外資系企業の医療用医薬品売上高1位を死守したファイザー。新型コロナ関連製品の需要急減で大幅な減収を強いられたものの、ビンダケルファミリーが36%増となるなど新薬が寄与し、1位を死守した。ミクス編集部では、外資製薬企業の2023年医療用医薬品売上高を集計し、上位19社をランキングした。全4回のシリーズの第1回では、医療用医薬品売上1位~4位のファイザー、ジョンソン&ジョンソン(J&J)、アッヴィ、メルクを取り上げる。
ファイザー 医療用薬42%減収も1位を死守 新型コロナ関連製品の対売上比率は21%に縮小
ファイザーの総売上高(医療用医薬品売上高)は42%減(為替の影響を除くと41%減)の584.96億ドルと大幅減収だったが、医療用医薬品売上高1位は守った。新型コロナ関連のコミナティとパキロビッドの合計売上が全体に占める割合は、前年の57%から21%にまで縮小した。大幅な減収と第4四半期に従業員解雇コストとして15億ドルを計上した結果、純利益は93%減の21.19億ドルで14位だった。
製品別の売上高は、コミナティ(アライアンス売上含む)が70%減の112.20億ドル、パキロビッドが93%減の12.79億ドルとなった。また、乳がん治療薬・イブランスは競合品の影響で7%減の47.53億ドルとなった。一方、ATTR-PN及びATTR-CM治療薬・ビンダケルファミリーが36%増の33.21億ドルと高い伸びを示したほか、経口片頭痛治療薬・Nurtec ODT(リメゲパント)が9.28億ドル、RSウイルスワクチンのアブリスボが8.90億ドルと新製品が大きく寄与した。
23年12月に米シージェン社の買収を完了し、ホジキンリンパ腫等治療薬・アドセトリスや尿路上皮がん治療薬・パドセブ、子宮頸がん治療薬・Tivdak(チソツマブ ベドチン) 、乳がん・結腸直腸がん治療薬・Tukysa(ツカチニブ)が製品ラインナップに加わった。
24年の総売上高は585億ドル~615億ドルを見込む。このうち、コミナティとパキロビッドで80億ドル(各50億ドル、30億ドル)、シージェン社の買収寄与で31億ドルと計画する。新型コロナ関連2製品を除く売上高は8%~10%の増加と予想している。
2位J&J 医療用薬4.2%増収の547.59億ドル ステラーラは11.7%増、100億ドル超製品に
J&Jの総売上高は6.5%増(為替の影響を除くと7.4%増)の851.59億ドル。医療用医薬品の売上高は4.2%増(同4.8%増)の547.59億ドルで2位だった。総売上高の増減率は継続事業(医療用医薬品及び医療機器)の比較。継続事業の純利益は18.6%減の133.26億ドルで2位だった。23年8月にコンシューマーヘルス事業を分離・独立させ、Kenvue社が発足している。
免疫疾患領域のステラーラとトレムフィアがそれぞれ11.7%増の108.58億ドル、17.9%増の31.47億ドルと2桁の伸びを示した。がん領域では、ダラザレックスが22.2%増の97.44億ドル、アーリーダが26.9%増の23.87億ドルと好調だった。
新製品の治療抵抗性うつ病治療薬・Spravato(エスケタミン)は84.1%増の6.89億ドル、多発性骨髄腫(MM)に対するCAR-T細胞療法カービクティは約3.8倍の5億ドルと寄与した。今後、新製品のMMに対する2つのバイスペシフィック抗体・Tecvayli(テクリスタマブ)とTalvey(タルケタマブ)も大きく寄与することが見込まれる。
24年の総売上高は5.0%~6.0%の伸び率(新型コロナワクチンを除く)を見込んでいる。ステラーラのバイオシミラーは米国において、アムジェン社製が25年1月、Alvotech社製が25年2月に参入が見込まれる。
3位アッヴィ 6.4%減の543.18億ドル ヒュミラはバイオシミラー参入響き32.2%減
アッヴィの総売上高(医療用医薬品売上高)は6.4%減(為替の影響を除くと5.9%減)の543.18億ドル。純利益は58.9%減の48.63億ドルで12位だった。
米国では最主力品の抗TNFα抗体・ヒュミラにバイオシミラーが参入したことで、売上高が34.7%減の121.60億ドルに落ち込んだ。全世界の売上高は32.2%減の144.04億ドル。一方、抗IL-23p19抗体・スキリージは50.3%増の77.63 億ドル、JAK阻害薬・リンヴォックも57.4%増の39.69億ドルと引き続き高い伸びを示した。
20年5月のアラガン社買収により獲得したボトックスは、コスメティックが2.6%増の26.82億ドル、セラピューティックが10.0%増の29.91億ドルとなった。また、統合失調症・双極性障害治療薬・Vraylar(カリプラジン)は35.4%増の27.59億ドルを売り上げた。
29年にかけて1桁後半の年平均成長率を予想。27年のスキリージとリンヴォックの合計売上は270億ドル以上で、従来予想から60億ドル引き上げた。また、ピーク時の経口CGRP受容体拮抗薬「Ubrelvy」 (ウブロゲパント)と「Qulipta」(アトゲパント)の合計売上は30億ドル以上で、従来予想を10億ドル引き上げた。
4位メルク 医療用薬売上3%増 米社買収や第一三共とのADC提携で研開費倍増、純利益97%減
メルクの総売上高は1%増(為替の影響を除くと4%増)の601.15億ドル。医療用医薬品の売上高は3%増(同5%増)の535.83 億ドルで4位だった。米プロメテウス社及び米イマーゴ社買収や第一三共とのADC3製品に関する提携を要因に、研究開発費が約2.25倍の305.31億ドルと膨らんだ結果、純利益は97%減の3.65億ドルとなり、16位だった。
最主力品の抗PD-1抗体・キイトルーダは19%増の250.11億ドルで、医療用医薬品売上高の47%を占めた。HPVワクチンのガーダシル/ガーダシル9は29%増の88.86億ドルで、医療用医薬品売上高の17%を占めた。一方、経口新型コロナ治療薬・ラゲブリオは75%減の14.28億ドル、米国以外の複数国で後発品が参入したジャヌビアは22%減の21.89億ドルとなった。24年の総売上高は627億ドル~642億ドルを見込む。
第2回はロシュ、アストラゼネカ、ノバルティス、ブリストル・マイヤーズのトピックスを紹介します!
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