年頭所感 日薬連と製薬協 革新的新薬創出に全力 卸連「真に実効性ある流通改善に邁進」
公開日時 2024/01/09 04:50
日本製薬団体連合会(日薬連)、日本製薬工業協会(製薬協)、日本医薬品卸売業連合会(卸連)は会長名で2024年の年頭所感を発表した。日薬連の岡田安史会長と製薬協の上野裕明会長は、24年度薬価制度改革で新薬のイノベーション評価などを盛り込まれたことを踏まえ、革新的新薬の創出に全力を尽くす決意を示した。卸連の宮田浩美会長は、24年に流通改善ガイドラインの改訂が予定されていることを踏まえ、「真に実効性のある『流通改善』に邁進したい」と決意を示した。なお、年頭所感は、能登半島地震の発生前に公表された内容となっている。
◎日薬連・岡田会長 「科学技術立国への転換に大きく舵」 薬価制度は「解決すべき課題残されている」
日薬連の岡田会長は、23年12月に取りまとめられた24年度薬価制度改革の骨子に関し、迅速導入加算の新設、新薬創出等加算の見直し、市場拡大再算定の運用見直しなどをあげ、「イノベーションの評価を促進する多岐にわたる改革が盛り込まれた」と評価した。政府が創薬エコシステム構築に向けた取り組みを進めていることに触れながら、「イノベーション創出とその適切な評価を両輪とする科学技術立国への転換に大きく舵を切ったと強く感じている」との受け止めも示した。
後発品については、薬価上で安定供給をめぐる企業指標が24年度から試行導入されることから、「安定供給にかかわる問題の抜本的解決に向けた大きな一歩を踏み出したものと認識している」とした。
一方で、薬価制度について、「類似薬がない革新的新薬における適切なイノベーションの評価のあり方」や、「過度な薬価差の偏在の解消に向けた流通や薬価改定方式の見直し」など「解決すべき課題が残されている」と指摘。「医薬品業界としては、これらの課題に真摯に向き合い、引き続き関係者と議論を尽くしていく」とし、「医薬品産業の果たすべき使命である革新的な医薬品の創出と高品質の医薬品の安定供給に全力を尽くし、国民の皆様の健康寿命の延伸に貢献するとともに、世界で戦う基幹産業として日本経済の成長に貢献していく」との考えを示した。
◎製薬協・上野会長 世界に伍する新薬を生み出す 「デジタル化は節目の年」
製薬協の上野会長は、製薬企業が革新的新薬を継続的に創出するためにはイノベーションが適切に評価される薬価制度が必要だと訴え続けてきたと指摘した。その結果として、政府の骨太の方針に医薬品のイノベーションの推進が記載され、24年度薬価制度改革では業界の主張を踏まえた医薬品の評価のあり方に見直される方向にあるとした。
その上で、これらの動きは「政府や国民の皆さまによる医薬品産業への期待の表れ」でもあるとし、「今後業界一丸となって応えていかなければならないと、身の引き締まる思い」と心境を語った。また、「私たちは、国民の新薬へのアクセス向上や安定供給の確立に取り組んでいく。関係機関との連携を強化し、世界に伍する新薬を生み出し、製薬業界の発展と国民の健康の増進に貢献していく」とした。
このほか上野会長は、24年は「医療のデジタル化の節目の年でもある」と指摘。「デジタル技術は創薬への活用、流通の効率化、医療データの活用など、様々な可能性を与えてくれる。私たちはデジタル技術を活用し、より効率的な医療システムを構築し、多くの課題を解決していかなくてはならない」と強調した。
◎卸連・宮田会長 流通当事者の相互理解推進を 流通改善ガイドライン改訂で「待ったなしの状況に」
卸連の宮田会長は、流通改善には製薬企業、医療機関、保険薬局、医薬品卸など流通当事者同士の相互理解が必要だとの認識を表明。「互いに共感し、納得して行動に移すことで、改善につなげてまいりたい」と訴えた。24年に改訂が予定される流通改善ガイドラインを「これまでの状況を変えていく一丁目一番地」との認識を示し、「環境が整い、私たちにとっては待ったなしの状況となった。今こそ、真に実効性のある『流通改善』に邁進したい」と決意表明した。
医薬品卸は、「今まさに、コンプライアンスを徹底しつつ、過去からの『古い商慣習』を変えていく節目を迎えている」と強調。「今こそ、各会員企業それぞれが、自ら変わることが重要であり、自らを律し、自らの規範にのっとって行動する『自律』と、自らが他者に依存せずに行動する『自立』、この2つの『じりつ』が求められているのではないかと思っている」とした。
このほか、「平時でも有事でも、医薬品を途絶えさせることなく、医療の一翼を担う者として、国民の皆様の安心・安全な医療に貢献していく」と、医薬品卸としての使命も改めて示した。