日本てんかん学会 専門医制度認定求める
公開日時 2012/10/15 04:01
日本てんかん学会は、厚生労働省が告示する広告可能な専門医として同学会が認定する専門医を認めるよう同省や社団法人日本専門医制評価・認定機構に働きかけを行っていることを明らかにした。都内で開催されている年次学会総会の記者会見で理事長の兼子直氏(医療法人清照会湊病院北東北てんかんセンター長)らが10月11日、説明した。
学会側が専門医制度の広告を求める背景には昨今、無申告で運転免許を取得・更新したてんかん患者が起こした死傷事故が社会問題となっていることがある。
現在、道路交通法に基づき、各都道府県公安委員会が、てんかんが疑われる運転者に行う臨時適性検査は日本てんかん専門医が担当することとなっている。しかし、同検査を担当する専門医のなかで、広告が認められていないのは日本てんかん学会専門医と日本睡眠学会認定医のみ。
学会としてはてんかん専門医の存在を広く一般に周知できるようにすることで、患者の専門医への受診を促し、結果として適正な治療を通じててんかん患者の運転適性の向上と事故発生の減少につなげたい考えだ。
同学会では99年から①正会員歴5年以上②50症例の症例リストの提出(脳神経外科は手術例10例を含む25例の症例)③臨床論文5編(うち3編は筆頭者)---との条件で学会認定医制度を開始し、その後、日本専門医制評価・認定機構の指導のもと「てんかん専門医」と改称し、04年からは専門医試験をスタートさせた。
2011年には厚生労働省の指導などを受けて専門医試験への合格とは別に①現在まで3年以上引き続き本学会の正会員である②現在、てんかん診療に従事している③種々の病型を含む50例の具体的なリスト(脳神経外科では手術例10例を含む25例とする)および症例詳細記述5例を提出する④てんかんに関する論文が3編ある(うち1編は筆頭著者であること、発表年時は問わない)⑤てんかんの診療に関して5年以上の研修歴を有する。そのうち、認定研修施設における3年以上の研修を必須とする⑥基盤となる分野の専門医あるいは指定医などを有している---の条件を課している。
学会側は今年4月に小宮山洋子厚労相(当時)へ「日本てんかん学会てんかん専門医制度認定の要望書」を提出し、制度不備があれば同年6月末までの回答を要請したものの、厚生労働省からは返答はなく要望は事実上棚晒しになっている。9月には社団法人日本専門医制評価・認定機構にもこの件に関して協力を要請する文書を送付した。
会見で同学会てんかん専門医委員会委員長の馬場啓至氏(国立病院機構長崎医療センター脳神経外科部長)は「道路交通法に基づく臨時適性検査では日本てんかん学会のてんかん専門医が指名されながら、その専門医を広告が不可としているのは法制度上の矛盾」と批判し、改めててんかん専門医制度の広告を求めていく考えを強調した。