【中医協薬価専門部会 11月6日 議事要旨 令和7年度薬価改定 薬価の下支え、医薬品の安定供給】
公開日時 2024/11/07 05:59
中医協薬価専門部会が11月6日に開かれ、令和7年度薬価改定に向けて、薬価の下支え、医薬品の安定供給をテーマに議論した。本誌は、診療・支払各側委員の質疑について発言内容を議事要旨として公開する。
(事務局説明 略)
安川部会長:ありがとうございました。ただいまの説明について、ご意見ご質問ありましたらよろしくお願いします。では長島委員お願いします。
長島委員:ありがとうございます。資料「薬―1」(令和7年度薬価改定について)の30ページの論点に沿ってコメントいたします。
最初の論点である「公表された情報の活用」につきましては、情報可視化することで、安定供給が期待できる企業や、その品目を医療現場で選定しやすくするという取り組みであり、後発品の供給が不安定な現下の状況を踏まえれば、そうした企業の取り組みを後発品の価値として薬価で評価することに大きな違和感はありません。
そこで、例えば、他の評価指標と同様にポイントをつけることで、薬価に反映することができないか。ご検討いただければと思います。また、その適用時期については検討状況によると思いますが、後発品の産業構造改革を促す意味でも、できるだけ早く実施すべきと考えます。
続いて2つ目の論点である「安定供給が確保できる企業を可視化」については、医療現場での検討をわかりやすくするという意味でも、A区分からC区分にどの企業が回答するのかを公表するというのも検討に値すると考えます。
次に3つ目の論点です。少量多品目生産となっている構造の見直しを図るため、薬価の観点から対応できる点を評価指標に加えてはどうかという提案ですが、少量多品目を一律に制限することについては違和感があります。
製品の種類によっては、少量多品目生産であっても、しっかりと安定供給を確保している企業については評価されるべきという考えもあると考えます。
そこで、単に少量多品目生産だけに注目するのではなく、例えば少量多品目生産をした上で、単に収益が見込めなくなったとして、医療上の必要性があるにも関わらず撤退するなど、医薬品メーカーとしての責任を果たしていないと評価できる項目とあわせて検討すべきと考えます。
最後、4つ目の論点は、安定供給等への対応と、国民皆保険の持続性のバランスということですが、医療保険財源に限りがあることからすれば、薬価上の対応についても、真に効果が見込めるもの、認められるものについて検討すべきと考えます。
そこで事務局に質問いたします。資料「薬―1」の10ページに不採算品再算定前後の分析がありますが、そもそも不採算品再算定は、赤字で供給できないから要望されているものであり、供給状況は改善できていない品目がまだある方が問題であると考えますが、改善できていない原因について教えてください。
改善できていない背景や状況を正確に把握できなければ、不採算品再算定のみでは改善できないということであり、薬価上の評価の効果が期待できません。
業界は対象品目の拡大を希望していると思いますが、この点をしっかりと説明していただき、議論することが出発点です。その意味では、今後の業界ヒアリングにおいても、不採算品目再算定と供給改善にどの程度の因果関係があったのか、しっかりとご説明していただくことも重要と考えます。
また、医療上の必要性が高い品目については優先的に対応するなど、メリハリをつけることも必要だと考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。長島委員からご質問が一つありました。改善できていないことの理由が明確にできるかという質問だと思います。事務局いかがでしょうか?よろしくお願いいたします。
事務局:医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。医薬品の供給の状況につきまして、資料「薬―1」の13ページにお示しをしてございます。限定出荷、出荷停止という状況これまで主に約4分の1の品目数で推移してきましたが、直近9月の状況では18.5%、5分の1を切る状態にまでなってきています。
もちろんこれは薬価削除等の影響も考えられますので、大きなトレンドとしてこれが続くかどうか見ていく必要があると思いますが、私どもとして、足下の供給状況の改善に向けて引き続き努力を進めているところでございます。
医薬品の供給不安の状況につきましては、先ほど事務局からの説明にもございました通り、医薬品の安定供給確保のマネジメントシステムを作る、あるいは後発医薬品の産業構造を改革する、こうしたことに正面から取り組まなければ、本質的な改善に繋がらないと考えて取り組んでおります。
一方で、足下の状況を放置して良いということではございませんので、私どもメーカーが漫然と限定出荷をしているのではないかそうした問題意識も安定確保会議の中で提起されておりますので、限定出荷の解除が可能と考えられる、そういう蓋然性が高いところを中心に、私ども事務局の方から個別にメーカーに問い合わせて限定出荷の解除を促す取り組みをしているわけでございます。
