジア各国での統一フォーマットについての検討を重ねてきた。さらにPMDAに働きかけ、経験や知識をアジア各国の規制当局と情報共有してもらうことで、「サブミッション、レビューする側にコンフリクトオブインタレスト(COI、利益相反)があったが、いかにその国の患者さんに早く届けるか、国民も政府も喜んでいただける形ができあがってきた」と述べ、官民一体となってこうした流れができつつあるとの見方を示した。治験をめぐり、日米欧三極のハーモナイゼーションも進むが、こうした連携によるノウハウやアジア各国の状況を共有化することで、治験データや審査についてもPMDAの手法が伝わり、統一する流れも出始めているという。
最終的には、1つのフォーマットにより、アジア各国で承認される形となることで、「台湾やフィリピンなどアジアの各大学からのシーズが紆余曲折経てずっと先になって戻ってくるのではなく、早いスピードでアジア全体にいきわたる」との見方を示した。
◎多田会長 アジア各国とのマッチングで創薬にも期待 事業経営でも重要に
“アジア”での連携を強化することで、製薬企業の創薬力の底上げにも期待がかかる。製薬協の多田正世会長は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)を中心に産官学連携が進む中で、「台湾やインドネシア、中国などでサイエンスのレベルがあがってきている。日本のアカデミアだけでなく、マッチングが進むことで、事業化が進む」ことに期待感を示した。また、臨床試験の組み方から承認申請まで官民が一体となり、「日本のみならずアジアの中で共有できれば、売上にもコストダウンにもつながるというプラスの面がある」と説明。「我々がターゲットとしているテーマは、患者さんに新薬を早急に届けることだが、結果として事業経営でも重要になる」との見方を示した。
【おことわり】本記事が掲載されておりませんでした。お詫び申し上げます。4月11日14時40分に掲載しました。