抗凝固薬の服用中止者 4人に3人が「脳梗塞の発症リスク軽減のため」との意義知らず
公開日時 2013/05/30 05:02
健康日本21推進フォーラム(理事長:高久史麿・東京大名誉教授)はこのほど、心房細動患者の服薬コンプライアンスに関する調査結果をまとめた。レセプトデータを基に分析したところ、抗凝固薬の服用中止者が年間約3万3000人と推定されたほか、これとは別に実施した意識調査から、服用中止者の4人に3人が、抗凝固療法によって心原性脳梗塞の発症リスクが軽減されるということを知らない実態が明らかになった。同フォーラムは「(患者が)抗凝固薬服用の意義を十分理解していないことが、服用中止につながっている可能性が示唆される」と分析している。
レセプトデータ分析は、健保組合などのレセプトデータや健診データを解析する日本医療データセンターの協力により実施した。その結果、心房細動および心房粗動の患者は約130万人と推定され、この約75万人強に抗凝固薬ワルファリンが処方されていた。調査時点(2011年1~9月)で唯一の治療選択肢だったワルファリンの服用患者の服薬中止状況を見てみると、1年間の観察期間の服薬中止率は4.3%、患者数で約3万3000人近くにのぼった。なお、内訳はワルファリンの服用中止者が約2万6000人、ワルファリンから他の抗凝固薬にスイッチ後に服用を中止した患者が約7000人だった。
次に、心房細動で抗凝固薬を服用している患者と中止した患者を対象に意識調査を実施した。方法はインターネットリサーチ。サンプル数は193人。内訳は服薬継続者100人、中止者93人。処方された抗凝固薬はワルファリンが73.1%、リバーロキサバンが8.8%、ダビガトランが5.2%、残りの人が名前を覚えていない――。調査期間は4月20日~21日。
まず服用中止の時期とその理由をみると、服薬開始から中止までの期間が1年未満は55.9%、1年以上は41.9%だった。一般的に服薬中止までは1年未満が多いといわれる中、長期服用者の中止が少なくない実態がみられた。中止理由については、出血が止まりにくいなどの「副作用・出血の危険性」や「継続服用がいや」「1日の服用頻度が多い」「他剤との飲み合わせの注意が面倒」など薬剤関係を中止理由に挙げた人が54.9%と最も多かった。次いで通院関係(25.1%)、食事制限などの生活関係(10.3%)が理由に挙がった。
服薬継続者と服薬中止者で大きく認知・理解に差があったのが、抗凝固薬を服用する意義だった。「抗凝固薬を服用しないことで脳梗塞の発症リスクが高まる」との認知・理解については、継続者の6割が「知っている」と答えたが、中止者で「知っている」は22.6%にとどまり、4人に3人が「知らない」との結果になった。「心房細動が原因の脳梗塞の予防に向けて、抗凝固薬を服用することが多い」ということを「知っている」との回答割合でも、継続者65%、中止者41.9%と20ポイント以上の差がついた。
◎抗凝固薬の新薬 継続者、中止者ともに関心高く
そのほか、抗凝固薬に望むことを聞いたところ、継続者、中止者ともに半数以上が「1日1回の服薬ですむ」「副作用(出血の危険性)がない」を挙げた。「納豆などの食事制限がない」は継続者の46%が望んだが、中止者では4人に1人が望む程度だった。新薬への関心は継続者、中止者ともに9割の人が関心を示したが、新薬の存在を知らない人は4割強にのぼった。