英アストラゼネカ オンコロジー領域に成長を賭ける
公開日時 2014/12/04 03:50
英アストラゼネカ(AZ)のPascal Soriot CEOは、11月18日に開催された投資家向け会合で、オンコロジー領域を新たな「成長プラットホーム」にすると宣言した。この発表は、幅広いがんの研究を商業ベースでの成功に導くためには野心的なアジェンダである。
AZはすでに腫瘍領域のリーダーに成長することへ意欲を示していたが、注力分野の柱のひとつになるには至っていなかった。2013年3月の投資家対象の会合でSoriot CEOは、抗血小板薬Brilinta(一般名:チカグレロル)、糖尿病、呼吸器の各領域、新興国市場や日本市場に注力することを明らかにしていた。
ただ、腫瘍領域で承認間近な製品が見えてきたことが強化を後押しする。ファースト・イン・クラスのPARP阻害剤Lynparza(一般名:オラパリブ)がBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんを適応に欧米での承認が間近と期待されている。また、米国では、FDAの画期的新薬指定を受けた、次世代EGFR阻害剤AZD9291が非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で、2015年初頭に予定より早く申請が計画されている。
Soriot CEOは、「我々は腫瘍領域で豊富な製品ポートフォリオをもっている。我々はこれがわが社の重要な成長プラットホームになると信じている」と自信を示す。
AZの抗腫瘍薬は2014年第3四半期まで21億8000万ドルを売り上げたが、販売済み製品ポートフォリオの各製品の売上は、エストロゲン受容体拮抗剤Fasodexを除いて、どれも落ちている。
AZは、SoriotCEOが腫瘍分野のリーダーであるスイス・ロシュの医薬品事業部を率いていたこともあって、がん免疫療法の分野でのトップクラスとの競合を狙っている。AZは同分野では遅れていたが、買収したMedimmuneの活用や他社からの導入により強化を図りつつある。
AZはがん免疫療法の分野で先行するブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)、米メルクやロシュに追いつく必要がある。BMSは、すでにCTLA-4阻害剤Yervoy(一般名:イピリムマブ)を上市、PD-1阻害剤Opdivo(日本製品名:オプジーボ、一般名:ニボルマブ)はFDA審査中である。メルクのKeytruda(ペムブロリズマブ)は悪性黒色腫の適応で上市されている。ロシュが開発しているPD-L1阻害剤は後期ステージにある。
AZは、同分野の薬剤開発を加速化している。現在、開発しているがん免疫療法ポートフォリオのなかで、臨床段階あるいは臨床間近の薬剤には、PD-L1阻害剤MED14736 、PD-1阻害剤MED10680、PD-1/L1と相乗的に作用すると思われるOX40パスウェイを標的とした薬剤が3剤、STAT3阻害剤AZD9150、ファースト・イン・クラスのCRCX2拮抗剤AZD5069およびファイザーから導入したCTLA4阻害剤tremelimumabがある。
AZは、6月のASCO(米国臨床腫瘍学会)でこれらを概説、特殊な適応や新規の併用などで競争を乗り切る考えだ。
(The Pink Sheet 11月24日号)