「高脂血症薬リピトール(アトルバスタチン)後発品の発売は、インドの後発品企業への信頼を強化するもので、インドで初めて開発された新薬である抗マラリア治療薬Synriamは、われわれインドでも新薬が開発できるという考えを導くもの」と語るのは、ランバクシー・ラボラトリーズのArun Sawhney CEO兼マネージングディレクターだ。今回のアジアスポットライトでは、The Pink Sheet姉妹誌「PharmAsia News」が、Sawhney CEOにランバクシーの現況、経営戦略、当面する課題などについて尋ねた。同社は、工場のコンプライアンス違反問題などで米食品医薬品局(FDA)から一定の措置を講じられるなどしたため、同CEOは過去4年間メディアとの会見などを留保してきたが、このほど、4年ぶりに正式にメディアの取材に応じた。
PharmAsia News (PAN):2008年にCEOがランバクシーに戻ってきてから非常に厳しい時期だったが、あらゆる課題にどう対応したか?
Arun Sawhney(AS):私はランバクシーで医薬品の世界を知ったが、ランバクシーの文化を知らなかったので、1997年にわが社を退職した。2008年に戻って来たが、会社はやや変化し、多くの問題を抱えていることに気が付かなかった。仕事は広範囲で個人的な事情もあったが、星の巡り会わせのように、会社に戻ったには、私に医薬品業界で働く機会を与えてくれるためのようだった。
PAN:CEOがランバクシーに戻った直後、FDAと向き合いながら法律問題に直面することになった。また、そのころ、第一三共の傘下に入った。
AS: 会社に再入社したときには、同問題は解決に近いという印象だった。2008年9月にFDAから「輸出警告」が発行されたが、それまで、FDAが問題を重大に考えているとは思わなかった。その後、2009年2月に「Application IntegrityPolicy」が発せられたため、我々は問題の所在を見極め対処できることを確信した。当時のAtul Sobti CEOと第一三共の采博士が解決に取り組み始めた。第一三共はすでに我々の株式64%を取得していたため、同社と協力してFDAまた米司法省とも話し合いながら問題解決に邁進した。
PAN: これら当局との話し合いは厳しいものだったか?
AS: 厳しかったとは言えない。確かに問題自体は処理しにくいものだったが、話し合いは友好的だった。当局は我々に我々の側の理由を求め、我々も当局側の理由を求め、一致点を見出した。従って、雰囲気は友好的だった。
PAN: 諸問題を抱えるなかで、いままで最大のビジネスチャンスともいえるアトルバスタチンを市場に投入できた。
AS: アトルバスタチンだけではない。抗HIV薬バラシクロビルやアルツハイマー病治療薬ドネペジルも上市にこぎつけた。多くの人は我々がリピトールの後発品開発を進めることが出来るということを信じなかった。私は彼らの理解度を責めはしない。我々は人々に話していないので、彼らは自分なりの仮説や結論を出しているからだ。
PAN: 様々な問題が錯綜するなか、CEOは、アトルバスタチンの発売が消え去ってしまうのではないかと考え始めていたか?
AS: 私は、冷静かつ正直、率直でありたかった。一方では、話し合いは進展していたが、次に何が起きるかが見通せなかった。不確定さのために決断を下すことが出来なかった。そのため、シナリオを作らなければならなかった。そのため、アトルバスタチンについては、承認を取得した場合と取得しなかった場合のシナリオを作らなければならなかった。それは保険のようなものだといえる。過去にさかのぼれば、機会について、一つの方法か、別の方法で行うかを考えなければならなかった。100%何もない状況を持つことは愚かなことだ。要するにシナリオを作るということが大事だ。
PAN:アトルバスタチンのビジネスチャンスを検討したのは、ランバクシーとテバとどちらが先か? ランバクシーがアトルバスタチンを発売したのは、インドの後発品企業への信頼を強化するものだと思うが。
AS:(どちらが先か)分からない。大した問題ではない。賢明な2社が話し合い、取引をしたということで十分だ。
このインタビューの続きは次号にて。
(The Pink Sheet 6月11日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから