厚生労働省は3月27日、15製品の適応追加などを承認した。この中には、サノフィの抗IL-4/13受容体抗体・デュピクセントの慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、日本イーライリリーの抗IL-23p19抗体・オンボーのクローン病、ヤンセンファーマの抗IL-23p19抗体・トレムフィアの潰瘍性大腸炎の各適応追加などが含まれる。
適応追加などが承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。
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リバルエンLAパッチ25.92mg、同LAパッチ51.84mg(リバスチグミン、東和薬品):「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果とする新剤形医薬品。薬効分類119。
持続放出性リバスチグミン経皮吸収型製剤。東和薬品は20年12月にスイスのLuyePharma社から導入した。
既存のリバスチグミン製剤は1日1回の貼付が必要であり、今回、週2回の貼付とすることで、患者・家族、介護者の精神的・身体的負担軽減が期待されている。
用法・用量は「通常、成人には1回25.92mgから開始し、原則として4週後に維持量である1回51.84mgに増量する。背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付する。原則として開始時は4日間貼付し、1枚を3~4日ごとに1回(週2回)貼り替える」。
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オンボー点滴静注300mg、②同皮下注100mgオートインジェクター、③同皮下注100mgシリンジ、④同皮下注200mgオートインジェクター、⑤同皮下注200mgシリンジ(ミリキズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「中等症から重症の活動期クローン病の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする①新効能・新用量医薬品、②③新効能・新用量・その他の医薬品、④⑤新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品――。再審査期間は残余(2033年3月26日まで)。薬効分類239。
抗IL-23p19抗体。既存のオンボー点滴静注300mgと同皮下注100mgオートインジェクター/同皮下注100mgシリンジは、潰瘍性大腸炎(UC)の適応で承認されている。今回、クローン病(CD)の適応が追加される。皮下注200mgオートインジェクターと皮下注200mgシリンジは新剤形となる。
クローン病(CD)は原因不明の肉芽腫性炎症性疾患であり、主に小腸や大腸の消化管粘膜に潰瘍等が生じる。腹痛、下痢等の消化器症状とともに、体重減少、発熱等の全身症状を呈し、再燃と寛解を繰り返すが、高度な狭窄や瘻孔、膿瘍等の合併症が生じると、高率に外科的治療が必要となる。
国内では、オンボーと同様の抗IL-23p19抗体のスキリージが22年9月にCDの承認を取得している。同トレムフィアはCDの効能追加を申請中。
オンボーは国内において、日本イーライリリーが製品供給を担当し、持田製薬が流通・販売、および情報提供活動を担っている。
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ベピオウォッシュゲル5%(過酸化ベンゾイル、マルホ):「尋常性ざ瘡」を効能・効果とする新用量・剤形追加に係る医薬品。薬効分類269。
これまでベピオゲル2.5%/ベピオローション2.5%があり、今回5%が追加承認された。効能・効果は既存の2.5%と同じ。用法・用量は既存製剤が「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布する」なのに対し、ウォッシュゲル5%は「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布し、5~10分後に洗い流す」となっている。
マルホでは、「尋常性ざ瘡の治療薬として国内で初めての短時間接触療法(Short contact therapy)を実現した。毎日の洗顔する習慣に本剤を組み入れて使用いただくことで治療の継続が期待できる」としている。
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カーボスター透析剤2号・L、同透析剤2号・P(医療用配合剤のため該当しない、陽進堂):「慢性腎不全における透析型人工腎臓の灌流液として、以下の要因を持つものに用いる。・無糖の透析液では、血糖値管理の困難な場合。・カルシウム濃度の高い透析液では、高カルシウム血症を起こすおそれのある場合」を効能・効果とする類似処方医療用配合剤。薬効分類341。
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オテズラ錠10mg、同錠20mg、同錠30mg(アプレミラスト、アムジェン):「局所療法で効果不十分な掌蹠膿疱症」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は4年。薬効分類399。
経口PDE4阻害薬。掌蹠膿疱症(PPP)の治療においては、禁煙等の生活指導や感染病巣の除去を行った上で、対症療法として第一に副腎皮質ステロイド剤やビタミンD3誘導体製剤の外用療法が行われ、効果不十分な場合には光線療法やエトレチナート等の内服療法が行われる。また、既存治療で効果不十分な場合には、生物製剤(トレムフィア、スキリージ)による治療も考慮される。
今回、経口薬のオテズラについて、局所療法で効果不十分なPPPの効能追加が承認された。
