【World Topics】エクササイズにもプラセボ効果?
公開日時 2015/03/20 03:50
運動に健康維持効果があることはすでに常識だが、アメリカでは、 運動量を自動測定する小型のセルフモニタリング機器が普及するにつれ、「エクササイズはバイタルサインのひとつ」という意見が医療専門職の間で聞かれるようになってきた。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
http://www.wsj.com/articles/doctors-dole-out-prescriptions-for-exercise-1418080961
その結果、最近では、患者の診断・状況にあわせて医師が運動処方をするのが一般的なプロトコルになりつつある。たとえば、Ⅱ型糖尿病の患者には「週4回の軽度から中程度の有酸素運動。週2回、軽度の負荷をかけた筋力トレーニング。いずれも休憩をとりながら行い、運動1時間に対し15グラムの炭水化物の摂取を忘れないこと」、神経症・抑うつ傾向にある患者には「5分程度 から始め、週4回20分から40分程度の有酸素運動を習慣づけること。ヨガや太極拳は神経症に効果がある」という具合だ。
一方では、運動にもプラセボ効果があるのではないか?との議論が活発にかわされはじめている。一般に運動の効果だと 評価され、信じられていることは、実は「自分は運動した」と思うことで引き起こされる波及効果ではないのか?という議論である。しかし、運動にプラセボ効果を測定することは容易ではない。改めて言うまでもなく「運動したか、しないか」はあまりも明白であるため、服薬実験でダミー薬を用いるようなブラインド実験は成立しないからだ。
ハーバード大学の研究者グループがホテルの客室係(7ホテルで働く合計84人の女性客室係)を対象に行った実験では、対象を2群に分け、一方には「客室の掃除は優れたエクササイズで運動効果が高い」という情報提供を行い、他方にはそのような情報提供をせず、4週間後に両者を比較したところ、「運動効果がある」と聞かされたグループでは①体重減少、②血圧降下、③体脂肪率減少、④ウェスト—ヒップ比率の拡大などのさまざまな効果が見られ、研究者は運動にも プラセボ効果があると結論している。
http://dash.harvard.edu/handle/1/3196007