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25年度薬価改定 投与経路や薬効別の乖離率の差も議論に 新薬創出等加算の累積額控除の実施求める声も

公開日時 2024/12/12 06:33
薬価調査で平均乖離率が示され、25年度薬価改定に向けた議論が加速する中で、12月11日に開かれた中医協薬価専門部会では、主要薬効別の乖離率の差を指摘する声があがった。24年薬価調査では平均乖離率が約5.2%と前年よりも0.8ポイント圧縮した。一方で、主要薬効群別にみると、血圧降下剤や高脂血症用剤の乖離率は2桁となっており、薬効により開きがある。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「10%を超える大きな乖離を生じているものもある。もう少し分析をした上で、今後の対応について検討しなければいけない」と指摘した。「そもそも薬価の引き下げが行われている要因は、卸の納入価格が低いことが要因であることはもう明らか」とも述べ、卸機能を問う場面もあった。このほか、新薬創出等加算の累積額控除の25年度改定での実施も議論となった。

◎乖離率は薬効で差 卸連・宮田会長「競合品があるもの、物量の多い価格交渉で提示した結果」

25年度薬価改定の根拠となる24年薬価調査では、平均乖離率は約5.2%だった・日薬連の岡田会長は「薬局等における医薬品の在庫管理コストや、在庫損耗もあることを踏まえると、この乖離幅は適正な薬価差を大きく逸脱している実態を示すものとは認識していない。一部における過度な薬価差や偏在の是正に向けた議論など薬価差についての本質的な議論こそ必要」と指摘。「中間年改定を実施する状況にはないと一貫して考えている」などと強調した。

◎薬価調査 「先発医薬品(後発品あり)」9.5%、「後発医薬品」9.4%、血圧降下剤11.7%、高脂血症用剤10.9%

ただ、薬価調査の結果、カテゴリー別にみると、「先発医薬品(後発品あり)」が9.5%、「後発医薬品」が9.4%だった。主要薬効群別にみると、血圧降下剤が11.7%、高脂血症用剤が10.9%となるなど、カテゴリーや薬効により、乖離率に開きがある。支払側の松本委員は、「投与経路、あるいは薬効分類別に見てみますと、その平均乖離率をはるかに超える大きな薬価差が生じていることについて、その背景や要因をどのように受け止めているのか」と質した。

日本医薬品卸売業連合会の宮田浩美会長は、流通改善ガイドラインを踏まえて乖離率が圧縮されたとの見方を表明。そのうえで、「非常に難しい取引環境、旧来からの総価の値引きとか加重の値引きが存在している。まだ流通ガイドラインが出て、即座に全て単品単価でできるかというと難しい部分もある。結果として競合品があるもの、あるいは物量の多いものについては、各社、会員企業が価格交渉の中で提示した結果だろうと思っている」と述べた。

宮田会長はまた、流通改善ガイドラインで、医療上の必要性の高さから“別枠品”となった基礎的医薬品や不採算品再算定はさらに乖離率が圧縮されており、「ほぼ薬価に近いような状態で購入がされている実態もある」と指摘。単品単価取引を推進するうえで、「卸だけでなく、医療機関や薬局にも流通当事者として、あるいはメーカーも含めて理解を得ながら、少しずつ前に進んでいると認識している。その結果、5.2%まで圧縮したことが非常に大きな成果であったのではないか」と述べた。

支払側の松本委員は、卸が“頻回な薬価引き下げが流通当事者の安定供給の基盤を脆弱化させている”と主張したことに対して、「そもそも薬価の引き下げが行われている要因は、卸の納入価格が低いことが要因であることはもう明らか」と指摘する場面もあった。

松本委員は、「乖離率が縮小していることは事実だが、(薬効により)10%を超える大きな乖離を生じているものもある。それについてはもう少し分析をした上で、今後の対応について検討しなければいけない」と述べた。

◎支払側・鳥潟委員 「薬価差が生じている以上、国民負担軽減に向け中間年改定を行っていくべき」

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「薬価差が生じている以上、国民負担軽減に向けて国民皆保険の持続可能性を考慮し、例年通り中間年改定を行っていくべき」と主張した。

◎診療側・森委員 「サプライチェーン全体が脆弱」医薬品供給状況の改善のめどが立つまで中止すべき 

一方、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「サプライチェーン全体が脆弱な状況となっている」として、「日本薬剤師会としても、中間年改定については廃止、もしくは現在の医薬品供給状況の改善のめどが立つまでは、少なくとも中止すべきであると考える」と述べた。