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イラリス皮下注射液150mg(カナキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な成人発症スチル病」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類399。
抗IL-1β抗体。成人発症スチル病(AOSD)は国の指定難病。副腎皮質ステロイドを用いた炎症の抑制が標準治療となっているが、ステロイド抵抗性やステロイド減量中に再燃することも少なくない。ステロイドで効果不十分な場合には、治療選択肢がアクテムラのみと限られていることから、新たな治療選択肢が必要とされている。
ノバルティスファーマのジョンポール・プリシーノ社長は、「AOSDの治療には、長期的な副作用の管理やより効果的な治療方法を確立することの必要性といった課題があった。イラリスの効能追加により、治療選択肢を広げ、より前向きに健やかな生活を送れるようになることを心から願っている」とコメントしている。
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トレムフィア点滴静注200mg、②同皮下注200mgシリンジ、③同皮下注200mgペン、④同皮下注100mgシリンジ(グセルクマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「①中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)、②③④中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする①新投与経路医薬品、②③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品、④新効能・新用量医薬品――。再審査期間は6年。薬効分類399。
抗IL-23p19抗体。既存のトレムフィア皮下注100mgシリンジは、18年3月に「尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」、同年11月に「掌蹠膿疱症」の適応で承認されている。今回、潰瘍性大腸炎(UC)の適応が追加される。点滴静注200mgは新投与経路、皮下注200mgシリンジおよび200mgペンは新剤形となる。
UCは、活動期には下痢、血便、腹痛や発熱等を伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患。重症度等に応じた治療法(薬物療法、外科的治療等)が選択されている。国内では、トレムフィアと同様の抗IL-23p19抗体のオンボーが23年3月、同スキリージが24年6月にUCの承認を取得している。
J&J Innovative Medicine Japanの關口修平社長は「トレムフィアが承認されたことで、潰瘍性大腸炎治療の新たな基準となることが期待されている」と話している。
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ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「CT」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続3]、セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン):「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎」を効能・効果とするバイオ後続品。薬効分類399。
ステラーラ皮下注のバイオシミラー(BS)。富士製薬、陽進堂に続く3剤目となる。先発品のステラーラ皮下注の効能・効果は、▽尋常性乾癬・乾癬性関節炎、▽クローン病、▽潰瘍性大腸炎―となっているが、BSは「尋常性乾癬・乾癬性関節炎」のみ。
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ベネクレクスタ錠10mg、同錠50mg、同錠100mg(ベネトクラクス、アッヴィ):「再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
経口BCL-2阻害薬。マントル細胞リンパ腫(MCL)の総患者数は約2000人と報告されており、再発・難治性の患者数はさらに限定される。MCL患者の多くが初回治療後、高齢者で2~3年、若年者で約5年で再発又は再燃すると報告されている。
再発・難治性MCLの治療については、イムブルビカや、ベンダムスチンとリツキシマブとの併用療法(BR療法)などが推奨されている。今回、ベネクレクスタとイムブルビカの併用療法が承認された。
アッヴィでは、「再発した場合、化学療法の効果は薬剤に関係なく1次治療の効果より劣るほか、急速な進行が認められることがある。本適応追加承認により、再発又は難治性のMCLに向き合う患者さんに対する新たな治療選択肢となる」としている。
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イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(デュルバルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「限局型小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
抗PD-L1抗体。外科治療が適応とならない限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)に対する初回治療は、白金系抗悪性腫瘍剤及びエトポシドを用いた同時化学放射線療法が推奨されている。また、同時化学放射線療法後の維持療法として使用可能な薬剤はなく、経過観察が行われているが、同時化学放射線療法を受けたLS-SCLC患者の75~80%に再発が認められ、予後不良とされており、新たな治療選択肢が望まれている。
