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MSD 抗PD-1抗体・キイトルーダ バイオマーカー確立を戦略的な柱に

公開日時 2016/10/31 03:50

MSDオンコロジーサイエンスユニットの嶋本隆司統括部長は10月28日、都内で開かれたメディアラウンドテーブルで、抗PD-1抗体・キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)のグローバル戦略の一つに、効果の高い患者特定に向けたバイオマーカーの確立を位置づけ、注力する方針を示した。いわゆる免疫療法では、効果の高い患者を事前に特定することが難しいとの指摘がある中で、同社は非小細胞肺がん(NSCLC)について、PD-L1の発現率50%以上をひとつの指標とする考えだ。実際、EGFR変異またはALK転座のない非扁平上皮NSCLCのファーストラインとしての有用性を検討した臨床第3相試験「KEYNOTE-024 」では、PD-L1の発現率50%以上に対象を絞った結果、標準治療であるプラチナ製剤併用の化学療法(プラチナダブレット)に対して、有意差を示すことに成功した。嶋本統括部長は、エビデンスを契機に国内でもバイオマーカーの承認取得、臨床現場への浸透に自信をみせた。その上で、感度と特異度を向上させるためにも、さらなるバイオマーカーの確立に力を入れる考えも示した。


臨床第3相試験「KEYNOTE-024」では、PD-L1の発現率(TPS)50%以上、EGFR/ALK陰性などの条件を満たす未治療のステージⅣのNSCLC患者に対象を絞り、キイトルーダ群(154例)、プラチナ製剤による化学療法群(151例)に分け、治療効果を比較した。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の中央値は、化学療法群の6.0か月間に対し、キイトルーダ群は10.3か月間で、リスクを50%低下させ(ハザード比:0.50(95%CI:0.37-0.68))、有意な延長を示した(p<0.001)。


このエビデンスに基づき、米国では10月24日にEGFR/ALK陰性のPD-L1発現率50%以上の転移性NSCLC患者に対するファーストラインとして適応を取得。これに先立ち、2015年にはコンパニオン診断薬としてDako社の製造したPD-L1 IHC 22C3 pharmDxキットが承認を取得している。米国では、遺伝子などによる患者のサブグループに応じた治療を確立させる“プレシジョン・メディシン”を推進しており、コンパニオン診断薬は承認でも必須とされている。日本でも最適使用の推進が重視される中で、特に抗体医薬などの高額薬剤では、最適な患者を絞り込むバイオマーカーの確立が求められている。


◎GEPシグネチャー、DNAミスマッチ修復異常などもバイオマーカーとして探索



嶋本統括部長は、プラチナダブレットは過去30年間、上回る治療成績を示した単剤治療がないほど強力な治療法との見方を示し、「ベネフィットが少しでも期待できる患者を入れなければ厳しいということで、この試験デザインとなった」と述べ、対象患者の選定が治療成績のカギを握ったとの見方を示した。プラチナダブレットは、重篤な副作用リスクがあることも知られている。エビデンスを踏まえて、米国のNCCNガイドラインではPD-L1発現率50%以上のEGFR/ALK陰性NSCLCのファーストラインとして、category 1として同剤を唯一推奨するよう改訂された。こうした状況を踏まえ、嶋本統括部長は、キイトルーダの登場で、プラチナダブレットに代わる「新たな選択肢を提供できる」と自信をみせた。


一方で、PD-L1の発現率だけで患者を特定すると、効果を得られる可能性がある患者を切り捨てる可能性も指摘されている。嶋本統括部長は、「PD-L1の発現率50%以上をベストな指標と言っているわけではなく、プラチナダブレットを凌駕するような試験成績をなんとか出すためには、このバイオマーカー戦略を進めるしかないということでスタートした」と説明。「もう少し低い値のマーカーだったら、併用だったらというクリニカルクエスチョンに対しては、アンサーを出していかないといけない。それは、別の試験で検証するというアプローチになる」と述べた。


同社は、PD-L1およびPD-L2の発現などの腫瘍におけるリガンドの発現に加え、▽免疫関連遺伝子発現(GEP)シグネチャーなど免疫微小環境、▽DNAミスマッチ修復異常、DNAポリメラーゼ変異など高いDNA変異量による抗原提示の増加――を柱に、バイオマーカーの探索、確立を進めている。


なお、小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)が開発を進めるオプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、PD-L1を5%以上発現する未治療進行NSCLC患者を対象に、PFSを腫瘍評価項目にファーストラインとしての有用性を検証したが、プラチナ製剤を含む化学療法群に対して優越性を示すことができなかった。
 

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