参天製薬 小児の近視の進行抑制点眼薬「DE-127」を承認申請 承認されれば初の治療薬に
公開日時 2024/02/29 04:48
参天製薬は2月28日、近視の進行抑制を目的とした点眼薬「STN1012700/DE-127」(開発コード、以下「DE-127」、一般名:アトロピン硫酸塩水和物点眼液)を承認申請したと発表した。投与対象は近視が進行している小児だが、具体的な投与対象年齢は今後の審査次第となる。なお、今回の申請に用いた国内第2/3相試験は5~15歳を対象に実施した。同社は2024年度中の承認取得を想定しており、承認されれば、国内初の近視進行抑制を効能・効果とする治療薬となる。
DE-127は、近視進行抑制を目的として、参天製薬とシンガポールの国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュート(SERI)が共同開発した点眼薬で、アトロピン硫酸塩水和物を0.025%含有している。アトロピンは、ムスカリン受容体の可逆的拮抗薬で、ムスカリン受容体の活性化を阻害することにより、網膜又は強膜に直接的もしくは間接的に作用し、強膜の菲薄化又は伸長を阻害することで、眼軸の伸長を抑制すると考えられている。
近視とは眼軸長が長くなって、目の中に入った光線のピントが合う位置が網膜より前にある状態のこと。眼軸の伸長を抑制することは、近視の進行を抑制もしくは遅延させることにつながると考えられ、近視患者のQOLの低下や、近視に関連した視力障害を伴う重度の眼の合併症の予防に貢献するものと期待されている。
今回の承認申請に用いた近視の小児(対象年齢:5~15歳)を対象に行われた国内第2/3相プラセボ対照二重遮蔽比較試験では、投与24カ月後における投与前からの他覚的等価球面度数の変化量について、DE-127はプラセボ点眼液と比較して、調節麻痺下での進行抑制効果が認められ、優越性が示された。投与24カ月後における投与前からの眼軸長の変化量については、DE-127はプラセボ点眼液と比較して有意な差がみられ、眼軸長の伸長抑制効果が認められた。この有効性は3年間にわたり持続した。安全性は、「本試験において重篤な副作用は認められなかった」としている。
今回の治験医師の大野京子氏(日本近視学会理事長、東京医科歯科大学眼科学教室教授)は、「たかが近視と思いがちだが、病的近視にまで進めば失明に至ることもある。重い近視が進むことによる失明は、現在においては治療が難しく、経過を見るしかない」と指摘した。その上で、「眼軸長は身長が伸びる時期に伸びやすく、近視が進行するので、この時期の治療が重要になる。増え続ける近視患者さんの健全な社会生活を守るため、日本において、近視の進行抑制にアプローチする新たな治療提案をできる可能性に大いに期待をしている」とコメントした。
参天製薬のピーター・サルスティグ・チーフメディカルオフィサーは、「(近視は)多くの場合、小児の早い時期から発症するため、進行すると、近視の長期的な合併症を含め、成人期まで患者さんの生活に支障をきたす可能性がある。人々の目の健康を追求するSantenとして、このDE-127の開発が、急増する近視患者さんのニーズに応える新たな治療方法の提供へとつながることを期待している」とコメントした。
参天製薬にとって近視市場は新規参入となる。近視を対象疾患とする開発品にはDE-127のほかに、選択的ムスカリンM2受容体拮抗薬「STN1013400」がある。いずれも中国などグローバルに開発を進めており、26年度以降の同社の成長を支える新製品群として注力する方針を示している。