厚労省は６月24日の中医協総会に、2014年の１年間で、薬剤服用歴管理指導料を算定しているにもかかわらず、薬剤服用歴（薬歴）の未記載が81万件、1220保険薬局に及んだことを報告した。調査は、日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の３団体の傘下の薬局を対象に、自主点検を求める形で実施した。厚労省は今後、未記載のあった薬局に対しては、地方の厚生局を通じて、診療報酬の自主返還を求める。返還額は、３億円規模になる見通しだ。この問題をめぐっては、複数の大手薬局チェーンで、薬剤服用歴管理指導料を算定しているにもかかわらず、薬歴未記載であることが発覚し、問題視されていた。


調査は、日本薬剤師会など関係３団体の傘下である保険薬局に対して、自主点検として、2014年に扱った全処方箋を対象に、▽薬歴の未記載（当月を超えて記載されたものを含む）があった場合の件数、▽薬剤服用歴管理指導料算定件数――を調査した。その結果、薬剤服用歴管理指導料を算定していた2052万9703件の3.96％に当たる81万2144件で、未記載が発覚した。日本チェーンドラッグストア協会は7.34％（43万115件）と、日本薬剤師会（3.28％、54万3156件）、日本保険薬局協会（1.39％、5万4454件）に比べ、やや比率が高かった。なお、回答は、日本薬剤師会４万7887軒（99.98％）、日本保険薬局協会9192軒（86.79％）、日本チェーンドラッグストア協会4555軒（97.45％）から得た。


診療側の安部好弘委員（日本薬剤師会常務理事）は、「薬剤師を代表する委員としてきわめて遺憾。信頼を損なう事例が出てきたことについて深くお詫びを申し上げたい」と述べた。その上で、「日々保険調剤、薬事業務に真摯に取り組んでいる大多数の薬剤師からすれば、ルールーを守れないものは、保険調剤や保険薬局業務から退場していただきたいというくらい強い気持ち」と述べた。安部委員は、薬歴未記載のうち、ケアレスミスではなく、組織的関与が疑われる多数の未記載があったケースを問題視。「多数の未記載があるような事例については、自主返還だけでなくルールに基づいた適切な個別指導の実施等をお願いしたい」と述べた。


◎診療側・中川委員「加算要件　改めて次回改定で議論すべき」


診療側の中川俊男委員（日本医師会副会長）は、現時点でもなお実態解明に至っていないことを問題視し、「安易に返還すべきということで決着すべきではない」と述べた。2012年度改定で、後発医薬品に関する情報提供など、加算の要件が引き上げられたが、取得率が変わらない現状を鑑みて、「加算要件が非常に緩いのではないか」と指摘。加算の取得要件については「改めて次期改定に向けて議論をし直すべき」との見方を示した。

支払い側の白川修二委員（健康保険組合連合会副会長・専務理事）は、「不正、ミスで徴取した診療報酬は速やかに返還する。医療の世界だけでなく、人間として当たり前のこと」と述べた。その上で、保険制度の信頼を揺るがしかねない事態に発展したことから、過去に訴求し、保険薬局の指定や刑事告訴まで視野に入れた一種“ペナルティー”のような対処法も必要との考えを示した。

◎費用対効果評価専門部会　新薬の薬価収載時の活用難しく

この日の中医協では、費用対効果評価専門部会も開かれ、厚労省は、2016年４月に試行的導入される“費用対効果評価”の工程について叩き台を提示し、本格的な議論がスタートした。対象品目については、評価結果を新薬の保険収載時に製薬企業がデータ提出するのが難しいなど、施行期日を考えると現時点では難しいとの意見が相次ぎ、「収載後一定期間後に、費用対効果評価に基づき再算定を行う」ことに賛意を示す声が多数聞かれた。

なお、森田朗前会長（国立社会保障・人口問題研究所所長）が６月14日に任期満了となったのを受け、田辺国昭氏（東京大学大学院法学政治学研究科教授）を新会長とすることも総会で、了承された。