新規AD治療薬開発 患者・社会の負担を大きく軽減 PhRMA報告書
公開日時 2015/07/23 03:50
アルツハイマー病治療薬候補物質123剤が1998年から2014年の間に臨床試験で中止を余儀なくされ、4剤のみが新薬として承認されたことが、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が7月15日に発表した報告書で明らかになった。
同報告書は、「アルツハイマー病(AD)治療薬の研究:後退と成功への足掛かり」(Researching Alzheimer’s Medicines: Setbacks and Steppingstones)と題され、ADの研究状況、AD治療薬開発状況、ADの患者個人や家族への影響、ADの社会経済的影響などについてまとめた。報告書をまとめたのは、米アルツハイマー協会の関連団体Alzheimer’s Impact MovementのRobert Edges氏である。
同報告書では、アルツハイマー病治療薬の1998年から2014年の間における臨床試験に入ってからの承認取得の確率は約3.1%(127分の4)ということになり、改めて同治療薬開発が「狭き門」であることが浮き彫りになった。
ADは、米国では、530万人が罹患、死因の6番目となっている。PhRMAは、ADが現代において、科学的に解明が困難でチャレンジングな課題の1つと位置付けているが、バイオ・医薬品の研究者らは、積極的に多数の薬剤開発を追究しているとし、現在、PhRMA会員企業は、59剤に及ぶADおよび他の認知症治療薬を開発中だという。
PhRMAのJohn J Castellani理事長兼CEOは、「ADは、数百万人の患者や家族にとてつもない犠牲を強いる。そして、それは年を追って膨らんで行く」と同疾患の負担の大きさを指摘したうえで、「米国のバイオ・医薬品産業がこれほど、ADの謎を解くことに熱心に取り組んだことはかつてない。ヘルスケア・エコシステムの関係者の持続的な協力と医療イノベーションへの支援と見返りが確保される環境の維持が、我々がそこ(AD解明と治療薬開発)に到達するのに役立つだろう」と述べた。
ADによる患者への影響は甚大であるばかりでなく、社会経済的影響も計り知れず、介護施設の経費を含めた直接医療費は毎年2260億ドルに上るほか、家族や友人による無償の介護時間は180億時間に達し、金額にすると2014年には2180億ドルに達しているという(米アルツハイマー協会「2015年アルツハイマー病の事実とデータ<2015 Alzheimer’s Disease Facts and Figures>)。
PhRMAは、以上のような観点から、患者と社会の負担を軽減する新規治療法の必要性が迫られていると指摘している。ADの発症を5年遅らせる新薬は、2050年までに患者を約40%減少させ、ヘルスケアシステムでは年間3670億ドルの節減を可能にすると見ている。