サリドマイド 最長12週間の処方可能に 患者一部負担軽減の可能性も
公開日時 2010/03/31 04:00
厚生労働省は3月29日、処方日数が添付文書上で14日と事実上制限されている多発性骨髄腫治療薬サリドマイド(製品名サレドカプセル、藤本製薬)について、最長12週(84日)間分まで処方できるようすることを決めた。頻回の通院・処方による、重い病状の中で通院する患者と、安全対策システム上処方・調剤に時間がかかる医療機関の双方の負担を軽減するのが狙い。同省医薬食品局安全対策課は、早急に日本血液学会などを通じてサリドマイドを処方する医師らに方針を伝え、実施に移す。
サリドマイドは、過去に世界的な薬害を引き起こした薬剤であることを踏まえ、安全な使用を確保するため投与制限が設けられている。実際の運用には負担が大きいが、その中でも、患者、医療関係者の間で安全な使用が定着していることが調査からうかがえた。そのため同省は、検討を行った同日の薬食審・安全対策調査会で、処方日数制限の全面撤廃を提案した。
それに対し、今後も安全な使用を確保する手立ては必要だとして、処方できる日数に上限を設け、その間にも医療従事者がチェックする機会を設けるべきとの意見が、自らもサリドマイド薬害被害者である佐藤嗣道参考人(東京大学大学院医学系研究科助教)らから上がり、処方日数に上限を設けることになった。
上限日数については、実際に治療にあたる村上博和参考人(群馬大学医学部保健学科長)が90日程度を希望。長期処方が可能になっても、次回処方まで診察しないことはあり得ないことを説明した。その点は、同省が提出した専門医の調査からも示唆されたことから、調査会は上限を12週間とすることで結論をまとめ、同省も受け入れた。
処方日数の延長により、患者一部負担が軽減される可能性も出てくる。現行では1ヵ月分の医療費(薬代含む)が、負担軽減となる高額療養費制度の要件に該当しなかったが、1回の処方がより長期になれば医療費は高くなるが、高額療養費の要件に該当するため、結果的に患者の負担が抑えることつながることになる。
調査会は、一定の安全対策の確保しつつ、14日制限下では患者一部負担ができず承認されたサリドマイドを使いたくとも使えない患者にいかに使用できる道を開くかも考慮して、結論を出した。