製薬協・MA部会 MSLの目指すべき方向性を公表 「現状と乖離もある」がMSLの役割を会員各社に提示
公開日時 2022/07/08 04:52
日本製薬工業協会・医薬品評価委員会MA部会は7月7日、「MSLの目指すべき方向性」と研修プログラム例を公表した。製薬各社にMSLの資格要件化を求め、その任命要件として医療系資格や生命科学系の博士号(PhD)の保有を考慮するなど一歩踏み込んだ。MSLの前職でMRなど営業部門が半数近くを占めたことなどから、体系的な研修制度の整備を提言。「導入・継続」それぞれの研修プログラム例を示した。さらに手順書の整備を求め、役割、行動規範、営業部門からの独立などを明示する。業務評価指標では、販売・営業関連指標は含めず、活動目標の達成度やプロセス遂行度を指標とすべきとした。MA部会は「現状と乖離している部分もある」としながらも、各社はMSLの役割を再認識して取り組んで欲しいと強調している。
MA部会は2019年にMSL活動の基本的考え方を取りまとめている。その後、一部項目で各社間の捉え方に乖離がみられたとしながらも、会員会社の行動指針策定に使用されるなど、「浸透しつつあることが確認できた」と指摘。MSLとして更に目指すべき方向性を新たに公表するに至った。
◎MSLの任命要件 「医療系資格の保有や生命科学系の博士号(PhD)の保有等も考慮」
MSLの任命要件については、19年度調査の段階で「資格要件を設定していない企業が半数を超えていた」とし、改めて資格要件の設定を「強く望む」とした。また、任命要件として医療資格(医師、薬剤師、看護師等)、または理系学士以上(理系修士以上)を要件とする企業が存在した。今回は、より高い倫理・科学的専門性が求められることから、「医療系資格の保有や生命科学系の博士号(PhD)の保有等も考慮することを推奨する」と規定した。
◎導入研修・継続研修で「研修プログラム例」を公表
研修制度については、19年度調査の段階で4割の企業が研修プログラムを持たないことが指摘された。さらに認定制度、認定要件も各社間で乖離があることも明らかになっていた。このため今回は、体系的な研修制度の整備を求め、「研修プログラム例」を明示した。
このうち導入研修では、①MA業務に関する基本知識、②コンプライアンスを遵守するための医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、③医学的・科学的な交流を行うための担当疾患領域や関連製品知識、④臨床研究の方法論、研究倫理、統計解析に関する知識、⑤社外医科学専門家との円滑な交流を行うためのソフトスキル-を明示した。一方、継続研修では、MSL活動を取り巻く法規制やルールの知識更新や担当する疾患領域の専門性の向上、ソフトスキルの向上などを盛り込むよう求めている。
◎手順書で「営業部門からの独立」を明示 営業活動への同席、情報共有範囲の規定など
19年度調査で3割の企業が未整備だった「手順書」についても、「整備し、遵守する」と盛り込んだ。さらに手順書には、①MSLの活動目的、②役割、③行動規範、④営業部門からの独立、⑤MSL業務、⑥社外医科学専門家の選定基準-の事項が含まれるべきとした。このうち「営業部門からの独立」に関しては、MSL活動が営業部門からの影響を受けないための具体的な方策を定めると規定。例示として、MSLと社外医科学専門家との医学的・科学的な交流への営業部門の同席制限や、MSLの営業活動への同席、MSL活動の営業部門への情報共有の範囲規定などをあげた。また、「MSL業務」については、メディカルアドバイザリボード会議、メディカルエデュケーション会合、アカデミアとの共同研究、学会発表、論文公表、研究者主導臨床研究への対応、アンメットメディカルニーズやインサイトなどの情報収集、医療関係者からの情報提供リクエストへの対応-などMSL活動とその記録方法を定める。
◎MSLの業務評価 活動目標に対する達成度やMSL業務のプロセス遂行度を指標に
MSLの業務評価指標にも触れた。「自社医薬品の販売実績など営業部門に関連する指標は含めず、MSLの活動目標に対する達成度やMSL業務のプロセス遂行度を指標とすべき」と強調。具体的な指標例として、①アンメットメディカルニーズ、インサイトもしくはそれらにつながる情報の収集など、 ②メディカルプラン策定への貢献度、③メディカルプラン遂行への貢献度、④社外医科学専門家による評価、⑤社内関連部門からの評価、⑥コンプライアンスの遵守状況-をあげた。