【World Topics】ヒラリー・シンドローム
公開日時 2015/09/28 03:50
9月22日、アイオワ州デモインで「当選した暁には処方薬の患者自己負担に月額$250(年間$3,000)の上限を設ける」と発言して世論をわかせているヒラリー・クリントン候補だが、爆弾発言は、実はすでにオバマケアに盛り込まれている「患者自己負担総額(医療費+処方薬)に個人$6,000(世帯合計$13,200)の上限を設ける」というアイディアと同じ 。民主党の基本路線だ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
だが、波紋は大きかった。ヒラリー候補に「人の不幸(misfortune) で利益(fortune) をあげている」と名指しで批判されたのは Turning Phamaceuticals。 寄生虫感染の治療薬Daraprimを開発したバイオ系スタートアップを買収し、直後に大幅に価格をつり上げたと、請求額が1粒$13.50から$750になった患者の実例をあげて批判され、直後に CEOが「値下げを検討する」と発言。 これに対しヒラリーは即座に「けっこう(Good)」とツイートを返し、大きな話題に。
ヒラリー候補はまた、製薬企業に対し事業経費(非課税)の一定割合を研究開発費に充当するよう規制すると発言し、 逆に製薬企業の広告費に対しては課税控除枠に上限を設定すると語った。
製薬業界に厳しい一連のヒラリー発言で、ナスダックではバイオ、製薬系インデックスが急落。米国製薬工業協会会長のJohn Castellaniは「クリント候補の提案は医療改革を後戻りさせかねない」とし。「規制強化は新しい治療や医薬品への患者のアクセスを制限し、医療専門職から職を奪い、ひいては常に医療・バイオ研究で世界をリードしてきた米国医療を脅かしかねない」と強く批判した。
患者の自己負担に上限が設けられれば、しわ寄せは製薬企業だけではなく当然保険会社にもいく。実は、奇しくも アイオワ州デモインは、全米第1位、世界第3位の「保険と金融の集積地」 である。Athene もWellmark Blue Cross Blue Shield.もここに本社を置いている。ヒラリーの発言がデモインであったのは偶然ではないだろう。