厚労省は3月24日、新薬21成分37品目を承認した。この中には新しい2型糖尿病薬のSGLT2阻害薬3成分4製品(ブリストル・マイヤーズ、大正製薬、興和、サノフィが申請)も含まれる。SGLT2阻害剤は全部で6成分が承認申請され、アステラス製薬のスーグラ錠が他剤に先行して1月に承認を取得、4月にも薬価収載される見通しだが、今回承認された4剤もこれに続き、通常どおりに進めば5~6月にも薬価収載となる。また、今回は第一三共の新しい抗血小板薬エフィエント錠も承認となった。
承認された医薬品は次のとおり(カッコ内は一般名と申請企業名)
【SGLT2阻害薬】
▽フォシーガ錠5mg、同10mg(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、ブリストル・マイヤーズ):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
腎臓の近位尿細管で糖を再吸収するナトリウムグルコース共輸送担体2(SGLT2)を選択的に阻害し、過剰な血糖を体外に排出する。5mgを1日1回経口投与し、効果不十分な場合には10mgに増量できる。アストラゼネカと小野薬品が共同販促する。
▽ルセフィ錠2.5mg、同錠5mg(ルセオグリフロジン水和物、大正製薬):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
フォシーガ錠と同様の作用機序を有するSGLT2阻害薬で、1日1回2.5mg錠を朝食前または後に経口投与する。効果不十分な場合には5mgに増量できる。大正富山医薬品とノバルティスファーマが共同販売する。
▽デベルザ錠20mg(トホグリフロジン水和物、興和)、アプルウェイ錠20mg(同、サノフィ):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。フォシーガ錠、ルセフィ錠と同様の作用機序を有するSGLT2阻害薬。1日1回朝食前または後に経口投与する。
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【降圧配合剤】
▽ザクラス配合錠LD、同配合錠HD(アジルサルタン/アムロジピンベシル酸塩、武田薬品):「高血圧症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間4年。ARBアジルサルタン20mgとCa拮抗薬アムロジピンの配合剤。LDはアムロジピン2.5mg、HDは同5mgを含む。1日1回経口投与する。第一選択薬としては用いない。
▽アテディオ配合錠(バルサルタン/シルニジピン、味の素製薬):「高血圧症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間4年。ARBバルサルタン80mgとCa拮抗薬シルニジピン10mgを組み合わせた配合剤。1日1回1錠を朝食後に経口投与する。第一選択薬としては用いない。販売は持田製薬が行う。
▽ラジムロ配合錠LD、同配合錠HD(アリスキレンフマル酸塩/アムロジピンベシル酸塩、ノバルティス ファーマ):「高血圧症」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間4年。レニン阻害薬アリスキレン150mgとCa拮抗薬アムロジピンの配合剤。LDはアムロジピン2.5mg、HDは同5mgを含む。1日1回経口投与する。第一選択薬としては用いない。
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▽エフィエント錠3.75mg、同錠5mg(プラスグレル塩酸塩、第一三共):「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患〔急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症および陳旧性心筋梗塞〕」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
血小板細胞のADP受容体に作用し、血小板凝集を促進させるシグナル伝達を抑制し、抗血小板作用を示す。投与開始日に20mg、その後は維持用量として3.75mgを経口投与する。ADP受容体阻害作用薬には、クロピドグレルやチクロピジン(共にサノフィ)がある。
▽イクスタンジカプセル40mg(エンザルタミド、アステラス製薬):「去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
腫瘍組織でアンドロゲン(男性ホルモン)がアンドロゲン受容体に結合することを競合的に阻害する。これにより、同受容体を介したシグナル伝達が阻害され、腫瘍増殖が抑制される。外科的または内科的去勢術(ホルモン療法)抵抗性の患者に使用する。1日1回160mgを経口投与する。
▽ロンサーフ配合錠T15、同T20 (トリフルリジン/チピラシル塩酸塩配合錠、大鵬薬品):「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。再審査期間8年。
がん細胞の増殖に必要なさまざまなDNA機能を抑制するトリフルリジン(FTD)と、FTDの代謝を抑制して有効血中濃度を維持するチピラシルを組み合わせた経口配合剤。標準的な治療が困難な場合に限って用いる。フェーズ2(P2)で全生存期間の延長(9.0カ月に対してプラセボ群6.6カ月)が認められ、P3終了前に申請されていた。そのため、同薬についてはP3結果の提出が求められている。
▽タイサブリ点滴静注300mg(ナタリズマブ遺伝子組換え、バイオジェン・アイデック・ジャパン):「多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
α4インテグリンと結合し、白血球が血管外に移行することを阻害することで炎症を抑制すると考えられている。4週に1回1時間かけて点滴静注する。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を踏まえ、同省から開発要請されていた。流通管理品目に指定されている。
▽トレプロスト注射液20mg、同50mg、同100mg、同200mg(トレプロスチニル、持田製薬):「肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスII、III、およびIV)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
