エーザイ・内藤景介COO レカネマブ欧州の早期承認目指す CHMP否定的見解も「自信揺るぎない」
公開日時 2024/08/05 04:50
エーザイの内藤景介代表執行役専務COO兼チーフグロースオフィサーは8月2日の決算会見で、欧州医薬品委員会(CHMP)から承認に否定的見解を受けたアルツハイマー病治療薬・レカネマブについて再審議請求を行うことを改めて説明し、「CHMPと緊密な連携を図って欧州における早期の承認取得を目指す」と強調した。CHMPは脳出血や重大な出血との関連が指摘されるアミロイド関連画像異常(ARIA)の頻度が高いなど、リスクの高さを指摘。ベネフィットがリスクを上回らないとして、承認について否定的見解を示していた。内藤COOは、「リスク・ベネフィットの両面において、第3相臨床試験Clarity ADの結果に関する我々の自信に揺らぎはない」とエビデンスに改めて自信を示し、早期承認に意欲をみせた。
◎「プロトコルや解析方法は事前に協議済みで統計学的に優位な結果を示した」
欧州で否定的見解を受けたことについて、内藤COOは、「まず、第3相臨床試験のClarity ADのプロトコルおよび解析方法は事前にCHMPの上位組織であるEMA(欧州医薬品庁)
を含む、世界各国の保健当局と協議の上、決定された評価項目になる。事前に協議済みの主要評価項目および主要な副次評価項目について全てを達成し、統計学的に有意な結果というところを示したにもかかわらず、今回の形態が採択されたという事実を改めてお伝えさせていただきたい」と強調した。
そのうえで、論点となっているベネフィットについては、「レケンビの有効性は36か月間、長期継続しているというClarity ADの結果をさらに支持するようなデータを得ている」と強調。一方で、リスクと指摘されたARIAについては「治療6か月後には非常に低くなり、そのほとんどが無症状であることが確認されている。実際の臨床現場での事例を見ても、ARIAの発生率は臨床試験と一致をしており、各規制当局が設定しているガイドラインに沿って、副作用がしっかり管理されているということも確認している」との見方を示した。すでに投与が行われている米国や日本についてのARIAの発現頻度についても、「添付文書の範囲内で推移をしている」と強調した。
◎24年度第一四半 期売上高は63億円 米国・日本で処方拡大期に
2024年度第一四半期のレカネマブ(国内製品名:レケンビ)の売上高は63億円。23年度第四四半期の28億円から約2.2倍拡大した。中国で6月27日から販売を開始したほか、米国・日本で処方拡大期に入ったことが要因と分析し、「順調に推移している」と自信をみせた。
中国についてはすでに57都市、148病院で採用されており、24年度第一四半期の実績として2億円を計上。「中長期で米国に次ぐ大きな市場となることを予想している。中国という高いポテンシャルを持ったリージョンで順調にローンチが始まっている」と強調した。
◎「日本はエーザイのホームマーケット」 事業計画を上回るスピードで進行
国内市場については、「患者様への投与が飛躍的に拡大している」との見方を表明。24年度第一四半期は、23年度第四四半期から売上高が5倍に拡大。7月もさらに拡大傾向で伸長しているという。同社が力を入れる診断・治療パスウェイは650施設で構築が完了。このうち、約500施設で投与が開始されているという。24年度累計で約800人の医師が処方を行うと見通した。また、10人以上の患者に投与した医師数も70人まで増えたといい、「医療機関の納入実績が右肩上がりで進行している」と順調な推移を強調した。
内藤COOは、「日本はエーザイのホームマーケットですので、社を挙げての努力と、また医療従事者の方々との情熱というところで事業計画を上回るスピードで進行をしている」と述べた。