【秋アレリポート】ブデソニド/ホルモテロール配合剤 コントロール不十分な成人気管支喘息患者の自覚症状を改善
公開日時 2011/11/30 06:02
大阪市立大学呼吸器病態制御内科学の今橋由美子氏は、自験例からブデソニド/ホルモテロール配合剤(BUD/FM)について、「従来の吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用型β遮断薬(LABA)でコントロール不十分な成人気管支喘息で、末梢気道に残存する炎症を有効に制御し、患者の自覚症状を改善する可能性が示唆される」ことを明らかにした。11月12日、第61回日本アレルギー学会秋季学術集会にて発表した。
対象は、Asthma Control Test(ACT)のスコアが24点以下で、サルメテロール/フルチカゾン配合剤(SM/FP、100/500μg/日)(17例)、フルチカゾン+サルメテロール(2例)、ベクロメタゾン+サルメテロール(1例)のいずれかを8週間以上受けている成人気管支喘息患者20例。対象症例のSM/FP平均使用歴は22.3±9.9か月、うち19例はアレルギー性鼻炎を合併していた。治療ステップはステップ3が16例で、残りがステップ4であった。
BUD/FM切替8週後のACTスコア合計平均は、切り替え前平均19.35から21.90に有意に改善した(p=0.043)。ACTスコアの項目別では、「息切れ」、「夜間・早朝症状」「喘息コントロール自覚」の3項目で切り替え前に比べて有意にスコアが上昇していた。
喘息コントロールを評価するACTスコアによるコントロール状況は、切り替え前はコントロール不良(20点未満)7例、コントロール良好(20点以上24点以下)が13例、完全なコントロールを達成している症例はなかったが、8週間後にはコントロール不良は4例に減少し、コントロール良好が12例、完全なコントロールが達成できた症例は4例となった。
また、呼気NO濃度は切り替え前平均43.37ppbから8週間後平均では33.25ppbと有意な低下を示し、気管支喘息診断のカットオフ値37ppbを下回った(p=0.046)。
一方、呼吸機能検査での1秒量、%1秒量、50%肺気量位での呼気流量(V 50)、25%肺気量位での呼気流量(V 25)、1秒量20%低下時のアセチルコリン濃度(PC20)、呼吸抵抗関連の全気道抵抗(R5)、中枢気道抵抗(R20)、末梢気道抵抗(R5-R20)、肺の弾性抵抗(X5)は、いずれも切り替え前と8週間後で有意な差は認めなかった。
BUD/FMへの切替による副作用については「嗄声を訴えた症例が1例あったが、あくまで自覚症状レベルのもので、臨床上問題になるようなものではなかった」と報告した。
今橋氏は、ICS+LABAでACTスコアが24点以下の成人気管支喘息患者において、BUD/FM配合剤は、中枢気道のみならず末梢気道に残存する炎症をも抑制し、より良好な喘息コントロールを達成する可能性を示唆した。ERS/ATS statement: Asthma Control and ExacerbationsによるとICSによる効果は、最初に夜間症状の改善が見られ、2ヶ月程度でFEV1.0の改善、その後、朝のピークフロー、気道過敏性、の順に改善すると言われている。今回の検討は8週間であったが、今後の変化を追うと肺機能やIOS、気道過敏性にも改善が見られる可能性があるのではないか、と期待感を示した。