バイエル薬品 15年売上12.2%増 3年連続2ケタ成長も新卒MR採用ゼロ 市場の予見性低下で
公開日時 2016/04/07 03:52
バイエル薬品が4月6日に発表した2015年業績では、売上高は2795億円、12.2%増だった(薬価ベース)。業績は経口抗凝固薬イグザレルト、加齢黄斑変性などに用いるVEGF阻害薬アイリーアが牽引。3年連続の2ケタ成長となった。カーステン・ブルン社長(写真)は同日の記者会見で、16年も市場平均以上の成長を見込むとした上で、今後の地域医療提供体制など市場環境の変化の中でも成長を図るため、営業改革を推進すると表明。MRの機能・役割の見直し、ビッグデータの活用などに取り組む。一方、新卒MR採用が0人であったことも明かし、理由として「市場の予見性の低下」を挙げた。
イグザレルトの売上高は28.3%増の516億円、OAC市場シェアは37.1%とトップ。アイリーアは64.0%増の450億円。ブルン社長は、15年9月にイグザレルトに「深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び発症抑制」の適応追加したことを挙げ、同剤が初期治療から再発予防まで使用可能になり、外来ベースの治療も進むとして、今後のさらなる成長に期待感を示した。また、アイリーアについては、適応症の1つの糖尿病黄斑浮腫を念頭に、糖尿病患者の眼科未受診者が6割に上るため啓発活動に取り組み、販売拡大につなげる考えを示した。
3年連続で2ケタ成長を記録し、16年も成長を見込むが、新卒採用は8人と少なく、うちMRは0人だった。その理由についてブルン社長は、薬価制度改革で「市場の予見性が低下している。それを受けて新卒採用は慎重になっている。来年どうなるか分からないからだ。採用は長期にわたるコミットメントになるため慎重に考えなければならない」と説明。今後については「当社の事業がどう動くのか、市場がどう動くのかを鑑みながら決めたい」と話した。
■MRは「KAMのスキル重要」 ビッグデータの営業活用 来年にも具体化
表明した営業改革では、ブルン社長はMRについて「将来大きく役割は変わっていくと考えられる。MRがなくなることはないが、よりサイエンスベースの役割に変革していくことになる」とした上で、当面、必要な機能として「キーアカウントマネージング(KAM)のスキルはとても重要になると思う」との認識を示した。同社長は「MRは単に顧客を訪問して、メッセージを伝えるだけではなく、戦略的にアプローチすることが重要。顧客一人ひとりを取り巻くエコシステム全体を考えることは、変わりゆく環境の中では重要になる」と指摘し、地域全体の医療、患者の流れ、関与するステークホルダー全体を眺めながら、効果的なアプローチをする必要性を強調した。
新たな行動を促す策として同社が掲げる企業文化の変革を挙げた。同社長は「営業を念頭に置いている」と明かし、上長の言うことに従うだけでなく自らの考え発想を声に出して共有し、顧客ともよく話し合う「Speak up」、新しい取り組みを試みる「Experiment」、部門を越えて協働する「Collaborate」の実践を促すとした。
また、ビッグデータの営業活用について「リスクもあるので、段階を踏んで一歩ずつ進める。研究開発領域での活用から始めたが、ここで構築したスキルは、今後コマーシャル領域にも活かしていける。来年くらいにはMRの実務にどうビッグデータを活かしていくのか、より具体例を紹介できればと思っている」と話し、検討を進めていることを明らかにした。
製品上市後の投資も強化する。市販後の臨床研究などで臨床上の課題に応えるリアルワールドデータの創出に注力し、その活用も含め推進するためメディカル機能を強化する方針を示した。同社によると、メディカルアフェーズの部門には約100人が在籍し、その約6割はMSLという。
【主要製品 2015年売上 前年比】(薬価ベース)
イグザレルト 516億7800万円 28.3%増
アイリーア 450億2000万円 64.0%増
ゼチーア(バイエル分) 308億7100万円 2.2%増
ホスレノール 304億7900万円 5.6%増
イオパミロン 206億6600万円 2.0%減
アダラート 167億0800万円 15.4%減
ネクサバール 143億1000万円 3.5%増
コージネイト 126億3300万円 2.7%増
バイアスピリン 67億3800万円 6.7%減
ヤーズ 55億7800万円 8.4%増