政府は11月22日の臨時閣議で総合経済対策を決定（写真・総合経済対策を発表する赤澤経済再生担当相）した。経済対策に基づく補正予算の規模は一般会計の歳出で13.9兆円。経済効果は実質GDP換算額で21兆円程度。年成長率換算で実質1.2％程度となる。医療・製薬関連では、「創薬支援・後発医薬品安定供給支援」を明記し、特に、スタートアップ支援の強化により国際水準の臨床試験体制整備を進めるとした。再生・細胞医療・遺伝子治療薬の生産体制構築で「国内受託製造拠点の整備を強力に支援」するとした。2025年度薬価改定については、骨太方針2024に記した「国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」と明記するにとどめた。

総合経済対策は、自民、公明、国民民主の3党合意を経てまとめられたもの。対策の柱は、①日本経済・知オフ経済の成長（財政支出：5.8兆円）、②物価高の克服（同3.4兆円）、③国民の安心・安全の確保（同4.8兆円）－で全体の財政支出は21.9兆円規模となる。政府は11月28日召集の臨時国会に補正予算案を提出する。同時に、2025年度政府予算案の編成作業を行い、12月中下旬の決定を目指す。

◎創薬力強化　創薬クラスターの発展支援や創薬を含めたディープテック領域のスタートアップを支援　

製薬産業の関連では、岸田前政権の「医薬品産業を成長・基幹産業と位置付ける」を石破内閣が引き継ぐ格好となり、今回の総合経済対策にも「日本を創薬の地」とするための支援策を明記した。具体的には、創薬クラスターの発展支援や創薬を含めたディープテック領域のスタートアップ支援を強化する。なかでも、大学等のアカデミアとスタートアップやベンチャーなど民間企業との橋渡しを行い、「民間投資を呼び込む体制を強化する」と明記している。

AMEDの研究開発支援については、調整費の柔軟な活用で各省助成事業等の間の連携を確保し、切れ目ない支援を行うなど、大学等が持つ有望な創薬シーズの企業への引き渡しを加速するとした。このほか、再生・細胞医療や遺伝子治療の国内受託製造拠点の整備にも注力する。

◎医薬品安定供給　企業間の連携、再編等後押し「企業の取り組みを認定する枠組み設定」

医薬品の安定供給については、「少量多品目生産の非効率な生産体制の解消に向け、計画的に生産性向上に向けて取り組む企業への支援」を実施する。さらに企業間の連携・協力・再編を押し進めるため、「国が企業の取り組みを認定する枠組みを設ける」ほか、薬事・薬価面での対応も協議するとした。このほか、バイオ後続品の国内製造支援整備も支援する。

◎2025年度薬価改定　骨太方針2024の文言を明記

2025年度薬価改定については、骨太方針2024に、「イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」との方針を堅持した。

◎医療DX　電子処方箋　24年度内に導入医療機関・薬局への支援・環境整備を実施

医療分野では、「DXの推進」の項目に、電子処方箋について、全国的な普及拡大を推進するため「2024年度内に導入する医療機関・薬局に対する支援や環境整備を行う」と明記。医療データの利活用については、「全国医療情報プラットフォーム」で共有される情報を創薬や新しい医療技術の開発に二次利用するための環境整備を進めるとし、加えて、製薬企業や研究者が一定の仮名化された公的医療データに円滑にアクセスできる方策について、「法案の国会提出を含めて検討し、2024年度内に結論を得る」とした。

このほか24年度診療報酬改定で講じた医療・介護・障碍者福祉分野の職員の処遇改善のための措置を確実に届け、生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援する。具体的には、職員の負担軽減、業務効率化、テクノロジー・ICT機器の活用、経営の協働化などの取り組みを支援する。

◎24時間対応が可能な薬局が存在しない地域　訪問看護ステーションに配置可能な薬剤拡充

「地域の生活環境を支える基幹産業等の活性化」の項目には、24時間対応が可能な薬局が存在しない地域について、「特例的な対応」として、訪問看護ステーションに配置可能な薬剤を拡充することを含めて、「医師等との連携の下で在宅患者に円滑に薬剤を提供する体制の整備に向けて必要な対応を検討し、遅くとも2024年度内に結論を得る」と明記した。