第一三共・奥澤社長 国産新型コロナワクチン・ダイチロナ供給へ 「公衆衛生、安全保障で大きな意義」
公開日時 2023/11/29 04:51

第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長兼COOは11月28日、新型コロナ感染症に対するオミクロン株XBB.1.5対応1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(以下、本ワクチン)が同日付で一変承認されたことを受けて会見を開いた。奥澤社長は、本ワクチンが現在の特例臨時接種に使用されるワクチンとして位置づけられ次第、供給を開始すると説明。その上で、「日本の中で国産ワクチンを供給できる。その製造能力も確立できた。日本の公衆衛生、安全保障面で非常に大きな意義がある」と強調し、国産初のmRNAワクチンであるダイチロナを日本で製造・供給することの意義を語った。
本ワクチンは12歳以上の追加免疫に用いるもの。製造は第一三共グループの生産機能会社である第一三共バイオテック(埼玉県北本市)で行う。奥澤社長は、「当社が国産初のmRNAワクチンを商用で提供できることを非常にうれしく思う。製造は第一三共バイオテックで高品質なものを製造して供給し続ける。我々のイノベーションを提供できると確信している」と述べた。
同社の平島昭司・代表取締役専務執行役員日本事業ユニット長は、本ワクチンの供給開始時期について、「供給は12月にスタートする。(厚労省との契約に基づき)早い時期に140万回分を供給する」と語った。また、本ワクチンは2~8度の冷蔵温度帯で流通・保管が可能なうえ、1バイアルに2回接種分が含まれた2バイアル包装にしたと紹介。医療従事者にとって取扱いしやすく、競争優位に立てる製品だと自信を見せた。
2020年のコロナ禍以降、新型コロナに対するワクチンや治療薬の開発競争が激化した。ワクチンは米ファイザーのコミナティや米モデルナのスパイクバックスをはじめとする外資系企業の製品がいち早く実用化に成功し、日本市場も席巻。内資系企業は開発競争で後れをとった。
外資系の後塵を拝した原因や残っている課題を問われた奥澤社長は、「スタート時点で後れを取った」と振り返り、「ワクチン開発とともに商用製造の技術移転も並行して進めるスピードが求められた。我々もベストを尽くしたが、ここで後れを取った」との認識を示した。現在も供給スケールを高めるところに課題があると言い、体制整備を進める構えを見せた。第一三共バイオテックでの本ワクチンの製造・供給能力は非開示だが、24年度は今年度の140万回分以上を供給できるように取り組む方針。