デンマークノボ・ヨルゲンセン社長 ウゴービで「社員全員が適正使用で重要な役割を持っている」
公開日時 2024/05/22 04:50
デンマークのノボ ノルディスク本社のラース・フルアーガー・ヨルゲンセン社長兼CEOは5月21日、同社主催のオンライン記者説明会「2024年インターナショナル・プレスブリーフィング」に臨み、世界的に急速な売上拡大が続いている肥満症治療薬・ウゴービのプロモーション活動に言及し、「需要が生産を超えている状況にあり、製品プロモーションによって大きなエキサイトメントをつくるつもりはない。誤った使用につながっても困る。企業としては、全員がきちんとトレーニングを受けており、適正使用に資するという重要な役割を持っている」と述べた。
グローバル上市戦略について、「もし、その国がしっかりと肥満を肥満症として認識していないのであれば、弱い立場にある患者さんのことを医療制度がケアするのはかなり難しいのではないだろうか。そういった国に関しては、発売を少し見送らなければいけないと考えている。ただ、2024年はより多くの国で発売していきたい」と述べた。現在、上市国は10か国といい、「国によっては比較的抑えた数量で発売している状況にある」と指摘した。
◎23年業績 売上高31%増 上位20社でトップの成長率に
ノボ社の23年業績は、売上高が前年比31%増となり、グローバル医療用医薬品売上高ランキング上位20社の中でトップの成長率だった。2桁成長を遂げたのは米イーライリリーとノボ社の2社のみで、ともに糖尿病治療薬と肥満症治療薬が高成長の原動力となっている。また、ノボ社が5月2日に発表した24年1~3月期決算は22%の増収となり、持続性GLP-1受容体作動薬・セマグルチドベースの2型糖尿病治療薬・オゼンピックの売上は前年同期比42%増の278.10億デンマーククローネ(DKK)(41.72億ドル)で、製品売上ランキングでキイトルーダに次ぐ2位の規模となっている。また、セマグルチドベースのウゴービは106%増の93.77億DKK(14.07億ドル)と大幅な売上拡大が続いている。
◎安定供給へ CMOとの協力も「独自の戦略的拠点の力を上げていきたい」
ウゴービの世界的需給ひっ迫を受け、ノボ社は24年2月に米医薬品受託製造機関(CMO)のキャタレント社買収により3工場の取得を発表している。ヨルゲンセン社長はこの日の記者説明会で、「現在検討しているのは、社内で何ができるのか、また、CMOと協力して何ができるのかというところ。キャタレント買収により製造拡大している間に、われわれ独自の戦略的拠点の力を上げていきたい」と述べた。
ウゴービをめぐっては、大規模SELECT心血管アウトカム試験成績に基づき、24年3月に米国で心血管疾患の既往がある過体重または肥満の成人における主要心血管イベント(MACE)リスク低減の適応追加が承認された。記者説明会で研究・早期開発部門担当役員のマーカス・シンドラー氏は、「心血管疾患はアンメットニーズが極めて大きい。特に動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)と心不全にフォーカスしていきたい。さまざまな形でコラボレーションができるのではないか。われわれにとって心血管疾患は新しい領域なので、より外部のインプットが必要になってくる」と述べた。