AZ・ベルチ社長 「20年まで毎年少なくとも2製品上市」 開発プロジェクトの57%ががん領域
公開日時 2015/11/16 03:52
アストラゼネカ日本法人のガブリエル・ベルチ社長は11月13日、東京支社で開いた事業説明会で、「2020年の東京オリンピックまで毎年少なくとも2製品を上市する」と述べた。開発プロジェクト42件のうち57%(24件)ががん関係のプロジェクトで、特に肺がん領域が7件と豊富。まずは8月に承認申請し、10月に優先審査指定を受けたT790M変異陽性非小細胞肺がん治療薬AZD9291について、優先審査品目の審査期間が9か月弱(中央値)であることから、この期間以内の承認取得を目指す。
同社は、▽循環器・代謝▽がん▽呼吸器・炎症・自己免疫――を主要疾患領域と位置付けて基本的に自社開発していく。▽感染症・ワクチン▽ニューロサイエンス――は共同開発で取り組む。ベルチ社長は、「イノベーティブな医薬品を日本に迅速に、より効果的に導入したい。アンメットニーズを良い薬で満たしたい」と話した。高脂血症治療薬クレストール、消化性潰瘍薬ネキシウム、気管支喘息治療薬シムビコートなどの主力品や今後上市する新薬群により、国内市場がほぼゼロ成長と見込まれる中でも、市場平均を上回る1桁台前半の成長を続けていく考えも示した。
■がん免疫療法 併用療法を戦略的に展開
同社は20年までの上市予定品目を明らかにしていないが、開発プロジェクトをみると、現在、新医薬品として申請中なのはAZD9291と、急性冠症候群/陳旧性心筋梗塞を予定適応症とする抗血小板薬チカグレロルの2剤がある。このうちAZD9291は新規の経口分子標的薬。イレッサなどEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で耐性が生じて病勢が進行する症例の約60%でEGFR T790M耐性変異という新たな遺伝子変異が明らかになっているが、化学療法以外に治療選択肢がなく、アンメットニーズが高い。日本肺癌学会が早期承認を求めている薬剤でもある。
また、同社が成長のカギと位置付けている「がん免疫療法」は、併用療法を戦略的に展開する方針。現在、抗PD-L1抗体durvalumab(一般名、開発コード:MEDI4736)と抗CTLA4抗体tremelimumab(同MEDI1123)による併用で、非小細胞肺がん(3rd/4thLine)を予定適応症とするフェーズ3試験などを実施中。谷口忠明研究開発本部長は、これまでの試験ではPD-L1の発現がみられない患者でも併用療法によって奏効率が大きく向上することが確認されているとして、「(免疫治療同士の併用で)非常に高い効果が期待できる」との認識を示した。
ベルチ社長もこの併用療法について、「臨床現場では、PD-L1のポジティブ、ネガティブ、いずれかわからない患者に対しても治療しなければならないなか、この併用は非常に興味深いと思う」と話した。
腫瘍はPD-L1を介するシグナルによって免疫システムから探知されるのを回避するが、抗PD-L1抗体durvalumabは、このシグナルを阻害して腫瘍の免疫からの逃避機構が働かないようにする。抗CTLA4抗体tremelimumabは、活性化Tリンパ球の表面に発現するタンパクCTLA-4に結合して、がん細胞を攻撃するよう免疫システムを活性化する。