抗精神病薬 双極性障害の適応とコンプライアンス改善が成長のカギ
公開日時 2009/08/13 04:01
市場調査の英データモニターのCNS(中枢神経系)アナリストのトルング・フィン氏による抗精神病薬の成長性の分析によると、抗精神病薬の世界市場は220億ドルに上り、引き続き成長が予想されるが、ジェネリック(GE)と一線を画す適応症の拡大やコンプライアンスの改善を実現できる新薬が必要になると指摘した。
8月12日に発表された日本語版プレスリリース(ロンドンでは7日発表)によると、これまでの成長の背景にはより副作用が少ない統合失調症に対する非定型抗精神病薬の登場に加え、抗精神病薬を使うことの「恥、不名誉」感が取り除かれたことがある。
それに拍車をかけたのが、適応への双極性障害の追加だとした。アストラゼネカのセロクエル、イーライリリーのジプレキサは08年度売上高はそれぞれ40億ドル以上を記録。シェリング・プラウが統合失調症と双極性障害の適用で米国承認申請中のSAPHRISも注目されるとした。
しかし、ジプレキサは11年、セロクエルは12年に米国特許切れとなり、そのあとは、SAPHRISも含めGEとの競争に巻き込まれると予想。もう一段の成長を図るカギとして、抗精神病薬で大きな課題となっているコンプライアンスの改善を挙げた。
その点ではジョンソン&ジョンソン(J&J)が発売する2週間に1回投与のリスパダールコンスタが「差別化を実現した」と評価。同社が今年7月に米国で承認を受けた月1回投与のINVEGA SUSTENNAは、医師、患者の双方にとって使用が簡便だとし、「ジプレキサ、セロクエル、あるいはリスパダールなど、長く地位を確立しているブランドに代わって新たなブロックバスターとなりそうだ」と分析した。
フィン氏は「製薬企業の課題は、まず使い慣れたブランド薬を抑えて新たな抗精神病薬の処方を精神科医に説得できるだけの、有効性、忍容性およびコンプライアンスにおける革新を実現できるかどうかだ」とコメントしている。