日本製薬工業協会（製薬協）の石田佳之常務理事は３月21日の記者会見で、厚労省が２月に発出した他社製品との比較情報の取扱いを明示した販売情報提供活動ガイドラインのQ&A（その４）について、「コード・コンプライアンス推進委員会としては非常に好意的に受け止めている」と述べた。ただ、Q&A（その４）を拡大解釈して「何でもできると早とちりしてはいけない」と警鐘を鳴らし、比較情報を提供できる４要件や、販売情報提供活動GL及びこれまでのQ&Aの内容を改めて確認することを求めた。「場面に応じて、ルールを守って情報提供活動をしてもらいたい」と会員会社に呼びかけた。

同GLには、不適正使用又は誤使用を誘発しないよう、「他社製品を誹謗、中傷すること等により、自社製品を優れたものと訴えること」を行わないよう明記している。比較情報について明確な禁止事項はないが、製薬企業側が同GLや製薬協のコードへの抵触を恐れ、独自にルールを定めているケースも多い。このため医療従事者からは、企業間で対応に差があるなど、医療従事者のニーズに合致した情報提供がなされていないことへの不満や課題が指摘されていた。

石田氏は、Q&Aその４について、「（比較情報を）医療関係者からの求めに応じて、ルールに則って提供することは差し支えないということが明言された。我々としては、クリアにしてもらい、非常にありがたい」と述べた。医療従事者の求めに応じた的確な情報提供活動が実現できれば、「臨床における薬物療法に資する情報提供活動に結び付く」と強調。情報提供する側のＭＲやMSLにとっても「学術知識の向上や情報の取扱いといった技量の向上につながる」とし、「医療関係者から更に信頼が得られる情報提供活動になる」との認識を示した。

◎恣意的な解釈はやめて　「何をしても良いということではない」

一方で、石田氏はこの日の製薬協総会を通じ、比較情報の提供にあたり加盟各社に３つの“お願い”をしたことを明らかにした。一つ目は、「Q&Aその４によって、何でもできると早とちりしてはいけない。何をしても良いというわけではない」ということ。二つ目は「製薬企業には両極端な対応に走らないでもらいたい」ということで、これまでの慎重姿勢を継続することは「困りもの」、何でもできると突っ走ってしまうのは間違いだと強調した。

石田氏はまた、懸念する誤った情報活動シーンの一例として、比較情報の提供を前提にした話法やストーリーを用意し、巧妙に医師に比較情報に関する質問をさせて「実はこういう情報がありまして」と比較情報を提供するような想定事例を紹介し、「恣意的な解釈をしないように」とクギを刺した。

“お願い”の三つ目は、資材作成のための製薬協の医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領に今回新たなルールが加わったことから、「どのような情報であれば提供できるのかの社内ルールを、各社の自主的な判断で作ってもらい活動いただきたい」ということ。「作業は大変になるが乗り越えてもらいたい」とした。

厚労省医薬局監視指導・麻薬対策課は２月21日付で、同GLのQ&A（その４）を事務連絡した（記事はこちら）。医師または薬剤師の求めに応じた比較情報を提供する行為自体は「当該規定には抵触しない」と明記し、比較情報を提供する場合は４要件全てを満たすよう求めた。

４要件は、①情報提供する内容は、要求内容に沿ったものに限定するとともに、情報提供先は要求者に限定すること。また、提供情報を要求内容に沿ったものとするため、当該医師又は薬剤師に対し、求められている具体的な情報を確認すること、②医療関係者・患者等から情報提供を求められていないにもかかわらず、求められたかのように装わないこと、③提供する情報は、虚偽・誇大な内容であってはならず、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないこと。また、他社製品にとって不利となる情報のみを恣意的に選択しないこと、④直接比較することが科学的に適切ではない場合はその旨及びその理由等も提供するなど、正確な理解を促すために必要な情報を提供すること――となる。

◎ヤクルト本社　３月31日付で退会　医薬品事業の縮小に伴い

この日の製薬協総会でヤクルト本社が３月31日付で退会することが報告された。木下賢志理事長によると、「医薬品事業の縮小に伴って退会したいとの申し出があった」という。４月以降、製薬協加盟企業は70社となる。また、武田薬品のJPBUプレジデントに４月１日付で宮柱明日香氏が就任することに伴い、同日付で製薬協の同社代表者が現在の古田未来乃氏から宮柱氏に変更になることも報告された。これにより製薬協副会長も現在の古田氏から宮柱氏に変更となる。