日医・釜萢常任理事「緊急事態宣言を出していただいた方が良い」 政府・諮問委メンバー
公開日時 2020/03/31 04:50
日本医師会の釜萢敏常任理事は3月30日、新型コロナウイルスの拡大が続くなかで、「爆発的な感染の拡大が起きてから緊急事態宣言を出しても手遅れ。もう宣言を発出していただいた方がよいのではないかという意見が専門家会議ではほとんどだ」と述べた。東京都だけでなく首都圏全域で発出する必要性についても言及した。東京都では感染経路の追えない感染者も増加しており、感染症病床がひっ迫している状況にある。釜萢氏は、緊急事態宣言に際して首相に提言する、政府の諮問委員会で委員を務めている。
釜萢常務理事は、専門家会議のメンバーは厚労省の担当者を交えて、非公開で意見公開を行ったと説明した。釜萢常務理事は、「国が宣言する場合は様々な影響を考え、総合的な判断が必要になる」と述べ、経済や国民生活への影響を考慮する必要性を指摘した。緊急事態の発出は、首相が期間・区域を定めて行うことになる。釜萢常任理事は、データを詳細に分析する必要性を断ったうえで、「東京だけに絞るのではなく、エリアを拡げなければいけないのではないか。東京だけということではなく周辺の県にも危機的な状況」、「隣接する県はもちろん、幅広く考えなければいけないのではないか」との認識を示した。
東京都はすでに感染症病床がひっ迫している状況にある。各都道府県の対応も求められるなかで、大阪府は、感染者がさらに増えた場合の対応として、軽症者は自宅や宿泊施設で療養するなどの方針を示している。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が3月28日決定した、基本的対処方針でも、患者が増加し入院医療の提供に支障を喫場合は、重症者に医療の重点を移し、入院治療が必要ない軽症者は自宅療養とすることなどが盛り込まれた。
釜萢常務理事は国としても、感染者がさらに増えた場合の対応の重要性を強調。軽症者や、現行の退院基準からは外れるPCR陰性になっていないが回復基調の患者については、「自宅での健康観察、無理であれば宿泊施設などへの移動をお願いすることが喫緊の課題」との見解を示した。外来についても、「医師が必要と認めた場合の検査が迅速に行えるように、改善されてきているが、まだ完全にうまくいっているわけではない」と述べ、さらなる改善の必要性を指摘した。
◎小池都知事「カラオケやライブハウス、バーやナイトクラブ避けて」
東京都の小池百合子都知事は同日夜に都庁で会見を開き、「若者はカラオケやライブハウス、中高年はバーやナイトクラブなどの接待を伴う飲食店に行くことは当面控え、自粛していただきたい」と都民に呼びかけた。厚生労働省対策本部クラスター対策班が感染経路が不明の患者をについて分析したところ、30%がこれらの“夜の街”の接待飲食業に関連する感染だった。これらの場所は、新型コロナウイルス感染リスクの高い、「換気の悪い密閉空間」、「多くの人が密集」、「近距離での密接した会話」の3つの密がより濃厚に重なるとして、避けることを求めた。
◎日本耳鼻咽喉科学会 嗅覚や味覚の障害「必ずしも新型コロナの症状ではない」
このほか、
日本耳鼻咽喉科学会は同日、一般向けに「嗅覚や味覚の障害はインフルエンザや一般のかぜでも生じることがあり、必ずしも新型コロナウイルスだけが原因ではない」とのメッセージを出した。新型コロナウイルス感染症の症状として、発熱や咳、倦怠感に加え、嗅覚や味覚が低下することも報告されている。同学会は、においや味の異常を感じた場合であっても発熱や咳、息苦しさ、倦怠感がなければ、2週間不要不急の外出を控え、それでも症状が改善しない場合に受診することを求めた。