そうした中で明らかになってきたことは、私どもがメーカーと話をする中で、一つはメーカーとして、この限定出荷を解除するに当たって、どうしても解除すると、そのメーカーに対して注文が殺到する。そうすると市場のニーズを全部受け止めることが難しい。そうしたことで限定出荷を躊躇するというような理由を挙げられる企業が多いということがございました。
この点につきましては、私どもが公正取引委員会と調整しまして、競争政策上の観点からも問題のない形で、いわば限定出荷をある程度複数の企業が同時に解除するようなことができないか、そうした取り組みをやっていくことについて安定確保会議の中でお示しをして、具体のスキームを今整理しているところでございます。
それからメーカーの方とお話をしておりますと、増産するということにつきましては、原材料の調達、ラインの確保の観点からスピーディーな対応がなかなか難しいという側面もあるというふうに聞いております。
今回、薬価の下支えということで令和6年度薬価改定において不採算品再算定を特例的に適用していただきました。メーカーとして大変感謝して、安定供給に向けてきちんと取り組みを進めていただいているものと思っております。
私ども事務局としては、メーカーに対して漫然と限定出荷を続けない、必要な量を増産する、そうしたことに向けて、私どもができる環境整備を進めながら、企業を叱咤激励して取り組みを進めているという状況でございます。
いま長島先生からご指摘いただいた要因につきまして、いまは定性的なことを申し上げました。定量的なことを含めてどのような分析が可能かということ、今回お示したことが一つの分析ではあるのですが、その要因について、どういう定量的な分析が可能か、これは業界と相談しながら、また業界ヒアリングの機会がございましたら、業界と連携して対応していきたいというふうに考えております。以上です。
安川部会長:ご説明ありがとうございました。長島委員、いまのご説明でよろしいですか。
長島委員:はい。ご説明ありがとうございました。以前にも申し上げましたけれども、貴重かつ限りある医療財源を投入する以上、薬価上の対応が真に効果あるものと考えることが大前提でありますので、まず現状、あるいは状況をしっかりと把握するとともに、業界あるいは企業がしっかりと具体的な説明を前向きに行うことが大前提であるというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
安川部会長:では、引き続きご意見ご質問ございますか。森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。資料「薬―1」の30ページの論点に沿ってコメントさせていただきます。
まず一つ目のポツについてです。本来、薬価収載する以上、企業が医薬品の安定供給を実施することは当然の責務となりますが、企業の安定供給体制等の取り組みが進み、現場の供給不足や供給不安の解消に繋がるのであれば、速やかに評価指標の活用と適用を進め、品質が確保された後発品を安定できる企業を評価していくことは必要だと考えます。
また、後発品の安定供給に関連する情報の公表等に関する評価指標については、医薬品の安定供給を企業に促す上で重要なものとなりますので、次期改定で適用すべきと考えます。
2つ目のポツについてです。現状、企業数のみの公表となっていますが、現場が活用できる企業名を公表して、可視化を進めていただきたいと思います。ただし、現在でも医薬品全体で約20%の品目が出荷停止、出荷調整になるなど、安定供給に支障をきたしている後発品も存在し、現場では医薬品の確保に依然として大変苦労しています。
先ほど事務局の方からも限定出荷を解除すると注文が集中するという話がありました。評価結果を公表する場合には、評価の良い企業に注文が殺到し、欠品等の混乱が生じることのないような配慮をお願いします。
3つ目のポツについてです。資料「薬―1」の24ページに示されている産業構造改革を進めていくという視点で、安定確保会議の取りまとめを踏まえて、評価指標に加えていくことは必要な対応と考えます。
評価指標の具体的内容やその適用の時期等については、企業規模や取扱品目により評価の影響を受けることが考えられるので、各社の状況を把握した上で検討していくべきと考えます。
また、今回お示しいただいた取り組みを含む行政の方向と業界が考えるビジョンが嚙み合っていないとうまくいきません。業界としてしっかりとしたビジョンをお示しいただきたいと思います。
業界の意見を伺いながら、その意見を尊重して、しっかりと検討していきたいと思っていますので、厚生労働省の担当部局においては関係業界に強く申し入れをお願いいたします。
4つ目のポツについてです。安定供給の確保、物価上昇への対応と、国民皆保険制度の持続性のバランスは重要な視点です。令和6年度薬価改定では、安定供給確保への対応として、資料「薬―1」の9ページ目の通り不採算品再算定の特例措置が1943品目という多くの品目に適用されました。
