米FDA 抗凝固薬ダビガトラン中和剤を承認
公開日時 2015/10/20 03:50
米食品医薬品局(FDA)は、10月16日、経口抗凝固薬Pradaxa(ダビガトランエテキシラート、国内製品名:プラザキサ)の特異的中和剤Praxbind(idarucizumab)を承認した。
Praxbindは、Pradaxaの抗凝固作用を特異的に中和する初の薬剤。Pradaxa服用時に出血性イベントが発現した場合に、同剤の効果を打ち消す。Pradaxaは、米国では2010年に、心房細動患者の脳卒中および全身性血栓塞栓の予防薬、ならびに深部静脈血栓および肺塞栓の予防・治療薬として承認された。
同剤の安全性および有効性は、合計283例の健常人を対象とした臨床試験で検証された。同剤を服用した被験者において少なくとも24時間持続したPradaxaの血中濃度を直ちに低下させた。主な副作用は頭痛だった。
Pradaxaを服用、管理不能な出血や緊急手術を必要とするためにPraxbindを服用した123例の別の臨床試験(現在も進行中)では、89%の患者でPraxibind服用後4時間以内にPradaxaの作用は完全に消失した。主な副作用は、低カリウム血症、便秘、発熱および肺炎など。
同剤は、独ベーリンガーインゲルハイムの米法人Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals Inc.(本社:コネチカット州リッジフィールド)が販売する。
Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals社のSabine Luik上級副社長(Medicine & Regulatory Affairs担当)は、「我々は、新規経口抗凝固剤に対する初めての特異的中和剤であり、いまFDAに承認されたPraxbindを提供できることを喜んでいる」と述べた。その上で、「この承認によって、ベーリンガーインゲルハイムは、Pradaxaを発売した時と同じように、抗凝固剤治療の発展をリードすることになる。我々は、臨床現場でPraxbindが滅多に使用されることがないと予測するが、特異的中和剤が使用できることは医師および患者にPradaxaを選択する際に安心さを与える」と同剤のメリットを強調した。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)のRichard Pazdur血液・腫瘍製品部長は、「Pradaxaの抗凝固作用は一定の患者の救命には重要だが、同剤の効果を医学的かつ緊急に中和することが必要な場合がある」と指摘した。その上で、「本日の承認は、出血が管理できない生命を脅かすような緊急時にPradaxaを服用している患者を管理するのに重要なツールを医学界に提供することになる」と話した。Praxbindは、FDAによる画期的医薬品(Breakthrough Therapy Designation)の指定を受け、合わせて迅速審査の対象となった。