アストラゼネカ(AZ)のPascal Soriot CEOは、3月21日ニューヨーク市で開催された投資家会議で、投資家や従業員に対し、再建計画を示し、同社は再建できることを納得させようと一生懸命な様子だった。しかし、それは長い道のりになりそうだ。
同再建計画は、今後2年間で、R&Dとグローバルマーケティング機能を統合、4000人を削減する。経費節減に加え、中期開発段階の物質の開発を加速化、導入や買収を積極的に進める。Soriot氏は再建計画の詳細に渡って説明したが、主要メッセージはすでに昨年10月にCEOに就任以来、投資家と協議してきたことだ。
Soriot CEOは、「我々の生産性を改善し、複雑な業務をそぎ落とし、コストを削減するために決定的な手段を講ずることが重要だ。我々の将来の成功と長期的成長は、患者にベネフィットをもたらす画期的医薬品を創製する能力にかかっている」と話した。
同CEOが、マーケティングの手腕とプライマリーケア領域で成功した一握りのブロックバスターで知られるAZを、スペシャリティケアでの存在感のある「賢明な科学」によって動かされる組織にすれば大した手柄である。しかし、AZを成長軌道に乗せるのはたやすいことではない。
同社は主力品の特許切れにより、2012年から2916年の間に数十億ドルの売上を喪失している。2012年には抗精神病薬Seroquel(クエチアピン)が後発品の参入で30億ドルを失い、2014年には制酸剤Nexium(エソメプラゾール)および2016年には高脂血症薬Crestor(ロスバスタチン)の特許が満了する。同2剤の2012年の合計売上は、101億9000万ドルだ。
成熟化したブロックバスターを新規の画期的医薬品に置き換えることが出来なかったことが前CEOのDavid Brennan氏の退任を招いた。同氏は、Medimmune社やCambridge Antibody Group社の買収を含め、生物学的製剤に領域の拡大を図ることや大幅な人員削減、R&D体制の再編、リーダーシップの変更などを試みたが、目に見える製品を生み出すことは出来なかった。
Soriot氏は、(改革には)緊張感を持って取り組む必要があること、リスクのないところにはポートフォリオもなく製品もないために、「リスクをとらないことが最悪のリスクだ」との考えを示し、再構築計画実行への覚悟を語っている。
同氏は、数量的な見通しを示していないし、幹部らも、いつ成長軌道に戻るのかも示していない。唯一同社が示した数字は、2012年の売上279億7000万ドルで、アナリストらの2018年の売上予測215億ドルに勝るものだった。
AZは、従来からも集中していた心血管・代謝、腫瘍、呼吸器・炎症の3領域にフォーカスする。Soriot CEOは、「これら領域内で我々は科学的な特徴を持って差別化できると考える」と意気込む。同社は、神経科学、抗感染症、治療ワクチン領域に留まるが、これらの領域への投資は「機会依存」になる可能性がある。
同社は、持続的成長を目指し、スペシャルティ医薬品をもっと開発するために低分子と高分子をバランスよく持つようにポートフォリオにおける生物学的製剤の数を増加させる努力をしている。Soriot氏は、生物学的製剤のポートフォリオがいかに改善されたかを示しながら、2016年から生物学的製剤を年1剤申請する計画は軌道に乗っていると話した。
AZは新薬開発を加速する考えだ。同社は現在フェーズIIIに6剤もっているが、2014年末までに中期ステージの5剤か6剤のNCE(新規化合物)をフェーズIIIに持ち込む目的で、その開発を加速している。
証券アナリスト、Bernstein社のTim Anderson氏は、「結局、我々は、AZはどん底になっていると思われるが、配当は6%と安全圏にある。今後数年、同社が過去の問題解決のために費やせば、成長軌道に戻るだろう」と楽観視している。
Jefferies社のアナリストらは、AZによるイノベーションや既存のアセットへの集中により長期的に再建しようと言う計画はエキサイティングなものではないが、少なくとも配当の安全性の観点からは安心できるものと指摘したうえで、2-3年後の同社の1株当たり利益(EPS)の動向を見守りたいと話した。
また、同社のキャッシュフローの分析から、十分なキャッシュをビジネスへ再投資することを目指していることから、同社に対する安心感も生んでいる面もある。
The Pink Sheet 3月25日号