資料「薬―1」の10ページ目に不採算品再算定適用品目の供給状況に関する分析が示されており、不採算品再算定が適用された品目の方が、適用を受けていない品目に比べて供給状況が改善した割合が高かったとの結果が出ていますが、中には、供給状況が悪化した品目もあります。4月から適用されたばかりで、不採算品再算定の適用の効果が本格的に見える形になるのはこれからだと思います。引き続き業界には不採算品再算定の適用の効果を、供給状況の改善という見える形で示していただけるよう取り組みを進めていただきたいと思います。
先ほど長島委員の方からありましたけども、この辺りについては、業界ヒアリング等でしっかりと示されることを期待いたします。私からは以上です。
安川部会長:ありがとうございました。他にご意見、ご質問ありますでしょうか? 松本委員お願いします。
松本委員:ありがとうございます。論点に行く前に、いま長島委員、森委員から言及がございましたけれども、不採算品再算定について少しコメントしたいと思います。
資料「薬―1」の11ページに示されておりますけども、2024年3月~8月の変化ということで、時期的に特例の影響が十分反映されていない可能性があるかもしれませんけども不採算品再算定が適用された品目のうち、改善した割合が41.8%に止まり、横ばいもしくは悪化が6割近くを占めているということでございます。
また適用された品目のうち、改善した割合も28%あり、適用品目との差がわずか10%であることがわかります。
安定供給に支障をきたす要因が様々あるということは十分理解をしておりますが、少なくとも今回の結果を見ますと、不採算品再算定の特例によるポジティブな影響は限定的ではないかという印象を受けております。
特例措置を繰り返すことで、むしろ本当のルールがなし崩しになるという問題点を、我々の立場から強調させていただきたいと思います。
これまでも申し上げてきましたが、令和6年薬価改定の議論の中で、不採算品再算定を受けたにもかかわらず、仕切価率を低下させた品目もございました。今回も仕切価の動向を注視していかなければならないというふうに考えております。
それでは資料「薬―1」の30ページの論点に沿ってコメントいたします。まず1つ目の論点でございますが、令和6年度薬価改定では一部の指標のみを試行的に導入いたしましたが、以前から申し上げております通り、全ての指標が揃って初めてバランスのとれた評価になると思いますので、情報が公開されているのであれば、評価指標をアップデートし、令和7年度薬価改定から適用すべきだというふうに考えております。
2つ目の論点の評価結果の公表についてですが、安定供給を確保できる企業の可視化という目的を踏まえれば、当然個別企業の評価結果を公表することが視野に入ってくると考えています。ただ公表には様々な方法があり、例えばポイントをフルオープンするパターン、あるいは該当する企業区分のみ公表というのがございます。また安定供給にどういった影響があるのか見極めることも必要ですので、ここは業界ヒアリングを踏まえながら丁寧に議論すべきだと考えております。
3つ目の少量多品目構造見直しについてです。産業構造改革の重要な視点であり、薬価の評価指標に加えることもありうると考えております。一方で資料「薬―1」の24ページを見ますと、構造改革には5年程度かかるということでもございますので、総合商社型の企業と領域特化型の企業に収斂していくことも想定しつつ、まずはシミュレーションした上で、少量多品目構造の見直しに係る指標の導入について妥当性を判断すべきというふうに考えます。
最後の論点ですが、幾分総論的になりますが、医療保険財政の持続可能性を確保する視点を重視し、改定ルールは粛々と運用することが原則だというふうに考えております。私からは以上でございます。
安川部会長:はい。続いて鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。1つ目から3つ目の論点に関して、皆様もおっしゃっていたことでありますが、この評価指標は後発医薬品の安定供給に向けて取り組んでいる企業をバランスよく評価できる指標であると考えております。そうした取り組みを行っている企業が適切に評価されるため、この指標の更なる活用を検討していくべきだと考えております。
また、そのため公表が待たれていた評価指標も、可能な限り活用する方向で検討すべきだと思います。評価結果の公表についても、この評価指標は安定供給が確保できる企業を可視化し、そうした企業の品目を医療現場で選定しやすくなることを目的に導入したものであり、そうした目的に立ち返って検討を進めていくべきと思っております。
安定供給の問題は、少量多品目生産といった後発品産業の構造的課題に端を発するものであり、品目数の適正化に繋がる指標の追加についても、具体的な指標内容次第ではあるものの、前向きに検討していっていただきたいと考えております。
