協和キリン・宮本社長 次世代戦略品「KHK4083」 アトピー性皮膚炎を対象に26~27年に国内投入へ
公開日時 2024/02/09 04:49
協和キリンの宮本昌志代表取締役社長は2月8日、2023年12月期決算説明会で、次世代戦略品と位置付ける「KHK4083」(一般名:rocatinlimab)について、アトピー性皮膚炎を対象疾患に早ければ26~27年に日本に投入する考えを示した。国内事業は、毎年改定の影響に加え、国内最主力品のジーラスタに23年11月にバイオ後続品が登場するなど厳しい状況にあり、24年の国内売上は8.8%の減収と予想している。宮本社長は国内業績のV字回復に関し、KHK4083と、今月発売予定の透析中の高リン血症の改善薬・フォゼベル錠(一般名:テナパノル塩酸塩)を挙げて、「国内収益に貢献してくれると期待している」と述べた。V字回復の時期は言及しなかった。
KHK4083は、同社が保有している完全ヒト抗体作製技術とADCCを高めるポテリジェント技術を利用したヒト型抗OX40モノクローナル抗体で、活性化T細胞を選択的に減少させることが確認されている。アムジェンと共同開発している。
中等度から重症のアトピー性皮膚炎を対象疾患に8本のグローバル第3相臨床試験(ROCKETプログラム)が進行中。協和キリンはKHK4083を中心に積極的な研究開発投資を行うとして、24年に研究開発費として1000億円を投じる計画を立てた
(23年決算の記事はこちら)。なお、KHK4083の喘息を対象疾患とする第2相試験は24年上期に、結節性痒疹を対象疾患とする第3相試験は24年下期に開始する予定。同社はこれまで、グローバルで最初に承認が期待される年は「26~27年」と公表していた。
フォゼベルはNHE3阻害薬で、腸管からのリン吸収を抑制する。現在の中期経営計画で5つの次世代戦略品の一つに位置付けた薬剤で、中医協資料によると、国内のピーク時売上は193億円と予想されている。24年の売上計画は33億円。
◎骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患の開発品 グローバルに自社で展開
宮本社長は、グローバル戦略品のクリースビータやポテリジオについて、「グローバルの成長軌道にのった。更なる成長戦略を描けるフェーズに入った」と述べ、戦略品の更なる成長に自信を見せた。クリースビータは24年にグローバルで売上1888億円(前年比24%増)を計画している。
一方で、新規アセットの獲得及び相次ぐ開発中止によるポートフォリオの変化といった内部環境の変化や、医療費削減に向けた政策・規制強化の世界的な潮流、根治や疾患進行抑制を可能にする新たなモダリティの実用化といった外部環境の激しい変化があるなかでも、「Life-Changingな価値」を継続的に創出するためには、「当社の戦略ストーリーの解像度を高める必要がある」とし、グローバルに自社で価値提供していくアセットと、戦略的パートナリングによって展開するアセットを明確にして事業展開していく方針を示した。
基本的には同社が注力する疾患領域の▽骨・ミネラル、▽血液がん・難治性血液疾患、▽希少疾患――の製品・開発品は、自社でグローバルに開発から販売まで行う考え。具体的には米国自販を始めたクリースビータやポテリジオのほか、急性骨髄性白血病を対象疾患にP1準備中(日本)の抗体薬物複合体「KK2845」や、1月に買収が完了した造血幹細胞遺伝子治療(HSC-GT)を専門とするOrchard社の開発品が含まれるとした。
Orchardの開発品は、▽異染性白質ジストロフィーを対象疾患とするOTL-200、▽ムコ多糖症I型を対象疾患とするOTL-203、▽ムコ多糖症IIIA型を対象疾患とするOTL-201――の3つで、OTL-200は3月に米国で審査結果が出る予定になっている。
次世代戦略品であり多くの開発費を投じるKHK4083は、戦略的パートナリングで展開するアセットとなる。宮本社長は「当社は、日本では皮膚科にプレゼンスはあるが、グローバルではゼロ。当社単独でグローバルの皮膚科に参入しても厳しい。8本のグローバル第3相試験の費用を当社だけでカバーするのは相当厳しい」と述べ、開発品の価値最大化と患者に1日でも早く新薬を提供する観点からパートナリングで展開すると説明した。
このほかに戦略的パートナリングで展開する開発品には、滲出型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫を対象疾患とするVEGF受容体阻害剤「KHK4951」、固形がんを対象疾患とするEGFR-TfR1バイスペシフィック抗体「KK2260」、固形がんを対象疾患とする「KK2269」が挙がった。宮本社長はKHK4951について、「我々は眼科領域にプレゼンスはない。P2までは当社で進めるが、良い結果であればパートナーを見つけ、早期に患者さんに届けたい」と述べた。固形がんの開発品に関しては「面白いアセット」としたものの、「固形がん全てをカバーとなると開発費がかかる。競合も厳しい。パートナーを探す方が製品価値の最大化につながる」との考えを示した。