武田のアクトス賠償金請求、売上に応じた金額か?
公開日時 2014/04/11 03:51
米・ルイジアナ州の連邦地方裁判所の陪審は、武田薬品が糖尿病薬アクトス(一般名:ピオグリタゾン)の膀胱がんのリスクを隠していたと提訴された裁判で、武田薬品に60億ドル、販売提携先の米・イーライリリーに30億ドルの懲罰的損害賠償の支払いおよび両社の補償的損害賠償として150万ドル(75%が武田、25%がイーライリリー)の支払い義務を認定した。
同地裁の陪審員らは、どのようにこの高額の懲罰的支払いを認めるように至ったのか?
4月7日に上記の認定を行った陪審員らは、アクトスの売上を念頭に置いていたようだ。Mark Lanier陪審員は、損害額の特定な金額を示唆せず、「私は、陪審員らに武田薬品の持っているお金の観点から考えてみなさいと話した」と語る。
同氏は、陪審員に武田薬品は230億ドルの正味価値を持つし、アクトスで200億ドル売り上げたと語っていた。「そのような会社にどうやって影響を与えることができるか?もし、(賠償額が)10億ドルで済めば、彼らは日本で祝杯をあげるだろう」と付け加えた。
陪審は、原告である、アクトスを服用、膀胱がんを発症したというTerrence Allen氏および妻に対して、90億ドルおよび150万ドルの支払い義務を認めた。Lanier陪審員は、個人的な訴訟では最大の金額になると述べた。しかし、同氏は、最高裁が実際の損害に対して合理的でなければならないとの観点から減額されるとみている。05年にLanier氏は、Vioxx(ロフェコキシブ)の訴訟で、陪審の審決には2億5300万ドルを認めさせたが、判事には2600万ドルに減額されている。
今回の訴訟で金額が多額となった理由のひとつには、地裁のRebecca Doherty判事が陪審に武田薬品が破棄した書類が裁判の結果に影響を与えた可能性があるか決めることを指示したことがある。
判事は、「失われた情報などの重要性」を考慮すると、「武田薬品の純粋な意図について大きな懸念を持つ」と表明した。情報の中には、1993年の武田薬品とアップジョン(現ファイザー)がピオグリタゾンでの協力を検討していた当時の双方の幹部の同剤の安全性などについてのやりとりがあったとしている。一部のやり取りは残されているという。
アクトスが膀胱がんを引き起こしたとの約3000件の訴訟はルイジアナ西地方裁判所に一括してまとめられている。今回のAllen氏の評決は裁判となる最初のケースである。次の評決は2月の予定。
アクトスは、米国では1999年に承認、2012年8月に特許切れを迎えている。後発医薬品(GE)参入前の同剤の年間売上高は20億ドル以上。この問題をめぐっては、すでに3件の州裁判所で陪審の判断が出されている。カリフォルニア州・ロサンゼルスの陪審は補償的損害賠償として原告に650万ドルの支払いを認めたが、裁判所はこれを無効とした。メリーランド州・ボルチモア市巡回裁判所の陪審は、武田に(警告などを伝える)過失があったとしたが、原告は自身の安全への注意を怠ったとした。フロリダ州・ラスベガスでは、武田が勝訴している。
(The Pink Sheet Daily 4月8日号より)