NSCLSに対する二重特異性抗体・ライブリバントなど新薬3製品を審議へ 8月30日の第二部会で
公開日時 2024/08/19 04:47
厚生労働省は8月30日に薬事審議会・医薬品第二部会を開き、ヤンセンファーマのEGFR及びMETを標的とする二重特異性抗体・ライブリバント点滴静注(一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え))など新薬3製品の承認の可否を審議する。ライブリバントは現在、非小細胞肺がん(NSCLC)に対して3つの適応で承認申請中だが、今回はEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能なNSCLCを対象疾患に承認の可否を審議する。
◎報告品目に尿路上皮がん1次治療に対するパドセブとキイトルーダ併用療法
報告品目は8製品。この中には根治切除不能な尿路上皮がん(1次治療)を対象疾患とするアステラス製薬のネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)・パドセブ点滴静注用と、MSDの抗PD-1抗体・キイトルーダ点滴静注との併用療法が含まれる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オータイロカプセル40mg(レポトレクチニブ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ):「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
ROS1阻害薬。ATP競合性のROS1、TRK A/B/Cを選択的に阻害する経口の低分子チロシンキナーゼ阻害薬で、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制する。非小細胞肺がん(NSCLC)は肺がん全体の約85%を占め、NSCLC患者の約1~2%が制御不能な細胞増殖をもたらすROS1遺伝子の変異を特徴とするROS1融合遺伝子陽性疾患とされている。
ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対し、ザーコリカプセル(クリゾチニブ)とロズリートレクカプセル(エヌトレクチニブ)の2剤が承認されている。
▽ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
上皮成長因子受容体(EGFR)及び間葉上皮転換因子(MET)を標的とする二重特異性抗体。免疫担当細胞を介して抗腫瘍作用を発揮し、活性化及び抵抗性のEGFR変異、MET変異及び増幅を有する腫瘍を標的とする。対象疾患のEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性NSCLCに対し、本剤は化学療法と併用して用いる。
本剤は現在、▽EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する経口第3世代EGFR-TKI・ラゼルチニブ(国内未承認)との併用療法、▽第3世代EGFR-TKIによる前治療無効のEGFR陽性NSCLCに対する化学療法との併用療法――でも承認申請中となっている。
▽ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ、同160mgオートインジェクター(ビメキズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン):「化膿性汗腺炎」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
炎症性サイトカインのIL-17AとIL-17Fを選択的に阻害するヒト化モノクローナルIgG1抗体。IL-17FはIL-17Aとは独立して炎症を促進する。本剤はIL-17AのみならずIL-17Fも選択的に阻害することが特長で、IL-17Aのみの阻害よりさらに大きな炎症抑制が期待されている。
現在、既存治療で効果不十分な、▽尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、▽乾癬性関節炎、▽強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎――で承認されている。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ノボセブンHI静注用1mgシリンジ、同2mgシリンジ、同5mgシリンジ(エプタコグ アルファ(活性型)(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ):「グランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤。本剤は現在、グランツマン血小板無力症に対し、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられるグランツマン血小板無力症患者の出血傾向の抑制」を効能・効果に承認されている。厚労省によると、今回、「血小板に対する同種抗体を保有し、血小板輸血不応状態が過去又は現在みられる」を削除し、投与対象を拡大する。
▽リンヴォック錠7.5mg、同15mg、同30mg(ウパダシチニブ水和物、アッヴィ):「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を対象疾患に小児用量を追加する新用量医薬品。
JAK阻害薬。現在の小児アトピー性皮膚炎に対する用法・用量は、「通常、12歳以上かつ体重30kg以上の小児にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与する」となっている。今回、12歳以上の小児に対し、1日1回30mgでの投与を可能にする。
▽①アラグリオ顆粒剤分包1.5g、②同内用剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩、SBIファーマ):「経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱がんの可視化」を対象疾患とする、①新用量医薬品、②新用量・その他の医薬品。希少疾病用医薬品。
光線力学診断用剤。現在の用法(膀胱鏡挿入3時間前[範囲:2~4時間前]に経口投与)を、膀胱鏡挿入「2~8時間前」の経口投与に変更する。承認後は、手術前のアラグリオの投与タイミングが柔軟になり、利便性の向上が期待される。
▽パドセブ点滴静注20mg、同30mg(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え)、アステラス製薬)
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD)
:「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
パドセブはネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。キイトルーダはがん免疫療法薬の抗PD-1抗体。今回、根治切除不能な尿路上皮がん(1次治療)に対し、両剤の併用療法を可能にする。
両社の承認申請時などの発表資料によると、申請は第3相EV-302/KEYNOTE-A39試験に基づく。治療歴のない局所進行性または転移性尿路上皮がん(la/mUC)患者において、主要評価項目の全生存期間(OS)中央値は併用療法群が31.5カ月、白金製剤を含む化学療法群が16.1カ月で、併用療法群はOSを有意に延長し、死亡リスクを53%改善。もう一つの主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)中央値は併用療法群が12.5カ月、化学療法群が6.3カ月で、併用療法群は病勢進行又は死亡のリスクを55%改善した。併用療法群の安全性は、これまでの試験で報告されたものと一貫していたとしている。
アステラス製薬はこの併用療法が承認された場合、la/mUC患者の1次治療の標準治療である白金製剤を含む化学療法に代わる最初の治療選択肢になるとし、「la/mUCの治療にパラダイムシフトをもたらす可能性がある」との見方を示している。
▽①タフィンラーカプセル50mg、②同カプセル75mg、③同小児用分散錠10mg(ダブラフェニブメシル酸塩、ノバルティス ファーマ)
▽①メキニスト錠0.5mg、②同錠2mg、③同小児用ドライシロップ4.7mg(トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物、ノバルティス ファーマ)
:「BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を対象疾患とする、①②は新効能医薬品、③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。いずれも希少疾病用医薬品。
タフィンラーはBRAFキナーゼ活性を阻害し、腫瘍増殖を抑える。メキニストはBRAF遺伝子変異による腫瘍増殖に関わる酵素であるMEK(MEK1、同2)を阻害する作用を持つ。これにより腫瘍の増殖を抑える。
神経膠腫は、最も多い小児中枢神経系腫瘍で、小児脳腫瘍全体の約半分を占める。神経膠腫は、低悪性度(グレード1および2)または高悪性度(グレード3および4)のいずれかに分類される。BRAF V600E変異陽性の小児低悪性度神経膠腫(pLGG)は、生存転帰(OS/PFS)の不良と関連し、pLGGの約15%~20%に認められる。
▽ヌバキソビッド筋注1mL(組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン、武田薬品):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を対象疾患とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品、その他の医薬品。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の組換えスパイク蛋白質(rS)抗原を含有するワクチン。今回、SARS-CoV-2のオミクロン株JN.1系統対応ワクチンを追加するとともに、2回接種分に相当する薬液(1mL)が充填された2人用バイアル製剤を承認する旨を報告する。武田薬品は承認取得を前提に、2人用バイアル製剤をJN.1対応ワクチンとして今秋供給する計画だと明らかにしている。