ミクス編集部は、4月実施の薬価基準の全面改定が3月4日に官報告示されたことを受け、製薬各社に対し改定影響調査を行った。改定の影響率では、ギリアド・サイエンシズが最も大きい31.7%だったことがわかった。販売している2製品の経口C型肝炎治療薬ソバルディ錠とハーボニー配合錠が特例拡大再算定(巨額再算定)の適用を受けたためで、両剤の薬価改定率31.7%がそのまま同社全体の影響率として直撃した。内資大手(国内医療用薬売上3000億円以上)の影響率では大塚製薬が最大の8%台で、抗精神病薬エビリファイなど主力3製品が市場拡大再算定による15%以上の薬価引き下げとなったことが大きく影響。同社含め内資大手は、全体の薬価改定率6.47%(薬価ベース)と同程度かそれを上回る企業が目立つ中、武田薬品は4%台前半、アステラス製薬は5%台後半と比較的低い影響率となり、主力品に新薬創出加算品が他社より多いことが影響率を緩和した。
以下の「関連ファイル」から、企業別の▽薬価改定影響率▽主要製品(汎用規格)の改定率▽新薬創出加算対象品目と改定率▽基礎的医薬品対象品目と改定率――などの一覧表をダウンロードできます(8日までフリー公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。
調査には55社から回答があった。それを見ると、10%以上の薬価引き下げとなる市場拡大再算定が、企業全体の改定率に影響が大きいことが窺えた。
新薬創出加算品数が最も多いファイザー、それに次ぐのがノバルティスファーマ(厚労省資料、本誌で4日昼に
既報)だが、それぞれの影響率は7%台、約6%と全体の薬価改定率と同程度か上回った。
ファイザーは、企業業績をけん引し、同社製品売上トップの疼痛薬リリカカプセルが市場拡大再算定で11.9%の引き下げとなり、売上上位に特例引き下げ(Z2)を受けた製品も目立った。ノバルティスは、主力の糖尿病や高血圧症の治療薬が8%程度の改定となったことに加え、売上高を年々伸ばしている加齢黄斑変性治療薬のルセンティス注射液が市場拡大再算定で13.0%の引き下げを受けた。両社の新薬創出加算品は難病等の希少疾患治療薬も少なくなく、市場拡大再算定の影響を吸収するに至らなかったとみられる。
内資大手で最大の8%台となった大塚製薬は、これまでだと主力に複数の新薬創出加算品を持ち、業界の中でも比較的低い影響率で推移していた。今回の改定では新薬創出加算品数は全体の15位(同)と比較的多い方だが、抗精神病薬エビリファイ錠が15%引き下げ、心性浮腫などに用いるサムスカ錠が25%引き下げ、抗てんかん薬イーケプラ錠が15%引き下げと、主力3製品が市場拡大再算定を受けたことで一転して影響率が膨らんだ。
武田、アステラス、中外は5%台以下 売上上位に複数の新薬加算品
その中にあって武田は、新薬創出加算品数は全体の21位(同)、長期収載品比率も50%に達するが、4%台前半と内資大手では最も低い影響率だった。売上上位にある主力品の抗がん剤のベクティビックス点滴静注、抗認知症薬レミニール錠といったスペシャリティ薬に加え、高血圧症治療薬アジルバ錠、高脂血症治療薬ロトリガ粒状カプセルと生活習慣病薬においても新薬創出加算の適用を受けたのが奏功したと分析できる。
5%台後半のアステラスは、主力の前立腺がん治療薬イクスタンジカプセルが25%引き下げの市場拡大再算定を受けたものの、売上上位10製品のうち消炎鎮痛薬セレコックス錠、過活動膀胱薬ベタニス錠など4製品が新薬創出加算の適用を受けて影響を緩和したといえる。
外資の中外製薬も、最も売上高の大きい抗がん剤アバスチン点滴静注が巨額再算定などで10.9%の薬価引き下げとなったが、売上上位10製品のうち抗がん剤を中心に7製品が新薬創出加算適用を受け、影響率は5.5%にとどまるなど、この3社は売上上位の複数の製品に適用された新薬創出加算によって影響を和らげたことがうかがえた。
【訂 正】
以下のダウンロード資料として配信しました「16年度薬価改定 企業別影響率」で「Z2対象品目数」の集計に誤りがあり、正しい資料に差し替えました。誤りは、Z2の3区分(GE比率30%未満、GE比率30%以上50%未満、GE比率50%以上70%未満)の成分数を単純合算したもので、この部分を削除しました。(16年3月7日10時20分)