青年期から若年成人期のBMIと、若年成人期の肥満関連疾患との関連性を検討した結果、糖尿病の発症リスクは、主に診断時のBMI上昇と関連していた一方、冠動脈心疾患の発症リスクは、青年期と成人期両方のBMI上昇と関連することがわかった。冠動脈心疾患の進行プロセスは、より漸進的であることが、裏付けられたことになる。米Brigham and Women’s HospitalのAmir Tirosh氏らの研究グループが、学術誌「NEJM」4月8日号で報告した。

同研究は、Israel Defense Forces Medical Corpsが現在も実施中の、長期前向き調査MELANYのデータを分析したもの。MELANY試験では、兵役義務後（約25歳）も軍隊に残っている隊員を定期的に検査。体重、身長、血圧、病歴などの調査のほか、完全な健康診断を行っている。またデータベースには、入隊時（約17歳）に検査した際の体重と身長の記録が含まれている。

対象となったのは、青年期のBMIが15～36だった男性37,674人。兵役義務後の初回検査から2007年12月末まで追跡、糖尿病または冠動脈心疾患の診断、死亡、退役の場合は、その時点で追跡終了とした。平均追跡期間は17.4年。青年期と成人期のBMIやその間の変化と、2型糖尿病と冠動脈心疾患との関連性を、青年期のBMI数値を10分割して検討した。

青年期の平均年齢は17.44歳。BMIの平均は下位10%のグループが17.3に対し、上位10%は27.6であった。平均体重はそれぞれ51.9 kgと83.8 kg。兵役義務後の初回検査時の平均年齢は30.59歳。成人期のBMIは下位10%が21.4、上位10%は30.6。

青年期のBMIが高い被験者ほど、収縮期、拡張期血圧と安静時心拍、空腹時血糖値、LDL、トリグリセリド、肝酵素の値が高く、HDLは低かった。追跡期間中、2型糖尿病は1173例、血管造影で冠動脈心疾患が認められたのは327例あり、これらは25歳から45歳までに発症していた。

糖尿病の予測因子について、年齢と、糖尿病の家族歴、血圧、運動、血糖およびトリグリセリド値を調整した多変数モデルで解析した結果、青年期BMIが上位30%の被験者は下位10%と比べ、糖尿病の発症リスクが有意に増加しており（上位10% と下位10%の比較によるハザード比：2.76、95% CI：2.11-3.58）、青年期BMIは糖尿病リスクの有意な予測因子であることが示された。

冠動脈心疾患リスクについても、年齢と、冠動脈心疾患の家族歴、血圧、運動、喫煙、LDL、HDL、トリグリセリド値を調整した多変数モデルで解析した結果、青年期BMIが下位10%の被験者と比べて、残りの被験者は全て、有意なリスク上昇が示された（上位10% と下位10%の比較によるハザード比：5.43、95% CI：2.77-10.62）。
糖尿病と冠動脈心疾患のリスクが、青年期と成人期のどちらのBMIとより密接に関連しているかどうかを検討するため、それぞれ前述の因子で調整した多変数モデルで解析した結果、糖尿病リスクには、成人期のBMIだけが有意に関連した一方で（β=1.115、p=0.003、交互作用 p=0.89）、冠動脈心疾患リスクには、青年期と成人期の両方のBMIが有意に関連していた（青年期BMI：β=1.355、p=0.004、成人期BMI：β=1.207、p=0.03、交互作用p=0.048）。

さらに、成人期のBMIを調整因子に加えて解析した結果、青年期BMIと糖尿病リスクとの関連性は完全に消滅したが、冠動脈心疾患では、青年期BMIが独立したリスク因子として依然関連していた。

青年期でのBMIの上昇は、現在正常と考えられている範囲内でも、成人期の肥満関連疾患のリスク要因であり、冠動脈心疾患は青年期と成人期両方のBMI上昇が関連していたことから、特に疾患の誘引プロセスである動脈硬化は、より漸進的に発達していることが示唆されたと、研究グループはまとめた。