プロスタサイクリン誘導体で、持続静注投与のほか持続皮下投与も可能。既存薬と比べて感染リスクの軽減が見込まれる。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を踏まえ、同省から開発要請されていた。
▽タペンタ錠25mg、同錠50mg、同錠100mg(タペンタドール塩酸塩、ヤンセンファーマ):「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。麻薬指定されている。
μオピオイド受容体作動作用およびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有する強オピオイド鎮痛剤。1日50~400mgを2回に分けて経口投与する。症状に応じて適宜増減する。
▽サムスカ錠7.5mg、同錠15mg、同錠30mg(トルバプタン、大塚製薬):「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行抑制」の効能・効果を追加する新効能・新用量・剤型追加にかかわる医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年間。
ADPKDは、30代前後で発症して腎臓に水のたまる嚢胞が出来て徐々に腎不全に陥る遺伝性疾患で、有効な治療法がなかった。サムスカでは嚢胞への液分泌を低下させることで成長を抑え、症状の進行を抑制することが期待される。肝障害や高Na血症などの副作用の恐れもあることから、処方は企業主催の講習を受けた医師のみとし、調剤の際も当該医師が処方したことを確認する流通管理を行い、適正使用を図る。サムスカは10年以降、心不全や肝硬変における体液貯留の適応で発売されている。
▽グラッシュビスタ外用液剤0.03%3ml、同0.03%5ml:(ビマトプロスト、アラガン・ジャパン):「睫毛貧毛症」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。この効能・効果で23の国または地域で承認済み。
同成分・製品名ルミガンで09年から緑内障、高眼圧症の点眼剤として販売されている。その治験の有害事象として睫毛の成長が多く認められたことから、この適応症での開発が行われた。専用のアプリケータに滴下して就寝前に睫毛基部に塗布する。
▽乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチンH5N1筋注用「化血研」(同、化血研):「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
弱毒化したインフルエンザウイルス(H5N1株)をアヒル胚性幹細胞由来株化細胞で増殖させ、精製したウイルス粒子を不活化し、界面活性剤処理して得られた不活化スプリットインフルエンザウイルスを有効成分とする。接種時に免疫補助剤と用時混合する。
▽沈降細胞培養インフルエンザワクチンH5N1筋注30μg/mL「北里第一三共」、同60μg/mL、(同、北里第一三共ワクチン):「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
弱毒化したインフルエンザウイルス(H5N1株)をイヌ腎由来細胞で増殖させ、精製したウイルス粒子を不活化し、免疫補助剤として水酸化アルミニウムを添加した沈降全粒子ワクチン。
▽アビガン錠200mg(ファビピラビル、富山化学工業):「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症」(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
インフルエンザウイルス遺伝子の複製酵素であるRNAポリメラーゼを選択的に阻害し、ウイルスの増殖を阻止する。新しい作用機序であるため、既存薬への耐性株にも効果を発揮することが見込まれる。現時点で有効性のエビデンスが限られていることや、非臨床試験では催奇形性が確認されているため、承認条件に▽追加臨床試験の実施▽パンデミック発生まで一般に流通させない厳格な流通管理の実施▽妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与回避や投与中と投与後7日間避妊措置を行う安全対策―などが挙げられている。
▽テノゼット錠300mg(テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、グラクソ・スミスクライン):「B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるHBVの増殖抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間5年10か月。
HBVが人の細胞内で増殖するのに必要な酵素の働きを阻害する。米ギリアドサイエンスが開発し、国内では04年にHIV‐1感染症の適応で日本たばこが承認を取得していた。GSKはHBV薬としてゼフィックス、ヘプセラを販売しており、テノゼットは3剤目にあたる。
▽レスピア静注・経口液60mg(無水カフェイン、ノーベルファーマ):「早産・低出生体重児における原発性無呼吸(未熟児無呼吸発作)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
早産・低出生体重児における原発性無呼吸では、短時間の呼吸停止でも徐脈やチアノーゼを伴うとされる。レスピアは、呼吸器の働きを担う中枢神経を刺激することで呼吸促進作用を示す。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高いと判断され、日本ベーリンガーインゲルハイムに開発要請していた。同社とノーベルファーマが共同開発し、ノーベルファーマが申請していた。全例調査を実施する。
▽スミスリンローション5%(フェノトリン、クラシエ製薬):「疥癬」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間4年。疥癬は、ダニが皮膚の角質層に寄生することでダニ自身やダニの排泄物に対するアレルギー反応による皮膚病変と掻痒が起こる皮膚感染症で推定患者数8~20万人。
▽テビケイ錠50mg(ドルテグラビルナトリウム、ヴィーヴヘルスケア):「HIV感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。HIVウイルスが増殖するのに必要な酵素(インテグラ―ゼ)を阻害する。類薬には、アイセントレス(MSD)やスタリビルド配合錠(鳥居薬品)がある。全例調査のほかインフォームドコンセントの取得、海外臨床試験成績の提出が条件付けられている。