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ノボ・マイルヴァン社長 肥満症治療薬・ウゴービ上市で「医療保険の負担軽減に期待」 適正使用に注力

公開日時 2024/02/26 04:52
ノボ ノルデイスク ファーマのキャスパー ブッカ マイルヴァン社長は2月22日、肥満症治療薬・ウゴービ皮下注の発売を踏まえたメディアセミナーで、「肥満症に関連する合併症を予防することで、医療保険制の負担を軽減することができるのではないか」と述べた。「国民が健康で社会が潤う状況を目指し、会社として治療薬を提供するだけではなく、様々な社会におけるパートナーと連携しつつ、肥満症の予防に働きかけていきたい」とも話した。同剤は、肥満症領域で約30年ぶりの新薬となるが、ダイエット目的などによる適応外使用に対する懸念も高まっている。肥満症事業本部の清水真理子本部長は、適応外使用を行う医療機関をMRが直接訪問し、最適使用推進ガイドラインの内容を説明すると強調。それでも適応外使用を続ける医療機関に対して、「弊社は積極的な販促活動というのは一切お断りをさせていただいている」と述べ、適正使用を推進する姿勢を前面に打ち出した。

◎マイルヴァン社長 薬物療法の意義を強調「QOL改善の機会も」

マイルヴァン社長は、「我々会社としてもウゴービが与えることができるプラスの影響について楽しみに思っている」と述べた。多くの肥満症患者と対話する中で、「肥満症には、“肥満症は意思が弱い”、“もっと運動をすればいい”、“食べる量を減らせばいい”などのスティグマが付きまとってしまっている」と指摘した。そのうえで、肥満症は遺伝的、身体的、心理的、社会要因など、複合的な要因からなる疾患であり、食事・運動療法だけでは改善が難しいケースがあるとして、薬物療法の意義を強調した。さらに、「ウゴービにより、QOLを改善できる機会があると考えている。食事療法などもしっかり努力することで体重が減り、運動もしやすくなり、問題の解決につながるのではないか。良い循環がそれぞれの個人に表れてくるというふうにも思っている」とも述べた。

肥満症が2型糖尿病、心血管疾患、一部のがんなど慢性疾患に関連していることも紹介し、「肥満症に関連する合併症を予防することによって、医療保険制度にもプラスの影響があると考えている」と強調した。日本を含む先進国では、医療費のうち、慢性疾患による治療費が80%を占めているとのデータも紹介し、「レイトステージの合併症に対する医療費が高い。より早い段階で予防に取り組むことで、医療保険制度における負担を軽減することができるのではないか。国民の生産性向上という選択肢にもつながるのではないか」との見解を示した。医療保険制度の負担軽減により、「医療従事者もよりサポートしやすい環境になる。それにより、良い循環が社会全体で回っていくことが日本で起きることも期待している」と述べた。

日本で肥満症の治療薬を上市すると判断した背景としては、「日本の医療保険制度はとても成熟し、しっかりしている」とし、「国民が健康で社会が潤う状況を目指し、会社として治療薬を提供するだけではなく、様々な社会におけるパートナーと連携しつつ、肥満症の予防に働きかけていきたい」と話した。

◎「戦略を理解いただき、指示いただいている協力体制のある」医薬品卸に絞り込み

ダイエット目的などの適応外使用が懸念される中で、肥満症事業本部の清水真理子本部長は、上市戦略として適正使用の推進が重要だと強調した。「薬物治療を含めた新たな肥満症治療のモデルケース、事例を積み上げていく。我々にとって非常に重要な役割だと思っている」と述べた。

同剤は最適使用推進ガイドラインが策定されており、専門医に加えて、常勤の管理栄養士による適切な栄養指導を行うことができる施設であることが施設要件で求められるなど、医師要件・施設要件・患者要件が定められている。同社としては、ガイドラインに沿った形での製品浸透を進める考え。具体的には、処方を予定する医師に聞き取り調査を行い、MRが訪問し、最適使用推進ガイドラインに定められた要件を説明し、適正使用を推進する。流通についても、「私どもの戦略をご理解いただき、ご支持いただいている協力体制にある医薬品卸に流通していただくことになっている」と述べ、絞り込みを行っているとした。処方を行う医師、医療機関については法令遵守の下で、医薬品卸と情報共有を行っていることも明らかにした。

なお、最適使用推進ガイドラインに基づいた対象施設については、「ガイドラインは厚生労働省の方が決めているものであり、弊社は結果コメントするところではない」として明言を避けた。

◎清水本部長 適応外使用の医療機関にMRが説明 続く場合は「積極的な販促、一切お断りさせていただく」

横行する適応外使用については、「真摯に受け止めている」と述べたうえで、企業としての取り組みも紹介した。具体的には、適応外処方や広告などを社内でモニタリングし、規制当局に相談するほか、適応外使用を行う医療機関にMRが直接訪問して最適使用推進ガイドラインなどの説明を行っているという。「患者さんの安全性を踏まえ、臨床試験で認められた効果・効能を治療に役立てていただくためには、適正使用が必要だという説明をさせていただいている」と述べた。その後も改善が認められない場合は、「弊社は積極的な販促活動というのは一切お断りをさせていただいている」と述べ、「この3つのアクションを引き続き行っていきたい」と述べた。

また、「ウゴービ皮下注は、肥満症を対象に臨床試験を行い、安全性、効能・効果が認められている。そのほかの方に臨床試験を実施しているわけではない。疾患啓発サイトを通じ、適正使用により、安全性、望む効能・効果を発揮し、治療に役立てていただける情報を発信させていただいている」と述べた。

◎供給面の懸念 デンマークでの原薬の製造能力を拡大 投資規模は5年間で約8000億円

全世界的にGLP-1受容体作動薬が供給不足に陥っており、ウゴービでも供給面の懸念も指摘されている。マイルヴァン社長は、「患者さんが治療を継続できることを第一優先に考えている」と述べた。デンマークでの原薬の製造能力を拡大する予定も説明。今後5年間で約8000億円規模の投資を行う考えも示した。

ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド(遺伝子組み換え))の効能・効果は、「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。▽BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、▽BMIが35kg/m2以上」-とされている。

同剤は3月27日に国内で承認を取得、11月22日に薬価収載されていた。承認にあわせて、最適使用推進ガイドラインが策定されている。中医協資料によると、同剤の市場予測(ピーク時5年後)は投与患者数10万人、販売金額328億円。なお、同社によると、日本に肥満症を有する人は約1600万人いるが、医師により肥満症と診断されている人は33万人(2.1%)という。

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