今回、根治的化学放射線療法(CRT)後に疾患進行が認められていないLS-SCLCを対象とした免疫療法に対する国内で初の承認となる。AZの大津智子取締役研究開発本部長は「これまでCRT完遂後の治療として承認された薬物療法はなく、30年以上もの間、治療の進展がなかった。今回の承認はLS-SCLC患者さんへの免疫療法を初めて可能にした画期的なもの」と指摘している。
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ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月23日まで)。薬効分類429。
EGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体。第3世代の経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬・ラズクルーズと併用して、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療に使えるようにするための効能及び用量が追加承認された。
ライブリバントは24年9月にEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性NSCLCを効能・効果として承認されたが、限られた患者が対象となっていた。今回、患者数が圧倒的に多いEGFR変異陽性患者に対する治療選択肢となる。
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リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。薬効分類429。
効能・効果のネフローゼ症候群(NS)は、糸球体毛細血管障害に起因する高度蛋白尿及び低アルブミン血症の結果、血管内の水分が間質に移り、全身性浮腫や高コレステロール血症等をきたす病態の総称。
リツキサンは、2014年8月に小児期発症の「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)」の効能・効果を取得。24年9月には難治性ステロイド抵抗性NSが追加され、これまでNSに係る効能・効果は「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型、ステロイド依存性あるいはステロイド抵抗性を示す場合)」となっていた。
今回、小児期発症の難治性に至っていない「頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群」の効能追加が承認された。
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デュピクセント皮下注300mgシリンジ、同皮下注300mgペン(デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。薬効分類449。
抗IL-4/13受容体抗体であり、2型炎症において中心的な役割を果たすタンパク質であるIL-4およびIL-13の作用を阻害する。2型炎症は、COPDにも関与していることが明らかになっているという。
承認申請は、2型炎症を伴う中等症から重症のCOPDを対象とした国際共同第3相BOREAS試験の成績に基づく。COPDの用法・用量は「通常、成人には1回300mgを2週間隔で皮下投与する」となった。
COPDの薬物療法はクラスとして直近約10年間、大きな変化がなかった。サノフィの名川隆志スペシャルティケアビジネスユニット免疫領域フランチャイズヘッドは、「デュピクセントが生物学的製剤で初めてCOPD治療に使用可能となったことを大変嬉しく思う」と述べている。
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プレバイミス錠240mg、②同点滴静注240mg、③同顆粒分包20mg、④同顆粒分包120mg(レテルモビル、MSD):「同種造血幹細胞移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制及び臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」を効能・効果とし、小児用量を追加する、①②は新用量医薬品、③④は新用量・剤形追加に係る医薬品。同種造血幹細胞移植におけるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の発症抑制(小児用量)は希少疾病用医薬品に指定されている。再審査期間は6年1日。臓器移植の方の再審査期間は残余(令和14年3月16日まで)。薬効分類625。
CMVターミナーゼ阻害薬。小児用量の追加に合わせて今回、小型の粒状のフィルムコーティング剤であり、小児でも飲みやすい顆粒剤が承認された。MSDでは、「1包あたり20mgおよび120mgの2種類の規格があることから、複数包を使用することで、体重5kg以上の小児へ体重区分に応じた用量での投与が可能となるとともに、患者さんの状況に応じた剤形選択が可能となる」としている。
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ダイチロナ筋注(コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン、第一三共):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は残余(令和13年8月1日まで)。薬効分類631。
新型コロナウイルス感染症に対する国産mRNAワクチン。これまで12歳以上に対して「1回0.6mLを筋肉内に接種する」との用法・用量が設定されていた。今回、5~11歳に対して「1回0.2mLを筋肉内に接種する」が追加された。
3月27日付で承認された新有効成分含有医薬品の
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