最後の論点ですが、皆さまと同様に、不採算再算定につきましては令和6年度薬価改定は特例的な対応を行ったところ、適用された品目の方が適用を受けていない品目に比べて供給状況が改善した割合が高かったという説明をいただきましたが、私どもの認識としましては、適用されたものの改善がなされなかった品目数が多いという印象です。そうした状況を踏まえ、今後の適用のあり方についても議論をしていけたらというふうに考えております。以上です。
安川部会長:ありがとうございました。では佐保委員お願いします。
佐保委員:ありがとうございます。資料「薬―1」の30ページの論点の4つ目のポツについて意見を述べたいと思います。
患者、被保険者の立場から考えれば、医薬品の安定供給は重要ですので、必要に応じて物価上昇や経済情勢を勘案した対応の検討が求められると思います。一方で、流通改善ガイドラインに沿った適正な取引を進めるなど、生産現場だけでなく、流通を含め、サプライチェーン全体の状況を踏まえながら進めていくことが必要だというふうに思っております。私からは以上です。
安川部会長:ありがとうございました。奥田委員よろしくお願いします。
奥田委員:ありがとうございます。今回議案になっております安定供給の重要性については論をまたないところであり、当然であると思います。
資料「薬―1」の24ページに後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革に関連して申し上げたいと思います。8月の業界ヒアリングでは、業界団体側から、業界再編の具体的な姿について調査研究のための研究会の立ち上げといったプレゼンもなされたところであります。こういった業界自ら動きが出ておりますので、政府としても後押ししていくことが必要ではないかなというふうに思います。どうぞよろしくお願いをいたします。私からは以上です。
安川部会長:ありがとうございました。他にご質問、ご意見等ございますか? 業界側のビジョンが大事ということも議論に出ましたが、本日の意見に関連して専門委員の方からご発言がありましたらお願いできますか。では、石牟禮専門委員お願いします。
専門委員:専門委員の石牟禮でございます。本日委員の皆様方からいただきましたご意見、あるいは事務局からの回答につきまして、少し補足も兼ねてコメントさせていただければと思います。
まず2年連続で特例的に不採算品再算定の適用をいただいたということにつきまして、改めて感謝申し上げたいと思います。不採算品再算定は、薬価改定全体から見て、一定の制約がある中で実施されておりまして、必ずしも各企業の希望通りに薬価が引き上げられるものではないというのが実態と認識しております。不採算品再算定が適用された品目におきましては資料「薬―1」の10ページにございますように、通常出荷を継続している品目が大半であるということ、それから再算定が、例えば原材料の調達ですとか、人材の確保など必要な投資への下支えになったものというふうに考えております。
一方で松本委員からご指摘がありましたように、供給に支障が生じる理由にはこのグラフで悪化した例もあったことに関連しますが、水谷産情課長より回答いただきましたような他社品の影響によって、増加した需要に対応しきれていないという場合ですとか、やはり原材料の調達、これは世界レベルで起こっている取り合いの状況がもうございます。そういった状況に問題が生じているとか、製造におけるトラブルが図らずも発生してしまう、品質面でのトラブルが発生してしまう、といった直接的に採算性に関わる部分ではないことが発生理由としてあったということも確認しております。
患者様はじめ医療現場の皆様方にご迷惑をおかけしておりますこと、大変申し訳なく存じますが、安定供給の確保に向けて企業としては各社努めているところでございます。何卒ご理解を賜りたくお願い申し上げます。
また8月の意見陳述で業界代表からお示したもので、本日の資料「薬―1」のアペンディックスについておりますが、原価高騰等の状況、原材料の調達コストの上昇によってさらに採算性が厳しいという状況や傾向が続いていると認識しております。例えば増産要請に対応している低薬価品目等につきまして限定的に中間年改定の実施如何に関わらず、投資を下支えいただく措置もご検討いただければ幸いでございます。
必ずしも不採算品再算定の適用品目を拡大したいということはございません。昨年の意見陳述におきましても必要な品目に適切に対応していただきたいというのが業界の意見でございます。その点につきましてもご理解賜れば幸いでございます。以上でございます。
安川部会長:ありがとうございました。何か追加でご質問ご意見等ございますか? 他にご質問等もないようでしたら、本件に係る質疑はこのあたりとして、今後、事務局において、本日いろいろご提案等もありましたけれども、それを踏まえて対応いただけますようにお願いいたします。
本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局様で連絡いたしますのでよろしくお願いします。それでは本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。