【World Topics】がん治療新時代
公開日時 2014/01/06 03:50
がんの宣告を受けただけで患者が動揺したのは過去の話だ。アメリカでは年々、前年比35~40%の伸び率で “Cancer Survivor” (以下、生還者)が増えている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
がん治療が進化したことで癌は“慢性疾患” になりつつある。がん撲滅の激しい闘いのあとに、医療界はがん治療の新時代を迎え、新たな課題として、生還者への支援に直面している。
近年の追跡調査により、化学療法(ケモセラピー)や放射線治療が肝臓や心臓等の内蔵にダメージを与え、また新たな疾患を引き起こす可能性があることがわかってきている。生還者には医学的なフォローが欠かせない。
がん患者の約70%は治療中のいずれかの時点でうつ状態を経験すると言われており、また治療終了後も再発や転移、死に対する恐怖や不安に苛まれる患者も少なくない。さらにがん治療による心身の消耗のため発症前の生活に復帰することが困難と感じる患者も多く、メンタルケアも不可欠だ。
米・国立がんセンターの推定によれば、米国にはがんからの生還者が1400万人おり、確定診断の時点から10年以上生存する患者が40%になった。2022年までには1800万人に増加すると予測されている。
専門家の間で「がん治療のプロトコルに『生還者に対するアフターケア』を含めて考えるべきだ」との意見が共有されるようになっており、すでに、たとえば病院チェーンの Greenville Health System (サウスキャロライナ州)が「がん及びその後のアフターケアの総合治療センター(Center for Integrative Oncology and Survivorship)」を開設するなどプロバイダー側の組織的対応もはじまっている。http://www.ghs.org/CIOS
メディケアは、がんのアフターケアへの支払い償還を部分的に開始しており、民間の医療保険にも近い将来の支払いを開始が期待されている。