東京都内の新型コロナウイルス感染症の感染者数が７月12日までに、４日連続で200人超えを記録した。東京都医師会の猪口正孝副会長は10日の記者会見で、現状は軽症者が多く、医療提供体制がひっ迫した状況にないとの認識を示した。そのうえで、今秋以降の第２波を見据え、必要病床の確保など医療提供体制の拡充を急ぐ必要性を指摘した。具体的には、“新型コロナ専門病院”に感染者を集め、そこから重症度に応じて適切な医療機関が対応する姿を描いている。ただ、新型コロナ患者を受け入れた医療機関の経営が悪化していることにも触れ、「公立病院には専門病院として頑張っていただきたい」と述べた。

◎東京都　4日連続で感染者数が200超え

都内の感染者数が連日200人超となっている。医療提供体制について東京都医師会は「現在は大丈夫」との認識を示す。若年者が多く、PCR検査へのアクセスが格段に向上したことで、軽症者が多いことが理由という。実際、軽症者は全体の90％以上を占めており、４月の緊急事態宣言下とは状況が異なるという。

軽症者が早期に発見され、中等症や重症への進展を防ぐことで、医療提供体制のひっ迫を防いでいる状態と言える。一方で、中高年層に感染が広がっている実態を指摘し、重症患者の急増に備えて医療提供体制の拡充を急ぐ必要性を強調した。

東京都内の医療体制については、急性期病院が協力して新型コロナ患者を受入れるなどの体制を構築している。ただ、都民から見ると、すべての医療機関に新型コロナ患者がいるような印象がつき、結果的に一般患者で受診抑制が起きているとの見方がある。この結果、新型コロナ患者を受け入れた医療機関で一般患者の手術延期やそれに伴う空床などが発生し、病院経営に大きな打撃を受けた。

◎コロナ患者受入れない医療機関「患者が戻ってきた」　急性期病院で90％台まで回復

一方で、コロナ患者を受入れていない一般病院や診療所は、「受診抑制が外れて患者が戻ってきている状態」という。猪口副会長は会見で、６月のレセプトデータはまだないが、「実感としては急性期病院が８割くらいまで落ちている。それが90％台まで戻ってきているという印象だ」と語った。

そのうえで猪口副会長は、必要な医療を都民に届け、地域の医療提供体制を維持するためにも、新型コロナ患者を集中的に診る施設が必要との認識を示した。具体的な医療提供体制としては、新型コロナ専門病院を核として、重症・中等症者は感染症指定病院や大学病院のICU、中等症・軽症は重点医療機関、軽症者や無症状患者はホテルなどに振り分ける流れを作ることが必要と説明。特に新型コロナ専門病院には、都立・公社病院に名乗りを上げてほしい考えを強調した。都立・公社病院は、都からの組み入れ金があり、結果として補填される仕組みがあるとして、「民間病院が経営の危機を乗り越えながらなんとかしているときに、民間と同じ働きをすればいいことにはならない」と主張。「都立・公社病院に頑張ってほしいというのは都民、医療人全員の想いだ」と強調した。

東京都はレベル1で1000床、レベル2で3000床、レベル3で4000床の病床確保を掲げるが、猪口副会長は、「（都立・公社病院で）レベル３で2000床くらいもってほしい。500床規模で行くなら４病院くらいで、かなりの力になってくると思っている」と具体的な数値にも言及した。

◎尾﨑都医会長　感染拡大地域に絞って「補償を伴う休業要請」を国に要望

今回は新宿や池袋のホストクラブを中心に拡大が進んでいると見られている。尾崎治夫会長は、市中感染が広がりつつあるとの見方を示し、「都道府県や区、市に任せるのではなく国として対策を進める」必要性を指摘した。国や東京都の支援の下で２週間程度の補償を伴う休業要請が必要との考えを示した。東京都医師会としても、PCR車を用いて地区医師会・保健所と連携してPCR検査を集中的に施行することや、感染予防講習会の開催などを通じ、サポートする考えを示した。

また、感染者が増加するなかで市中感染が広がりつつあるとの認識を示し、繁華街での飲食について、「2週間、できれば4週間控えてください。きちんとやれば感染者数は減る」と呼びかけた。特に、医療・介護の関係者や教育関係者、高齢者の家族がいる人については注意を呼びかけた。