BIとリリー DPP-4阻害薬リナグリプチンの価格をライバル薬と同レベルに
公開日時 2011/05/19 04:00
ベーリンガーインゲルハイム(BI)とイーライリリーは2型糖尿病薬Tradjenta(リナグリプチン)を5月末に米国で第3番目のDPP-4阻害剤として発売予定だが、BIでは、DPP-4阻害剤先行2品目のメルクのJanuivia(シタグリプチン)、ブリストルマイヤーズスクイブ/アストラゼネカのOnglyza(サキサグリプチン)と同レベルの価格に設定する意向を明らかにした。
Januviaの2011年第1四半期の売上は、同剤とメトホルミンの配合剤Janumetの売上を含め10億ドルを超え、マーケットリーダーとなっている。Onglyzaの同期売上は、同剤とメトホルミンの配合剤Kombiglyzeを含み、8100万ドルだ。
Januviaの卸購入価格は6.76ドル、Onglyzaは6.11ドル。Januvia、Onglyzaともに腎臓への影響を考慮、腎臓のモニタリングが求められているが、Tradjentaは、腎臓での排泄がほとんどなく、腎障害患者にも安全性が高い。BIはこの点を同剤のメリットとして訴求、健常な腎、中等度から重度の腎障害の有無に拘わらず、2型糖尿病患者に適切なオプションを提供できるとしている。さらに、同剤のメリットとして、単剤でも併用でも同一の用量を使えることを訴えている。また、リナグリプチンは腎機能の状態によって用量を変更する必要がない。
このようなメリットを持ちながら同レベル価格にするのは、今後DPP-4阻害剤の競争激化が予想されることが背景にあるようだ。
2010年のDPP-4 阻害剤市場は39億ドルで糖尿病薬市場全体の16%を占めている。2015年には、78億ドル、全体の20%に達すると見込まれる。投資銀行Cowen and Companyは、リナグリプチンは、2012年には1億ドル、2015年には4億ドルに達すると予測している。
今後、米国で登場が予想されるDPP-4 阻害剤には、武田薬品のアログリプチン、ノバルティスのガルバス(ビルダグリプチン)などがある。アログリプチンは、武田が審査完了通知を受領、心血管アウトカム研究を行うことが求められた。ガルバスは米国以外では承認されているが、米国では安全性の問題でまだ未承認。
このほかには、グレンマーク・ファーマシューティカルズのGRC8200 および杏林製薬のKRP-104 がフェーズII、ファイザーのPF-4971729がフェーズI開発中だ。
Cowen and Companyのアナリストは、「リナグリプチンはリリーの営業力次第だが徐々に市場を獲得する」と見ている。リリーとBIが同剤を共同販促するが、リリーは糖尿病領域に強く、すでに同剤発売を前に医師らとの関係を構築しているという。MRはプライマリーケア医と専門医両方をターゲットにしている。
(The Pink Sheet 5月9日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから