厚労省・中井薬剤管理官「かかりつけ薬局しか生き残れない」 医薬分業メリット示すエビデンス構築求める
公開日時 2015/04/28 03:50
厚生労働省保険局医療課の中井清人薬剤管理官は、高齢化が進む中で、調剤薬局のあり方として、在宅医療も含めた最適な薬物療法提供に加え、セルフメディケーションの推進、地域包括ケアの推進などの役割を一体的に果たす「かかりつけ薬局しか生きていけない」との考えを示した。医師や看護師などの他職種や国民に、薬剤師の役割を周知し、医薬分業のメリットを理解してもらうためにも、現場からのエビデンス構築、発信を求めた。第17回日本在宅医学会もりおか大会のパネルディスカッションで4月26日、自身の考えを明らかにした。
医薬分業については、分業率は上昇しているものの、医療機関の近隣にいわゆる門前薬局が乱立し、医療機関側、薬局側の経営的なメリットが指摘されるところだが、中井薬剤管理官は、「医薬分業は、医薬品適正使用の手段で、目的ではない」と説明した。
その上で、「これまで薬剤師は、(病院からの)距離も含めて早く渡すことしか考えていなかった」と指摘。調剤やOTCの販売などの「売るまでの勝負ではなく、売った後の勝負に変えることが必要」との持論を展開した。その実現のためには、「在宅医療、残薬管理、副作用のモニタリングであり、それを医師にきちんと報告することが重要」との考えを表明。医師、薬剤師、看護師などで構築されるチーム医療の中で役割を果たすことで、他職種、ひいては地域住民からの信頼を勝ち取ることができ、いわゆる“かかりつけ薬局”になることができるとした。
医薬分業の過程の中で、調剤業務を重視する、いわゆる調剤偏重も指摘されるが、地域包括ケアの推進が求められる中で、「OTCや衛生材料、健康食品などすべてをあわせてセルフメディケーションを考える」ことがかかりつけ薬局としては重要との考えを示した。昔の薬局は、地域に根づき、住民が気軽にOTCの選択や健康に関する相談ができたと説明し、高齢化が進んだ地域に根づくために、患者に一番最初に接する“ファーストアクセス”を強化した「昔の薬局に戻れと言っている」と述べた。
地域包括ケアで薬局薬剤師が役割を果たす上では、医師、看護師などのチーム医療の中で存在感を発揮することも重要になる。中井薬剤管理官は、病院薬剤師はすでに、医師や看護師など他職種から病棟配置の業務軽減などの評価を受けているとのデータを提示。「病院薬剤師は結構エビデンスがあると思う。それを薬局薬剤師はなぜできないのか」と述べ、日本薬剤師会などに対して、在宅医療をめぐる薬局薬剤師の役割を明確にするエビデンス構築を求めた。
エビデンスについては、現場からひとつひとつの事例を積み上げ、構築することが重要と強調。会場にはすでに在宅に先進的に取り組む薬剤師が多く詰めかけたことから、「一緒に(在宅医療を)やっている医師の意見を単数でもいいので聞いてください。地域でやれば、複数になる。複数でやれば立派なエビデンスになる」と述べ、「今しかない、もう遅いかもしれないけれど、今から変えましょう」と呼びかけた。