CSLベーリング・吉田社長 「25年以降2ケタ成長継続」に意欲 HAE領域「パイオニアとして貢献したい」
公開日時 2025/04/23 04:51

CSLベーリングの吉田いづみ代表取締役社長は4月22日、本誌インタビューに応じ、国内事業について「、2024年も2ケタ成長を継続しており、25年以降も同様の成長実現を目指したい」と意欲を示した。主力の血漿分画製剤や血友病治療薬に加え、新製品を上市した遺伝性血管性浮腫(HAE)領域の製品も成長ドライバーとして期待を寄せる。吉田社長は、「我々はHAE領域のパイオニアであり、リーダーでもある立場として疾患啓発も含めて貢献していきたい」と強調した。
◎4月にHAE急性発作発症抑制薬・アナエブリ発売 様々な治療ニーズに応える
同社は、HAE領域で、急性発作を改善するためのオンデマンド治療▽手術や抜歯などの侵襲を伴う処置前に予防する短期発作抑制治療▽定期的に発作を予防する長期発作抑制治療―でそれぞれに製品を展開。4月18日には月1回の皮下投与可能な国内初のプレフィルドペン製剤・アナエブリ皮下注(一般名:ガラダシマブ)を発売した。吉田社長は、「様々な治療ニーズがある中で、どういったゴールを目指して、どの薬を使うのか。医師と患者さんが話し合い、選んでもらうためにもきちんとした情報提供が大切だ」と述べた。
加えて、患者自身が症状や日常生活を記録するアプリ「HAE日誌」や、薬剤運搬の負担軽減を図るための配送サービス「CSLホームデリバリー」など、治療環境の改善にも力を入れている。また、学会からの要望を受けて行ったベリナートP静注用の短期発作抑制治療の適応追加を例に挙げ、「医師や現場の声を聞きながら、製品化やデバイス改良などにも活かしていきたい。HAEは治療の継続が欠かせない中で、ストレスなく日常生活の一部として治療が続けられるようにサポートを続けていくことが重要になる」と訴えた。
◎幅広い診療科や診断までの長期間化が課題 医師向け啓発にも注力
HAEは痛みを伴いながら腹部や喉頭、顔面、四肢など様々な部位に発作が現れる特徴があり、専門医も皮膚科や腎臓内科、消化器内科、血液内科など幅広い診療科にまたがる。希少疾患であるために医師の間でも認知度が低く、高い専門性が求められることから診断までに長期間を有する点が課題になっている。そのため、医師向けの疾患啓発も欠かせず、同社では専門医の力を借りながら院内での啓発活動や講演会を実施している。吉田社長は、「医師同士の連携が進むことで疾患への理解が深まる環境を整えていきたい」との考えを示した。
また、「世界希少・難治性疾患の日」(毎年2月最終日)や「HAE Day」(毎年5月16日)に合わせたチャリティーイベントや、医療従事者や学会、患者団体、製薬企業などでつくるHAE診断コンソーシアム・Discoveryでの活動にも取り組む。
◎HAE領域には専門MRを配置 MAとの連携も「非常に良くできている」
情報提供体制の面では、HAE領域には専門MRを配置しており、「きちんと、かつ正確に情報を届けることで医師や患者さんに届く。その点が重要であり、MR教育を含めて特に力を入れている」と強調。メディカルアフェアーズ(MA)部門も強化を図っており、コマーシャル部門との独立性を担保した上で「社内連携は非常に良くできている」状態にあるという。さらに、24年11月には医療関係者向けサイト「CSLpro」をリニューアルするなどオムニチャネルの活用にも力を入れている現状を明かした。
◎日本市場の重要性「改めて高まっている」 血友病遺伝子治療薬開発にも意欲
2ケタ成長を掲げる日本市場に対しては、「グローバルでの重要性が改めて高まってきている」という。血漿分画製剤や希少疾患向けの製品の安定供給への努力が実を結び、さらにリーディング製品に成長したことが背景にあるという。吉田社長は、「日本と欧州でほぼ同時に承認されたアナエブリにその期待が表れている」と強調した。
また、開発中のパイプラインでは、血友病Bの遺伝子治療薬・CSL222の開発が進む。現在は第3相臨床試験が進行中で、「血友病の遺伝子治療としては日本では初になる可能性がある。近い将来、日本でも発売できる状態を目指している」と説明。その上で、「国内では遺伝子治療や再生治療の制度が整っていない面もあり、制度面を含めて取り組んでいく。既に発売されている海外の臨床データも集まっており、安心して使っていただける環境を整えていきたい」と自信を見せた。