◎「イノベーションの評価と新薬創出等加算の累積額控除は一体で議論すべき」 支払側・松本委員

25年度薬価改定で焦点となっている新薬創出等加算の累積額控除も議論となった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、24年度薬価改定では、新薬創出等加算が見直され、特許期間中の薬価が維持される仕組みとなっており、すでに薬価制度上ではイノベーションに対する評価の拡充がなされている状況にあることを指摘。そのうえで、「イノベーションの評価と新薬創出等加算の累積額控除は一体で議論すべき」と強調した。松本委員は、24年度薬価改定が議論される中でもこの点を指摘。今年に入り、25年度薬価改定が議論される中でも、再三にわたり、製薬業界に認識を質していた。

◎日薬連・岡田会長「タイミングだけ切り出すのでなく、全体像として議論すべき」

この日改めて認識を問われた日本製薬団体連合会(日薬連)の岡田安史会長は、「特許期間中の革新的な新薬についてはその価値をしっかり守っていただいた上で、特許満了になれば速やかに後発品に切り替えていくという考え方に何ら変更はない」と強調。「革新的新薬の価値が新規収載時に適切に薬価に反映される仕組みと、特許期間中の新薬の薬価が海外先進国と同様に維持される仕組みの実現が一つセットになっていると認識している。現行の薬価制度をベースにして、新薬創出等加算の累積額控除累のタイミングだけを切り出して議論するのではなく、全体像として大きなコンセプトに基づき、メリハリというか制度全体を議論していくべき」と述べた。

支払側の松本委員は、「常々申し上げているが、24年度薬価改定でイノベーション評価はかなり図られたものと認識している。中間年改定の原点に遡って、国民負担の軽減を十分意識していただきたい」と指摘。「イノベーション評価と新薬創出等加算の累積額控除のタイミングについて合わせていただきたいと、我々として主張していきたい」と強調した。

この日の中医協では、新薬創出等加算の見直しがなされた24年度薬価改定の影響をめぐり、日本製薬工業協会(製薬協)は、24年度薬価改定で導入された迅速導入加算や、小児用医薬品の評価拡充などを受け、国内での開発計画や意思決定が変容したことも報告された。中医協では具体例を求める声がこれまであがっていたが、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、一定の評価を見せながらも行動変容した企業の割合などが示されていないことを指摘。「今後も具体的かつ定量的な情報をしっかり教えていただきたい」と述べた。「企業も当事者となって、制度で対応されたことについて、どう行動するかを示していただき、それに基づいて議論することが、社会の一員である中医協が果たすべき役割」と製薬企業に説く場面もあった。

◎希望退職の実施 日薬連・岡田会長「中間年改定の薬価引下げ、物価上昇が影響」

支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)が製薬企業で早期退職などが実施される背景を問う場面もあった。

日薬連の岡田会長は、「全体像としては、中間年改定に伴う毎年の薬価引き下げに加え、物価上昇等の影響によって収益、利益がかなり圧迫されていることで、人員削減策に踏み切らざるを得ない企業が増えている」と述べた。さらに、「企業の存続のためにリストラを進めざるを得ない一方で、生産あるいは流通、研究開発に係る人材の維持確保が必要だ。特に国内事業の収益性低下に伴う賃上げが十分にできない点や、労働条件の悪化に伴って、残念ながら離職者は増加している状況にある。また採用も困難になっており、安定供給等に及ぼす影響が強く懸念される状況に至っている」などと述べた。

◎卸連・宮田会長 「直近で3100人が辞めた。人材不足の面で危機感を持って対応」

卸連の宮田会長も、供給不安が続くなかで需給調整に追われる中で、「志を持って社会に貢献したいという気持ちで入社した若者たちが、この産業の魅力や、先が見えないという不安で、ほとんどの若者が転職サイトに登録している」などと強調。「今年度も直近で3100人が辞めている。人材不足の面で危機感を持って卸は対応しなければいけない」と強調した。賃上げについては「価格転嫁ができない中で経営者としてジレンマをもって進めている」と述べた。

◎26年度薬価制度改革「バイオシミラーの薬価を論点に」

このほか、次期薬価制度改革に向けて、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、バイオシミラーを次期薬価制度改革の論点としてあげた。長島委員は、「今後、再審査期間を終えて増加が見込まれるバイオ医薬品は、高額な品目も多いため、薬価制度におけるバイオ後続品に対する検討も26年度に向けて必要と考えます。事務局においては、今後の議論に必要な資料の整理をお願いする」と述べた。

厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「バイオ医薬品について先行品と後続品との関係や薬価上どのように考えていくのか、宿題をいただいた。次回の制度改正に向けて資料を整え、この場で議論させていただこうと考えている」と応じた。

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