いまがバイオシミラー参入の機会 抗体医薬、生物製剤など【特許切れリスト付】
公開日時 2011/07/12 04:00
ロシュ/バイオジェンのリツキサン(リツキシマブ)、アムジェン/ファイザーのエンブレル(エタネルセプト)、ロシュのハーセプチンの特許が主要市場で3年以内に満了を迎えるが、ジェネリック企業にとっては大きなビジネスチャンスの到来となる。特に生物製剤市場は最大の伸びを示し、現在、1100億ドル市場に到達しているが、IMSによると2020年までには1000億ドル以上の売上分が特許切れになるという。今までのバイオシミラーを見ると第1世代は、インスリンとエリスロポエチン(EPO)といえる。ドイツでは、EPOはすでにバイオシミラーが市場の60%を占めている。そして、第2世代は、抗体医薬などよりメカニズムが複雑な薬剤になる。
EUで2010年後半には、パブコメ募集期限を2011年5月31日までとしていたバイオシミラー抗体医薬のガイドラインが発表されるほか、米食品医薬品局(FDA)でも、「生物製剤価格競争・イノベーション法」(Biologics Price Competition and Innovation Act)が2009年に連邦議会を通過、2010年には承認手続きについてヒアリングを始めた。
抗体医薬リツキシマブは、2013年1月に欧州での特許が切れるが、米調査会社デシジョン・リソースのアナリスト、Andrew Marron氏は、「リツキシマブが、抗がん剤で最初の抗体医薬バイオシミラーになる」と予想している。リツキシマブは、1998年に欧州で発売、世界で4番目の売上を誇る生物製剤となった(デシジョン・リソース)。2011年の売上も63億ドルに達すると見込まれる。
イスラエルのテバ・ファーマシューティカルズは、同剤のバイオシミラー上市に向けて、スイスのロンザ・バイオロジクスと共同で現在、薬物動態・薬力学・安全性をMabThera(リツキサンの欧州製品名)と比較するフェーズIb試験中。バルティスの後発品部門サンドは欧州で関節リウマチを対象に同剤バイオシミラーGP2013のフェーズI/II試験を実施中。韓国のセルトリオンは、米ホスピーラと共同で2011年第2四半期には臨床試験を開始予定―など後発品メーカーの動きは活発だ。
インドのドクターレディズは、すでに、リツキシマブのバイオシミラーを2007年に販売開始し、2009-2010年には500万ドル以上を売り上げている。米メルクは抗体医薬に注力することを明らかにしているが、「リツキシマブ競争」に参加するかどうか明らかにしていない。しかし、メルクは、リツキシマブ競争とは別に2011年6月に韓国のHanwha ChemicalがフェーズIII実施中のTNF-α阻害剤エタネルセプト(先発品:エンブレル)のバイオシミラーの権利を取得、バイオシミラー参入を明らかにした。
第2世代バイオシミラーは医薬品業界以外の参入も招いている。韓国のSamsung Groupは、2011年1月にクインタイルズとの2億6600万ドルのジョイントベンチャーの一環として、リツキシマブを開発、現在、フェーズI試験中だ。
バイオシミラー抗体は、第1世代バイオシミラーに比べると複雑でコピーしにくいが、第1世代の先例があるので、容易な面もある。しかも、投資家を満足させるにはいまだ努力を要するが、大きな安全性の問題も生じていないのはメリットだ。
<数年内に特許が切れるバイオ医薬品一覧>
製品名(一般名) 特許満了年 売上 主な適応
EU 米
リツキサン 2013年 2015年 56億ドル CLL、NHL、RA
(リツキシマブ)
ハーセプチン 2014年 2019年 49億ドル 乳がん
(トラスツズマブ)
レミケード 2015年 2018年 59億ドル クローン病、RA、UC
(インフリキシマブ) 乾癬
ヒュミラ 2018年 2016年 56億ドル RA、クローン病、UC
(アダリムマブ) 尋常性乾癬、PA
Synagis 2015年 ― 10億ドル RSV
(パリビズマブ)
エンブレル 2015年 2012年 63億ドル RA、PA、尋常性乾癬
(エタネルセプト)
(訳注:CLL=慢性リンパ球性白血病、NHL=非ホジキンリンパ腫、RA=関節リウマチ、UC=潰瘍性大腸炎、PA=乾癬性関節炎、RSV=RSウイルス)
出典:デシジョン・リソース、JPモルガン
(The Pink Sheet 6月27日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから