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旭化成 同期と学び合う「新卒学部」で成長実感 新入社員主体で運営 キャリア不安払拭に効果

公開日時 2024/08/07 04:51
新入社員同士のコミュニティでともに学んで成長を実感する―。若手社員を中心に人財育成が企業にとっての課題になる中、旭化成がユニークな取り組みを進めている。新入社員を対象に、自律的な学び合いの場をつくるラーニングコミュニティ「新卒学部」の取り組みだ。新入社員がそれぞれの興味や志向に合わせた“ゼミ”に集い、活動内容や目標設定なども設計して主体的に運営する。同社によると、取り組みにより、新入社員の学習時間は約3.5倍に増え、キャリアに対する不安を減らすことにもつながったという。同社人事部人材・組織開発室の梅崎祐二郎さんは8月6日に開いた事例発表会で、「従来型の座学中心ではなく、人とのつながりの中で刺激を受けながら学びを広げ、深めていく取り組み。人財戦略として当社が掲げる『終身成長』の後押しにも繋がっている」と手応えを示した。

◎語学学習や資産形成など 新入社員が一からテーマ設定 講師を呼んだ勉強会も企画

旭化成が導入した「新卒学部」は、多様なキャリア感、スキルを持つ新入社員が成長実感を得られる学び合いの場をつくることを狙いに開始した。2022年12月から導入したe-Learningシステム「CLAP(Co-Learning Adventure Place)」を活用して、23年度の新卒社員255人が、一人ひとり自らテーマを選んで同期とともに学ぶ。

9カ月のコミュニティ活動のうち、第1クール(6~9月)はリーダーシップなやクリティカルシンキングなど事務局が準備したテーマに基づくゼミを選び、みんなで集まって行う集合学習やワークショップなどの運営は新入社員中心に実施。後半の第2クール(11~2月)では全員参加の全体コミュニティと同時並行で、個別学習のゼミも任意参加で用意した。個別学習ゼミには約6割参加し、新入社員自らが語学学習や資産形成、資格取得など一からテーマを設定した。講師を呼んだ勉強会を企画したり、定期的なオンライン自習会を開催したりと主体的な学びの場づくりにつながったという。

◎学習時間が約3.5倍に キャリア不安の低減に効果 業務上の成果にも


取り組みを通じて、学習時間は22年度の新入社員の425時間と比較して、「新卒学部」を始めた23年度は1756時間に増加。新入社員1人当たりでは約2時間(22年度)から約6.9時間(23年度)と3.5倍に増えた。効果検証では、新しい分野に興味や関心を持つきっかけがあったことでキャリア不安の低減につながったと分析した。参加した新入社員からは「知識を業務に還元できた」「学び続ける社会人でありたいという思いにぴったりの場だった」などの声が寄せられているという。梅崎さんは「社員同士の関係づくりや成長に結びつくだけではなく、得られたつながりが業務上の成果にもつながった例も出てきている」と述べた。

新卒学部は24年度も実施。満足度が高かった第2クールの期間を延ばしたり、より学び合いの活性化を促したりなど、さらにブラッシュアップして取り組みを進化させている。また、全社を対象にした活動も進めており、読書コミュニティや職場単位で学びを共有するコミュニティなども生まれてきている。今後は管理職などの階層別の研修を発展させるプログラムも準備しているという。

◎労働環境の変化 増える職業人生での選択 成長予期できる「キャリア安全性」が重要

働き方改革や労働人口の減少などを背景に、労働環境は大きく変わりつつある。さらに働き手の視点から見ると、ライフイベントに加えて副業や兼業、リスキリングなど職業人生において選択を迫られる場面が増え、終身雇用や年功序列といった「1社に勤め上げる」時代は過去のものになりつつある。

新卒学部のプログラム設計にも関わったリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は「若手にとって労働環境が好転し、会社を好きになっているが、他方で多様な選択肢の中で成長し続けられるかという不安に直面している」と指摘する。現代においては、良い職場環境であるという「心理的安全性」だけでなく、成長が期待できる「キャリア安全性」が重要とし、「その職場で働くことで社会に通用する人材になれるか、仕事を通じて成長が予期できるか。こうした『キャリア安全性』が高いほど若手のエンゲージメントも高まっている」と訴えた。

◎リクルートワークス研究所・古屋氏 「新卒学部が若手育成の一つのセオリーに」 

古屋氏は「若手同士の横の関係で育てることで、上司と部下の縦関係で生じるような人的なストレスもないが、相互に刺激し合う一定の負荷はかかる」と取り組みの構造的なメリットを分析。「新卒学部のようにラーニングコミュニティの取り組みが今後、日本の若手育成において一つのセオリーになっていく可能性がある」と評価した。
 
【追記】下線部の表記を追加しました。(8月19日15時20分)
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