東北大病院 てんかんセンターを今秋発足へ
公開日時 2010/07/28 04:02
東北大病院は早ければ、今年9月にも、てんかん科が調整役となり、小児科、神経内科、精神科、脳神経外科が連携して、てんかんを包括的に治療できる“てんかんセンター”を発足させる。東北大病院てんかん科の中里信和氏は7月27日、大塚製薬とユーシービージャパン共催のプレスセミナーで講演する中で明らかにした。
てんかんは、新生時から壮年期、老年期まですべての年齢で発症する疾患。小児のてんかんでは、完治するケースもあるが、生涯症状が続くケースも少なくない。ただ、小児科から他の診療科へ患者の橋渡しができず、患者が成人しても小児科医が継続して診療に当たっているケースも多いとされている。加えて、てんかん専門医であっても確定診断の難しさがあることや、発作以外の精神面のサポートなども必要とされている。中里氏は「ひとりの医師で診療しない」ことが重要と述べ、複数の診療科で診察に当たることの重要性を強調する。
このような中、東北大病院が構築するモデルは、今年3月に創設されたてんかん科が「守備的ミッドフィルダー」(中里氏)とも言える診療の調整役を担うのが特徴。これにより、各診療科間の垣根を超えた連携を構築する。ビデオ脳波モニタリングユニットを整備し、確定診断の精度を向上させるほか、異なる診療科の医師、看護師、技師などが一堂に集う症例検討会を開催する。これにより、包括的な治療を可能にするというわけだ。
◎てんかん専門医が抗てんかん薬処方は2割
一方、日本てんかん学会が専門医と認定した医師が抗てんかん薬を処方している割合は2割にとどまるとのデータもある。そのため、てんかん専門医と専門医以外の地域医師との連携も重要になる。中里氏は、自身が近隣の病院に赴き、診療していることも紹介した。その上で、地域での連携を構築する上で、紹介状が有効なツールになるとの考えも示した。また、多くの患者の確定診断、最適な治療につなげる上で、確定診断後には患者を地域の医師のもとへ戻すなどの取り組みも必要とした。
そのほか、抗てんかん薬をめぐっては、欧米諸国や韓国などと比べても新薬を使用できるタイミングが遅い(ドラッグ・ラグ)ことも指摘されている。医療費抑制などの観点から、国の医療施策の中で新薬の承認が遅れているとした上で、中里氏は「新薬の方が有効性も安全性も高い」と新薬に一定の評価もみせた。