AZソリオCEOが来日会見 クレストール特許切れ控えがん領域に注力
公開日時 2014/09/30 03:52
来日中のアストラゼネカ(AZ)のパスカル・ソリオCEO(写真右)は9月29日、同社東京支社で記者会見に臨み、日本事業について、消化性潰瘍薬ネキシウムなど主力品の育成や日本の製薬企業とのパートナーシップ強化により、今後も成長を維持していく方針を示した。AZ日本法人の2013年国内売上額は2335億円。国内で活動する製薬企業の平均成長率1.8%に対し、同社はこれを上回る6.4%成長を維持している。ただ、現在の業績を牽引しているクレストールの特許切れを数年後に控えるなど、マーケット環境の変化への対応が同社にとって最大の課題だ。ソリオCEOは、「得意領域であるオンコロジーを中心とするラインナップの強化と新薬の早期市場導入を強力に推し進め、2017年以降も成長を維持できる」との考えを表明した。
製品別に見ると、2011年発売のネキシウムが2013年度に売上高500億円を突破し、短期間で同社の主力品に成長している。国内事業を牽引する脂質異常症治療薬クレストールや呼吸器配合剤シムビコートもいまだ成長過程にある。今年5月に発売したSGLT2阻害薬フォシーガに現在営業リソースを集中させているところ。いずれも内資企業との共同販売で売り上げを伸ばしており、ソリオCEOは日本市場の戦略として、今後もパートナーシップを重視していく姿勢を示した。
ただ、主力品のクレストールは2017年に、シムビコートも2018年に特許切れを迎える見込みで、次世代の業績を支える新薬の品揃えと早期上市が急務となっている。ソリオCEOは期待する開発薬として、オンコロジー領域のパイプラインを複数あげた。この中に含まれるAZD9291は、EGFR陽性非小細胞肺がんでイレッサなど既存薬の耐性患者での効果が見込める。抗PD-L1抗体(開発コード:MEDI4736)やCTLA-4抗体(tremelimumab)などがん免疫薬の開発にも注力しているが、この7月には抗CCR4ヒト化抗体モガムリズマブを有する協和発酵キリンと提携し、3剤併用療法の開発も計画している。
一方、循環器領域では抗血小板薬チカグレロルが次世代新薬として期待されている。急性冠症候群の適応で現在国内申請中。ただ、日本人728例を含むアジアでの第3相臨床試験(P3)の結果では、対照薬のクロピドグレルに対し、有効性、安全性ともに優位な結果を見出すことができなかった。この点についてソリオCEOは、世界的には大規模国際共同P3の良好な結果をベースに抗血小板薬市場において売上トップの位置付けにあると説明。日本でも発売を見込み、すでに同社の経営計画にも織り込んでいるとした。
なお、同社はファイザーからの買収交渉の際に、グローバルの経営計画として▽2017年に2013年と同レベルの売上を維持▽2023年に450億ドルの売上を確保(13年売上に比べ75%増)―を発表している。ネキシウムやクレストールなど主力品の特許切れによる影響が続くものの、オンコロジー領域を中心とする新薬ラインナップの強化により2017年以降成長に転じる見通しを立てている。