アクトス 膀胱がんリスクを使用上の注意に追記
公開日時 2011/06/24 04:04
厚労省・薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は6月23日、ピオグリタゾン(製品名:アクトス、ソニアス配合錠、メタクト配合錠、武田薬品、6月24日薬価収載予定の後発品)について、当面の対応として、膀胱がんのリスクについて、添付文書の使用上の注意に追記すると発表した。フランスや米国で実施された疫学研究データなどに基づいて判断した。
添付文書の改訂案では、これまで関連記載のなかった“重要な基本的注意”に追記する。
「海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究において、本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加するおそれがあり、また、投与期間が長くなるとリスクが増える傾向が認められている」とした。
その上で、▽膀胱癌治療中の患者には投与を避けること。特に、膀胱癌の既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること▽投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること。また、投与中に血尿、頻尿、排尿痛等の症状を認めた場合は、直ちに受診するよう患者に指導すること▽本剤投与中は、定期的に尿検査等を実施し、異常が認められた場合は、適切な治療を行うこと。また、投与終了後も継続して、十分な観察を行うこと――の3項目を追記する。
また、“その他の注意”として、これまでにラット及びマウスへの経口投与で、膀胱腫瘍がみられたことが記載されていたが、海外での疫学研究データを追記。「海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究の中間解析で、全体解析では膀胱癌の発生リスクに有意差は認められなかったが(ハザード比1.2[95%信頼区間 0.9-1.5])、層別解析で本剤投与期間が2年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した(ハザード比1.4[95%信頼区間 1.03-2.0])。また、別の疫学研究で、本剤投与患者において、膀胱癌の発生リスクが有意に増加し(ハザード比1.22[95%信頼区間 1.03-1.43])、本剤投与期間が1年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した(ハザード比1.34[95%信頼区間 1.02-1.75])」とした。
◎必要に応じた追加の対策も検討 欧米の対応踏まえ
このエビデンスとなっているのが、フランス、米国での疫学研究のデータ。「わずかであるが、アクトス使用者において、投与期間に依存して膀胱癌の発生リスクが上昇する可能性がある」と判断し、添付文書の改訂に踏み切った。ただし、「疫学研究における限界も踏まえて、慎重にリスク評価をすべきである」とした。実際、膀胱癌のリスクをあげないとする疫学研究なども複数報告されている。
また、使用上の注意の改訂に伴い、医師から患者へのリスクに関する説明用資材を製造販売業者から提供するなどの対応を求めた。そのほか、米国で継続して実施されている前向き疫学調査の結果や欧米当局の評価を含め情報収集を行い、必要に応じ、追加の対策を検討するとしている。
同剤のリスクをめぐっては、フランス・ドイツの規制当局が新規処方をしないよう通達したほか、米国では、添付文書や患者さん向け説明文書の改訂を予定している。
なお、同剤は2009年度の年間推定使用患者数は約132万人。日本人の膀胱癌の年齢調整罹患率は、10万人当たり12人(男性)、白人では10万人当たり20人程度とされている。