厚労省 小児用医薬品開発促進へ 成人と同時開発で薬価上のインセンティブ 中医協・薬価専門部会
公開日時 2023/11/24 04:55
厚労省は11月22日の中医協薬価専門部会に、ドラッグ・ラグ/ロス解消に向け、小児用医薬品を成人と同時開発の検討を進めた場合に小児加算を充実させるなど、インセンティブを提案した。薬事制度として、成人と同時に企業判断で小児用の開発計画も同時に策定し、PMDAが確認する仕組みを設ける仕組みが検討されており、薬価上も薬事制度と整合性の取れた評価となる。また、小児用医薬品の開発が困難で採算が取れないことが指摘されるなかで、開発企業を評価することも提案した。
◎小児用開発企業の評価も俎上に 市場拡大再算定の引下げ緩和
厚労省は、新規収載時、薬価改定・再算定時に小児用医薬品開発のインセンティブを設けることを提案した。具体的には、新規収載時に小児用の剤形、小児用の効能効果・用法用量を有する医薬品の小児加算の運用を改善し、加算を充実させる。薬価改定・再算定にも小児用の効能効果、用法用量の追加に対する加算・評価の充実(加算率の運用改善)を行うことを提案した。新薬創出等加算の品目要件に小児用医薬品を追加することも提案した。
小児用医薬品の開発は世界的な課題となっており、欧米では成人開発とともに小児開発を行うことが義務化されている状況にある。日本では、薬事制度上は“企業判断”による開発となる見通し。成人と同等の開発を行うための計画を策定してPMDAが確認。PMDAの治験相談を活用しながら開発を進めた品目に限り、小児加算での評価で考慮するとした。また開発企業についての評価として、同時開発品目について市場拡大再算定が適用される場合(類似薬としての再算定を含む)、引下げ率を緩和することを提案。新薬創出等加算の企業要件が廃止されない場合は、企業要件に、同時開発に関する事項を加えることも提案した。
◎論点で製薬企業の開発姿勢問う
厚労省は論点として、「日本において小児用医薬品の上市を待ち望んでいる患者・家族や治療に携わる医師等の期待に応えるため、今回のような薬事・薬価制度における対応を行うことを踏まえた、製薬業界の見解・今後の開発に向けた姿勢等の意見を踏まえ、最終的に薬価上の措置を判断することについて、どのように考えるか」とした。また、「薬価上の措置のみで対応できるものではない」として、製薬業界の協力の下で薬事制度の見直しを含めた検証を行う必要性も盛り込んだ。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「開発促進に向けた薬事制度における対応が検討されており、その制度に応じる形であれば薬価制度での対応も検討に値する。いずれにせよ、薬価のみで支えられるものばかりではないので、薬事制度も含めた全体としての議論とすべき」との考えを示した。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「小児製剤の開発の難しさ等から一定のインセンティブを与えることに異論はないが、薬価上の措置の見直しの有無にかかわらず、企業にはしっかりと取り組んでいただきたい」と述べた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「補助金等による開発促進策とあわせて薬事制度との整合のとれた薬価上の措置を検討することであれば評価を充実することに異論はない」と表明。厚労省の提案について「既存の評価と重複しないことに配慮すれば検討の余地があるが、次回以降の制度改革でも引き続き議論する前提で効果の高いものから優先的に実施するということもあり得る」との考えを示した。
業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「様々な要因で小児の開発が厳しい状況がある。薬価制度だけでなく、薬事制度とともに引き続き改善に向けて取り組み検討を進めていくことが必要と考えている。業界としても積極的に協力させていただきたい」と述べた。そのうえで、「薬価上の対応策について、ぜひ実施していただけるよう検討いただきたい」と述べた。